前回までは慢性心不全患者に対するブロプレスの効果でした。今回は心不全が軽度の患者さんに対する効果はどうかという報告です。
この論文の中では、心不全が軽いという事を心臓の超音波検査や左室造影検査の「左室駆出率」という指標で判断しています。左室駆出率は心臓のポンプとしての働きを反映し、正常では60%程度ですが、心不全にともない低下します。
この研究では左室駆出率が40%以上を軽度心不全としています。60%が40%に低下しているということは、車でいえば2000ccのエンジンが1300ccぐらいまで低下していることと考えればわかりやすいかもしれません。
Effects of candesartan in patients with chronic heart failure and preserved left-ventricular ejection fraction: the CHARM-Preserved trial.
Lancet. 2003;362:777.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
対象は左室駆出率が40%以上の軽度心不全患者3,025人で、ブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与群(1,514人)(4mg/日から最高32mg/日)と非投与群(1,509人)に無作為に割り当てられ3年間調査されました。
突然死、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中、心筋梗塞以外の心臓血管病、全ての心臓血管病による死亡、ガンによる死亡、ガンと心臓血管病以外を原因とする死亡、全ての死亡について発症率が調査されました。
3年間でブロプレスの内服が有意に改善させていた疾患は、上記のうち心不全による入院(18.3%を15.9%に、P=0.072)の1項目だけでした。NNT(患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療を行わなくてはならないのかを示す指数)は41人ですから、41人が内服した場合、「心不全による入院(非致死性)」を予防する恩恵を受けるのは、その中の1人です。
つまり、左室駆出率が40%以上ある(元気な)患者さんにとって、ブロプレスには生命予後改善効果はほとんどなく、唯一の効果である1人の心不全による入院(非致死性)を予防するのにも薬剤費が889万円かかります。これはちょっと高すぎませんか。
誤解を恐れずいうならば、889万円あれば実際に心不全で入院している多くの患者さんの治療費を捻出することができます。
薬剤選択は医師の裁量にまかされています。製薬会社はデータの一部だけを医者に提示して、全ての条件で効果があるような印象を与えてしまいがちですが、論文の元を読んでみると、製薬会社が示すデータの中で伝えられていない論文内容がある事もわかります。
今は何位かな?
この論文の中では、心不全が軽いという事を心臓の超音波検査や左室造影検査の「左室駆出率」という指標で判断しています。左室駆出率は心臓のポンプとしての働きを反映し、正常では60%程度ですが、心不全にともない低下します。
この研究では左室駆出率が40%以上を軽度心不全としています。60%が40%に低下しているということは、車でいえば2000ccのエンジンが1300ccぐらいまで低下していることと考えればわかりやすいかもしれません。
Effects of candesartan in patients with chronic heart failure and preserved left-ventricular ejection fraction: the CHARM-Preserved trial.
Lancet. 2003;362:777.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
対象は左室駆出率が40%以上の軽度心不全患者3,025人で、ブロプレスというアンギオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)投与群(1,514人)(4mg/日から最高32mg/日)と非投与群(1,509人)に無作為に割り当てられ3年間調査されました。
突然死、心不全による入院、心筋梗塞、脳卒中、心筋梗塞以外の心臓血管病、全ての心臓血管病による死亡、ガンによる死亡、ガンと心臓血管病以外を原因とする死亡、全ての死亡について発症率が調査されました。
3年間でブロプレスの内服が有意に改善させていた疾患は、上記のうち心不全による入院(18.3%を15.9%に、P=0.072)の1項目だけでした。NNT(患者さん1人がメリットを得るために、同様の患者さん何人に治療を行わなくてはならないのかを示す指数)は41人ですから、41人が内服した場合、「心不全による入院(非致死性)」を予防する恩恵を受けるのは、その中の1人です。
つまり、左室駆出率が40%以上ある(元気な)患者さんにとって、ブロプレスには生命予後改善効果はほとんどなく、唯一の効果である1人の心不全による入院(非致死性)を予防するのにも薬剤費が889万円かかります。これはちょっと高すぎませんか。
誤解を恐れずいうならば、889万円あれば実際に心不全で入院している多くの患者さんの治療費を捻出することができます。
薬剤選択は医師の裁量にまかされています。製薬会社はデータの一部だけを医者に提示して、全ての条件で効果があるような印象を与えてしまいがちですが、論文の元を読んでみると、製薬会社が示すデータの中で伝えられていない論文内容がある事もわかります。
今は何位かな?