医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

誤解と批判を恐れない斜め後ろから見た医療情報

高血圧治療薬・ブロプレスの徹底検証(その1)

2006年01月23日 | 循環器
昨日お伝えした調査は、3つの報告のメタアナリシスで、いろいろな状況の患者さんが対象となっていました。それぞれの状況に合った効果判定はどうなのかということで、今回はそのなかの1つに絞ってご紹介したいと思います。

Effect of candesartan in patients with chronic heart failure and reduced left-vebtricular systolic function intolerant to angiotensin-converting-enzyme inhibitors: th CHARM-Alternative trial.. Lancet. 2003;362:772.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)

心不全に効果があると報告されている高血圧の薬、アンギオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害剤)には咳という副作用がかなりの頻度で出現し、咳のために内服の継続が困難な場合があります。今回調査対象となったのは咳などの副作用で、ACE阻害剤が内服できなくなった慢性心不全患者です。

慢性心不全患者2,028人がブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与群(1,013人)(4mg/日から最高32mg/日)と非投与群(1,015人)に無作為に割り当てられ3年間調査されました。

対象となった患者さんで、ACE阻害剤の副作用の内訳は、咳が72%、低血圧が13%、腎障害が12%でした。

突然死、心不全の進行による入院、心筋梗塞、脳卒中、心筋梗塞以外の心臓血管病、全ての心臓血管病による死亡、ガンによる死亡、ガンと心臓血管病以外を原因とする死亡、全ての死亡について発症率が調査されました。

3年間でブロプレスの内服が有意に改善させていた疾患は、上記のうち心血管病による死亡(24.1%を21.6%に、P=0.02)、心不全の進行による入院(28.2%を20.4%に、P<0.0001)の2項目でした。 効果があった2項目と合わせて、「心血管病による死亡、心不全の進行による入院、心筋梗塞による入院、脳梗塞による入院の合計」などという項目で改善があったと報告していますが、それなら「心筋梗塞による入院」単独や「脳梗塞による入院」単独で解析するべきです。それが示されていないのは、それら単独では改善が認められていなかったからでしょう。

ともあれ、ブロプレスは慢性心不全患者1人の心血管病による死亡を854万円で予防し、1人の心不全の進行による入院を273万円で予防します。

今は何位かな?

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