蛙と蝸牛

本の感想。ときどき競艇の話。

映画篇

2009年09月22日 | 本の感想
映画篇(金城一紀 集英社)

装丁や中身のデザインがシンプルで、そっけなくも見えるけれど、こういうのが好みの人(私もそうだけど、実際には図書館で借りた)はこれだけで買ってしまいそう。

映画にまつわる人間模様みたいなものを描いた短編集。5つの短編のタイトルもすべて映画の題名そのまま。どの短編にも、映画が好きでたまらない、という著者の思いがあふれているようだった。

5つの短編に共通した設定もあって、読者の興味をかきたてるようなちょっと凝った構成になっているが、最後の短編が露骨な種あかしみたいになってしまっているのは、ちょっと残念だった。

冒頭の朝鮮学校時代の同級生の消息を描いた「太陽がいっぱい」が一番よくて、次にいいのが、夫に自殺された妻の回復をテーマにした「ドラゴン怒りの鉄拳」。3番目の「恋のためらい・・・」は、ちょっといかれた高校生カップルの破綻した行動の話。このあたりまでは、「ちょっと重松清風かも」と思いつつも楽しく読みすすめた。
4話の「ペイルライダー」の結末は、それまでの3話とあまりに隔絶していて違和感があり、最後の「愛の泉」は登場人物が皆とてもいい人ばかりで、読んでいてむず痒くなるというか、歯が浮くというか、サザエさんみたいというのか、とにかく、読み続けるのが恥ずかしいような気分になってしまった。
コメント
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