公務員の汚職は、貧富の差の問題と共に中国の大きな問題だが、汚職はもはや国家的な病気とも言っていいほどはびこり、おそらく手がつけられないような状態になっているように思う。
中国国務院は昨年末、政府や共産党幹部の横領や汚職などの取り締まり状況をまとめた「中国の反腐敗と清潔な政治の建設」と題する白書を発表した。このような汚職に関する白書を発表するのは初めてのことだそうで、それだけ汚職が深刻だということでもあるのだろう。
この白書は2003年から9年までの7年間に各地の検察機関が立件した公務員が関わった汚職事件を明らかにしたもので、その件数は24万件を超え、とりわけ、土地の使用権や炭鉱の採掘権など商業上の権利を巡る贈収賄事件が目立ち、2005年から5年間に立件された事件で公務員が受け取っていた賄賂の総額は166億元(日本円で2000億円余り)という巨大なものだ。
白書はさらに、国家統計局が03年から10年に行った世論調査で当局の反腐敗の取り組みに対する市民の満足度が51.9%から70.6%に上昇したと述べて、取締りの成果を強調した。だがインターネット上ではこの数字を疑問視する書き込みが多く、「実感とまるで違う」といった反発を呼んでいるようだ。中国では公務員の職務権限が強いことが汚職の温床となっているとされているうえ、取り締まる司法機関も共産党から独立していないことから、捜査には限界があると指摘されているとのことで、香港紙などで汚職疑惑を暴露された閣僚級以上の指導者に捜査の手が及んだ形跡がないことにも市民が不満を募らせていると言う。
汚職で立件される公務員の数が年々増加傾向にあるのは、取り締まり体制が強化されたことよりも、汚職官僚の数が増えたことに原因があるとの声が多いそうだし、閣僚級以上に捜査の手が伸びないのは、ある中国筋によると、「党政治局員以上の高官を取り締まれば、権力バランスが崩れ、激しい派閥抗争を引き起こす恐れもあるから胡錦濤政権は慎重になっている」とのことだから、まったくもって「何をか言わんや」で、この点では中国はまだ古代・中世国家の段階にあり、近代国家とはとうてい言えないのではないか。いったい今の中国の指導層や高級官僚などで、その地位に就くまでのコース、地位で一切汚職をしなかったという清廉な人物はいるのだろうか。