蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

ねじまき鳥クロニカル

2025年01月15日 | 本の感想
ねじまき鳥クロニカル(村上春樹 新潮文庫)

岡田亨は、失業中。特に求職活動はせず、公営のプールに通うなど気ままに日々をすごしている。おじから格安で借りた借家にくらしていたが、妻のクミコが浮気して家出してしまう。飼い猫をさがすうちに見つけた古井戸に気分で降りてみたが、戻れなくなってしまう・・という話。

著者の代表作の一つといわれる本書。やっぱりタイトルがすごくて、見ただけで読んでみたくなる。
のだが、文庫が初めて出た時に第一部を買ってずーっと読んでなかった。
もうそろそろ読まないと(私の)人生が終わってしまいそう、とうことで、第3部まで読んでみた。

都内の(多分それなりに)高級な住宅地の格安な借家に住みながら共働きでも子供ができたら生活するのが難しくなるような収入しかない主人公は、特段の理由もないのに勤務先の法律事務所を辞めてしまい、特に職探しもしない。そのまま何ヶ月かが経過するうち、妻は愛想を尽かして出ていってしまう・・・というのが本書の主筋である。あとは辻褄が合わない話ばかりなので、それはきっと主人公の妄想なのだろう。

本書を初めて読んで思ったのは、「もしかしてこれってギャグ?」(以下は例)
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普通こんな仕打ちにあったら、奥さんは当然出奔するわな、という状況なのに、主人公は「なぜ妻は浮気して家出したのだろう?」と第三部の終わりに至っても悩んでいる。いいかげん気がつけよ、と誰もがいいたくなるだろう。

主人公の夢?に出てくる登場人物の名前が加納マルタ&クレタの姉妹とか赤坂ナツメグ&シナモン親子とか、冗談としか思えない命名。

主人公が喫茶店などに呼び出されて行くと、勘定を払うのは、決まってゲストのはずの主人公。

主人公はカネに困って、宝くじを買う(すでにこの時点でリテラシーがない)が、買ったとたん当たるはずがない(傍点付き)と確信して破り捨てる。
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こんな話が続いたら、本を放り出したくなるが、最後まで強力な吸引力で読み通させるところが、著者たる所以であろうか。

間宮中尉が登場するシーンは上記のようなおふざけ?はなくて、緊迫感に満ちて読み応えたっぷり。この部分だけの方がよかったよね。(個人の感想です)

「1Q84」にも登場する牛河が、本書でも良かった。スカした日常を送る主人公のアンチテーゼのような存在で、全般的に牛河に近い見かけ、人生遍歴を送る私としては、本書でも共感できるところ大であった。大長編2作に登場させるくらいなのだがら、著者もお気にいりキャラのはず。次は牛河が主人公の長編を書いてくれないだろうか。それがねじまき鳥と1Q84の謎解きになっていたら最高だ。


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