ホヤと言えば盛岡のことや、結婚したかおりのことを思い出す。彼女は関西人なのに遠い岩手県まで行ったのは、小学校の教師になりたかったからで、それに大学時代に知り合い、結婚することになった男性が岩手出身だったこともある。今でも年賀状を交換しているが、年末にホヤを食べるとまた彼女を思い出した。すると元日の午後に彼女から電話があった。訛りのある声で「岩手県の」などと言うものだから、一瞬ホヤを取り寄せた通販の会社からかと思ったら彼女だったので驚いた。
久しぶりなのでひとしきり話したが、もうすっかり岩手(今は宮古市在住)の人間になってしまっていた。担任している時にはどちらかと言うと暗い感じだったが、30年の教師生活の間に性格が変わって明るくなったと言ったので、そんなこともあるかと嬉しく思った。在学中に私が話したことや、結婚式でのスピーチもよく覚えていて話してくれたが、そんなことも言ったかなあと懐かしかった。
岩手県の教員採用試験に合格して、年度末も近くなってから、彼女は急に勤まるだろうかと不安になり、私と喫茶店で会い、私は「もう君が受け持つ子どもは決まり、君を待っているんだよ」と言って励ましたそうだ。私はすっかり忘れてしまっていたが、彼女はそれを聞いて決心したと言った。そして両親のもとを離れて遠い岩手県に行ったのだが、小学校の教師生活は楽しく、夫の人柄はよく、子どもにも恵まれて、今では行って良かったと心底思っているようで、それだけに私には感謝しているとも言った。
そのような話を聞かされて、嬉しく思いもしたが、改めて教師の言葉は、生徒とって大きな影響があるものだと思い、彼女に言ったのだが、「良い影響を与えることもあるが、傷つけることもあるから、言葉には気をつけないといけないね」と言うと彼女も同意した。同じ教師としてよく分かるのだろう。
ホヤと言うと岩手を思い出し、岩手と言うとかおりを思い出す。そのかおりから思いもよらず元日早々に電話があっていろいろと懐かしい話ができ、今年の始まりはなかなか好いと思ったことだった。
インタネットより