中国迷爺爺の日記

中国好き独居老人の折々の思い

中国の高速鉄道の事故

2011-07-27 09:33:22 | 中国のこと

 中国浙江省温州市で、高架橋を走行中の高速列車が落雷による停電で停止したところへ、後続の高速列車が追突し、双方で8両が脱線し、後続車の前部4両が高架から約15メートル下の畑地に落下した。この事故で39人が死亡し、200人以上が負傷した。中国のメディアは07年から整備が本格化した高速鉄道網の最初の重大事故と伝えている。事故が起きた高速鉄道区間は09年9月に開業し、営業速度は200250キロに設定されていて、追突されたのはカナダの、追突したのは日本の技術を取り入れて国内で生産された車両だ。

  

 私はこの路線ではないが、07年に開業したばかりの上海ー南京の路線の高速列車に乗ったことがある。この路線は高速列車専用ではなく、普通列車や貨物列車も使うもので、時速は最高250キロくらいだ。今回事故を起こした路線も同様のものらしい。平均時速が50キロ未満だった中国の鉄道は、97年に高速度化に着手し、07年には在来線で時速200キロを超す高速列車を本格導入するとともに、平行して「高速鉄道」(中国版新幹線)の建設も主要都市間で進められ、6月30日には北京・上海間で開通した(この路線は当初2012年に開業予定だったが、今年7月1日に胡錦濤国家主席が重要演説を行った中国共産党創建90周年記念日の前日に開業を前倒ししていた。いかにも共産党一党支配の国らしい)。在来線を利用する車両も「中国版新幹線」の車両も同型で「和諧号」と呼ばれるが、日本などの外国の技術を導入したものであるにかかわらず、中国当局は中国独自の技術で開発したものと言い、世界最先端技術だと豪語してきた。パクリは中国人個々のことだけでなく、国家規模でもそうなのかと思ってしまう。

   

  中国の事業には官僚や政治家の来たな職は付き物だ。この高速鉄道事業が政治家や官僚の汚職の温床になっている事実があるようで、巨額の賄賂を贈った業者が基準以下の原材料を使い、ずさんな工事を行うことで利益を上げていることは以前から指摘されていたようだ。今年2月、高速鉄道建設の最高責任者だったの劉志軍前鉄道相は、巨額の賄賂を受け取った疑いで解任されている。いずれ司法の場に引き出されるのではないか。鉄道建設にあたって、手抜き工事や安全基準に満たない材料が使われた可能性もあるとされている。

 

 私の長男は出張で先日開通間もない「中国版新幹線」で、上海から山東省の徳州まで行ったが、完成後間もない徳州駅の駅舎では床が壊れてコンクリートが露出していて、いかにも手抜き工事だと思う状態だったそうだ。車両の外装や内装も日本の新幹線に比べると何か「もっさり」した(垢抜けない)感じだったと言っていたが、それは私も南京に行ったときに感じた。外装や内装の問題は事故には関係ないが、安全運行は何事にもまして心すべきことだ。それが軽視されるとこれからも類似の事故が起こる可能性がある。長男はこれまで徳州に行くのに空路を利用していて、初めて列車を使ったのだが、これからもこんな事故が起こっては堪らない、中国では補償も安いし、これからはまた飛行機を使おうと言っていた。

 

   中国の国土は広大で、そこには網の目のよう鉄道網が敷かれているが、これまでのように平均時速が50キロ未満ではいかにも遅い。中国では2日3日の列車の旅はざらで、私達日本人にはちょっと耐えられないようなものだが、それを高速化しようとするのは当然のことだ。しかし高速化工事を急ぐあまり、ずさんな工事が行われては問題で、その根底に業者からの莫大な賄賂とそれを当然のように収める役人の腐敗があって。これは中国の長年の病弊でどうにもならないものがあるようだ。賄賂や汚職は他の国でもあるが、中国のそれは群を抜いて世界に冠たるものだ。どのようにしてこのような民族性が作られたのだろうかと思う。