中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

上海蟹

2007-03-16 09:28:17 | 中国のこと
 上海の近郊に陽澄湖(Yangchenghu)と言う湖がある。ここでは上海蟹の養殖が行われていて、この湖で獲れる上海蟹が本物なのだそうだ。上海人たちはよくここに蟹を食べに来るらしい。

 上海蟹は大閘蟹(dazhaxie)と言い、爪に黒い毛が密生している淡水産のモクズガニの仲間である。近縁のものは日本の川にも生息していて、私も一度食べたことがある。上海蟹の旬は9月、10月だから3月はオフシーズンで、陽澄湖を訪れる者はほとんどいないらしい。湖のほとりには養殖業者が開いているレストランが立ち並び、その1軒に入った。
 
 レストランはほとんどが開店休業の状態で,店の前は閑散としていた。



 蟹の養殖場。



 食卓に着くと、いろいろな料理の皿が運ばれ、しばらくすると脚を糸で縛った生きた蟹を笊に入れて持ってきて見せた。体色は青黒い。これは500グラムくらいのもので、これを注文した。


 
 この時期の蟹は、雌は美味くないので雄である。蟹を持って行った後も次々に皿が運ばれ10数皿になり、かなり腹が膨れてきた。「肝心の蟹はまだかな」などと言っているうちに、皿に盛って運ばれてきた。美しい朱紅色になっている。



 爪には黒い毛が密生している。



 それからしばらくの間は蟹を食べる時の常で沈黙が続いた。

 注文したものは上海蟹としては大きい方だろうが、当然のことながら私達が食べるズワイガニやタラバガニに比べるとかなり小さい。まず体の下側から甲羅を開き、いわゆるミソを食べる。これはなかなか美味しい。次に体を縦に割って爪や足の肉を食べるのだが、これが結構難しい。脚は太目の箸くらいの太さでどうやって中の身を取り出せばいいのか扱いにくい。ガイドの翁(Weng)さんやドライバーの魏(Wei)さんを見ると、脚の関節を切り離してから両側を齧り取り、ちょっと吸うと身が出てくる。それを箸でつまんで黒酢をつけて食べている。さすが慣れたもので手早い。真似をしてやってみると、何とかできた。それで気をよくして齧っていると、しばらくして上の前歯が1本なくなっていることに気がついた。2、3日前からぐらついていた義歯なのだが、気をつけて齧らなかったので抜けたらしい。慌てて食べ殻を掻き分けて探しているうちに店の女性が皿を持って行ってしまった。いずれ帰国したら治さなければならないものだったが、歯ならぬ間の抜けたとんだことだった。

 上海蟹は確かに美味しい。旬のものであればもっと美味しいようだから、もう一度行って見たいとも思う。しかし海産の蟹を食べつけている日本人には、言われるほどのものでないと思う人もいるのではないだろうか。旅行社募集のツアーの中に「上海蟹1杯付き」などと謳っているものがあり、かつて卒業生と一緒に参加したツアーで出たことがあるが、なんとも小さく貧相なものが1匹で、とても味わうなどと言う代物ではなかった。