Hg君の家で「ババア鍋」をした。ババア鍋と言うのはタラ鍋と同じようにババアという魚を使った鍋の謂いだが、私には初めてのものだった。
ババアとはいささか粗野な名称だが、正式にはタナカゲンゲと言い、島根県以北の日本海やオホーツク海の水深300~500メートルの辺りに生息するスズキ目の魚で、深海魚の仲間だ。インタネットの「市場魚介類図鑑」によると、「犬、もしくはキツネを思わせる顔つき」とある。
同じく「市場魚介類図鑑」には、「生で食べてもほとんど味がしない。クセがない上に生では旨味がない、当然刺身はむしろまずい。いちばんうまい食べ方は汁にすること。熱をとおすと身が締まり、旨味が感じられて、だしも出る。当然鍋物、汁、みそ汁にすると非常にうまい」とある。
初めて食べたババアは淡白でなかなか美味いものだった。
もともとズワイガニなどの底曳網にかかる雑魚で、下魚とされて捨てられていたもので、「ゲギョ」が訛って「ゲンゲ」となったとのことだ。島根県、鳥取県で「ババ」、「ババア」と呼ばれてきたが、最近、鳥取県岩美町では「ババチャン」と呼ばれているそうだ。ババアよりは親しみがあるように思う。
ババアがあればオジイは?と思ってしまうが、同じスズキ目に「オジサン」と言うのがあり、これは正式名称で、「オジイサン」が訛ったもので、小笠原の方言に由来し、顎の下の長い髭から老人を連想したものだそうだ。なかなか美味だと言う。