医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

子宮頚部ガンの原因にたいするワクチン

2006年01月13日 | 
子宮頚ガンの全ては、性交渉で感染の機会が増えるとヒトパピローマウイルスによる炎症から進展します。健常女性においても10~30%にヒトパピローマウイルスが検出されますが、大部分の例でウイルス感染は陰性化するといわれており、感染が持続し異形成と呼ばれる前癌病変が発生するのはその一部です。異形成は軽度、中等度、高度の3段階に分けられますが、自然に消えてしまうものや長期間にわたる観察においても変化のないものも多くあります。しかし、軽度異形成の約5%、中等度異形成の10%、高度異形成の20~25%が次の段階に進展します。

子宮頚ガンの原因がウイルス感染であれば、そのワクチンを使い初期の感染を予防すれば子宮頚ガンが予防できるのではないかという発想から、今月次のような論文が報告されました。

Obstetrics & Gynocology. 2006;18:18.
(インパクトファクター★★☆☆☆、研究対象人数★★★★★)

Efficacy of humanpapillomavirus-16 vaccine tp prevent cervial intraepithelial neoplasia: A randomized controlled trial.

16歳から23歳の女性2,391人がヒトパピローマウイルスのワクチン接種群と単なる生理食塩水接種群に二重盲検(注射をした者もされた者もどちらの群か知らない)で分けられ、6カ月ごとに48カ月間、ウイルス抗体価が測定されました。不正出血など、臨床症状が認められた場合や、調査期間の最後に、子宮頚部内視鏡と子宮頚部の細胞の検査が施行されました。

結果は、期間中750人のワクチン非接種群のうち111人(14.8%)にヒトパピローマウイルスの感染が認められましたが、ワクチン接種群では7人(0.9%)で感染は接種群の方で有意に減少していました。ワクチン非接種群のうち12人(1.6%)にヒトパピローマウイルスが原因と考えられる細胞異形成が認められましたが、ワクチン接種群には1人も認められませんでした。接種後7カ月で抗体価が最高になり、18カ月で減少し、少なくとも3年半後まで抗体陽性が持続することがわかりました。

アメリカではこの結果をうけて、思春期の女性の希望者にヒトパピローマウイルスワクチンを接種しようとする動きもあります。いかにもアメリカならではの対処法だと思いますが、日本にとっても他人事ではありません。

この研究における参加者の協力は並大抵のものではないと思います。自分がワクチン非接種群に入る可能性もあり、調査の最後に子宮頚部内視鏡と子宮頚部の細胞の検査があるにもかかわらず2,391人もの女性が参加しているのです。ワクチンの有効性の有無を明らかにしたいという欧米の国民の意識は賞賛に値すると思います。


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