蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

おとり捜査官2 視覚

2009年09月21日 | 本の感想
おとり捜査官2 視覚(山田正紀 朝日文庫)

首都高速のそこかしこにバラバラ殺人事件の遺体の一部が捨てられていた。犠牲者は銀座のホステスたち(今ではあまり聞かなくなった言葉ですな。オリジナルの出版されたのは10年以上前なので)。主人公のおとり捜査官は銀座のスナックにホステスとして潜入する。

「おとり捜査官1 触覚」に比べると、事件のスケールは大きく、トリックも大掛かりなのだが、謎解きの意外性や鮮やかさにちょっと欠ける気がした。
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財務3表一体分析法(国貞克則 朝日新書)

2009年09月20日 | 本の感想
財務3表一体分析法(国貞克則 朝日新書)

主要業界の有力上場会社の貸借対照表、損益計算書、キャッシュフロー計算書を比較することで基本的な財務分析の方法を紹介した本。

著者オリジナルなのかどうかはわからないけれど、同じ会社の年度ごと、あるいは、同じ年度の会社ごとの貸借対照表を同じスケールで図示するというやり方は、非常に有効でわかりやすかった。(同じスケールというところがミソ)

入門書という位置づけなので言っている事自体に目新しさはないが、「わかりやすさ」という面では類書の中でもダントツかも。よく売れているのももっともだと思った。

利益剰余金を、過去の収益力を量るかなり重要な指標と見ているのは、ちょっと違和感があった。(私のイメージでは、利益剰余金がありすぎるのも問題だし、その会社にとってのピンチがくるとあっという間に吹き飛んでしまうもの、という感じだったので)
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チェンジリング

2009年09月14日 | 映画の感想
チェンジリング

アメリカ1920年代の実話をもとにした映画。

母子家庭の母親である主人公(アンジェリーナ・ジョリー)の子供(小学生低学年くらい)は誘拐されるが、警察が見つけ出し連れ戻す。
しかし、主人公は一見して別人であることがわかり、周囲の人も別人であると認める。しかし、いったん美談を仕立てた警察は絶対にそれを認めず、強硬に抗議する主人公を精神病院に押し込めてします。そこには同様に警察から押し込められた人がたくさんいた。
別の子供誘拐・殺害事件の捜査から主人公の子供もその事件の犯人に誘拐されてたことが判明し、警察の批判をしていたグループは主人公を病院からすくい出す。
そして被害者で犯人から逃げ出した少年の証言から主人公の子供も犯人のアジトから逃げしていたことがわかる。主人公は諦めることなく息子の行方を捜し続ける。

イーストウッドの監督作品らしく、けっこうこみいった筋なのに、ストーリーが分かりやすく、スピーディに展開する。警察に対ししてつっぱり続ける主人公の行動も不自然さはなく素直にシンパシーを感じられるし、やや残酷とも言える結末もそれなりに納得性があった。

楽しめて感動できる一級品のエンタテイメント。アンジェリーナ・ジョリーもいつもと違う役柄を熱演(ちょっと熱が入りすぎてややクサいところもあるが)。
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十五万両の代償

2009年09月13日 | 本の感想
十五万両の代償(佐藤雅美 講談社)

徳川幕府十一代将軍家斉の一生を描いた作品。といっても家斉自身が活躍する場面はほとんどなくて、松平定信、水野忠成、水野忠邦らの老中の事跡が中心となる。

「黒船以前」の感想でも書いたように、将軍在位50年以上、もうけた子供も50人以上という、ある意味安定期の将軍として求められる要素「体力」、「繁殖力?」を十分に満たしているのに、歴史的に全く注目されておらず評伝のたぐいもあまり見かけないので、かえってその生涯に興味がわいて、本書を読んでみた。

臣下にとって「良い将軍」のもう一つの要素である「口うるさくない(政治的に介入しない)」についても(何回か異例の人事権行使をした他は)満点をつけられた将軍のようで、治世のことは老中にまかせっきりだったようだ。

本書の中で家斉が権力を使ったといえそうなのは、定信の事実上の罷免(当時将軍が人事権を行使することは異常事態だったらしいが、あえて断行)、仙石家のお家騒動の決裁ぐらいである。

家斉時代の大半の治世を担ったのは、これも世間的に名前を知られていない水野忠成で、忠成は貨幣の改鋳を計画的に行うなどして幕府のフトコロを豊かにし、定信や忠邦のような苛烈な政治とは正反対におだやかな中道路線をとったので、老中在位中は好景気が訪れたという。

分限を知る忠成は長年の老中在位が後嗣の災いを呼ぶことも十分に承知しており、何度も家斉に辞任を申し出るが許されない(最後は高齢を理由として辞任を認められる)。忠成を使い続けたことこそ、家斉の最大の業績かもしれない。

本書によると、家斉は吉宗以来のお庭番(スパイ)を多用して世間や諸藩の情勢に通じており、多くの子供を御三家など徳川親藩の養子や嫁にして、出身の一橋家による徳川一族支配をほぼ完成させている。
定信の罷免、忠成の登用も戦略的な判断であったかもしれず、やはり、もっと注目されてもいい将軍のような気がしてきた。

また、本書によると、将軍や老中は、自分の政策が世間にどのように評価されるかを非常に気にしており、批判の落首などが飛びかうと気に病んでいたらしい。落首のたぐいがすぐに幕府中枢まで伝わり、それを幕府首脳が注意をはらっていたというのは、私にとって意外なことだった。

本書は新聞連載だったせいか、ちょっと冗長気味(特に仙石家のお家騒動のあたり)で、史実に忠実にあろうとうするせいか、多少面白味に欠けている。フィクションを加えて、「家斉は実はとても有能な将軍だった」とか、その反対に「家斉は謀略に通じた暗黒将軍だった」みたいな話だったらもっと面白かったと思う。
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ワルキューレ

2009年09月12日 | 映画の感想
ワルキューレ

ヒトラー暗殺・クーデター事件をほぼ史実通り描いた映画。

背景とか登場人物の説明あるいはロマンスとかの余分な部分を少なくし、主役のシュタウフェンベルク大佐(トム・クルーズ)にフォーカスしてストーリーがスピーディに展開される。
ある程度予備知識がある人にとってはとても面白い映画になっている。(ゲッペルズって誰?というような人にはちょっとつらい面もあるのかもしれないが)

それでいて、結末(クーデター失敗)を知っていてもドキドキハラハラさせてくれるのは、監督の腕力のおかげなのだろう。

この映画を観る限り(クーデター側の視点で作られているせいかもしれないが)、このワルキューレ作戦は実に良く出来ているように思え、軍人側のヘッドであるオルブルヒト将軍が徹底的に強気なら成功してもおかしくなかったように見えた。Dday直後のこの時期にクーデターが成功していたら、数百万人規模でドイツ国民の命は救われたであろうに・・・ヒトラーの(この時点での)運の良さは悪魔的なほどだ。

トム・クルーズは、ほとんど笑顔を見せない、普段とはちょっと異なる役回りながら、好演で、背も高く見えた。だけど、トム・クルーズって「典型的・代表的アメリカ人」というイメージが(少なくとも私の中では)強く固定されているので、どうしてもドイツ人には見えないのだった。
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