前に紹介したYさんの輸入食品の店で、外国語の講座を計画し、その第1に中国語をすることになりました。第1回目はワンコイン講座ということで、試みの参加者を募集したのですが、どうも中国語というのは人気がないようで、応募者は私だけでした。先生は董麗華(ドン・リイフア)という30代前半の女性でした。麗華、美しい光、いい名前ですね。私は前に少しだけ中国語を習ったことがありますから、型にはまった形式ではなく、何でも自由に話し合っていこうということになりました。
その中で,中国語は入るのが難しいがそれを通り抜けたら後はやさしい、日本語は最初はやさしいが後でだんだん難しくなるという話になり、董先生は、日本語の敬語の丁寧語とか謙譲語、尊敬語が難しいと言われました。でも中国にも丁寧な言い方はあるのですよと言って、白板に次のような文字を書かれました。
1.請チン(どうぞ) 例:請吃チンチイ(お食べください)、請看チンカン(ご覧ください)
2.您好ニンハオ(こんにちは。你好ニイハオの丁寧語)
3.謝々シエシェ(ありがとう)
4.対不起トイプチ(すみません)
5.再見ツアイチェン(さよなら)
これを「十字文明語」と言うのだそうです。「文明」とは大袈裟に聞こえますが、中国語の「文明」には日本でも使うような意味の他に、「上品な」とか「丁寧な」という意味があります。
私はどのことばも知ってはいましたが、「請チン」や「您好ニンハオ」、「対不起トイプチ」などはともかく、「謝々シエシェ」や「再見ツアイチェン」が丁寧なことばというのはちょっと分かりませんでした。中国人には言わない者が少なくないのだろうかと思って、西安の李真にMSNで尋ねてみました。
李真によると正確には「文明礼貌十字用語」と言うようで、礼貌(リイマオ)とは礼儀のことです。社会生活の上でこれだけは知っておかなければならないと言うことで、李真は「これは基本的な言葉ですよ。誰でも言いますよ」と言いましたから、親は子供をしつけるときに使うのかも知れません。、
日本の子どもや若い人は最近挨拶ができないとよく聞きます。「こんにちは」「さようなら」「ありがとう」「すみません」など、社会生活上当たり前のことが言えません。それなのに「キレる」と悪口雑言を言う、どこかの市長のようにアホ、バカ、クソと言うような汚い言葉を平気で言います。結局親のしつけがいい加減だったので幼児形のまま大きくなったのでしょう。
日本語の丁寧語や尊敬語、謙譲語は難しく、ことばの専門家が聞けば私の使い方も注意されることがあるでしょう。しかし 今の若い人には、そもそも丁寧とか謙譲とか目上の者への尊敬などということに無縁の精神状態の人があるのではないかと思うことが、私のブログへのコメントを見てもあります。やはり小さなときから親や教師が教えていかなければならないことは私にも経験があります。何か子どもにやったり、してやったりして黙っていたら「ありがとうは?」と言って子どもに言わせる、朝子どもが目を覚ましたら、「おはよう」と声をかけて応答させる。それは当たり前のことだろうと思います。
私が若い頃朝早く、出入りしていた理髪店に行ったとき、そこの店の3,4歳の男の子が眠そうな顔で出てきたので、「おはよう」と声をかけましたが、ぼんやりと私を見て黙っいます。もう一度「おはよう」と言うと私の頭を刈ろうとしていた二十代の若い主人が「そんな上品なことばを言えますかいな」と笑いました。後でこの話を教室で生徒達にして、「おはようが上品なことばだとは知らなかった」と言うと皆大笑いしましたから、あの頃の生徒達は、まあまあまともだったのでしょう。 そのうち日本にも「文明礼貌十字用語」のようなものが必要になってくるのかも知れません。
董先生の講座は、希望者が増えれば秋にでもするということで、今回の「文明礼貌十字用語」のような中国の話がいろいろできればいいのですが、多分もう私には機会がないように思います。
(朝の散歩から)
バラ(5)
まだ撮ったのはありますが、バラはこれくらいにしておきます。美人もあまり多いと食傷しますからね。