医者から詳しく聞かされない医療情報:セカンドオピニオン

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ビタミンEは動脈硬化性心臓病とガンを予防するか

2006年04月02日 | 生活習慣病
以前の記事ですが、この記事の内容について、法律の専門家みそしる様からコメントをいただきましたのでアップさせていただきました。



HOPE及びHOPE-TOOと名付けられた大規模臨床試験の結果が発表されました。しかも解説のおまけ付きです。
Effects of long-term vitamin E supplementation on cardiovascular events and cancer.
Journal of American Medical Association. 2005;293:1338.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)

脳卒中の病歴、冠血管疾患か末梢血管疾患の既往、または1つ以上の心血管危険因子を伴う糖尿病を有する55歳以上の患者9,541例のうち4,761例がビタミンE群に、4,780例がプラセボ群に割り付けられました。主要評価項目は、癌、癌関連死亡、および脳卒中・心筋梗塞・心血管関連死亡の複合で、心血管疾患の二次的評価項目は、心不全、入院を要する不安定狭心症、うっ血の臨床症状を伴う入院を要する心不全、および全死因死亡です。

動脈硬化性心臓病の発生数はビタミンE摂取で改善されず、HOPEではビタミンE群の1,022件に対してプラセボ群985件(P=0.34)、HOPE-TOOではビタミンE群の807件に対してプラセボ群769件でした(P=0.31)。さらに脳卒中、心筋梗塞、心血管関連死亡、入院を要する不安定狭心症、血行再建術、および全死因死亡の個別の発生率に関して有意差はありませんでした。しかしHOPEとHOPE-TOOの双方において、心不全と心不全による入院の発生率は、ビタミンE投与群のほうがプラセボ群より高かったようです(心不全の相対リスクは、HOPEでは1.13、P=0.03、HOPE-TOOでは1.19、P=0.007)。

血管疾患患者と糖尿病患者にビタミンEを長期投与しても、主要な動脈硬化性心臓病、癌、および癌関連死亡の発生率は低下せず、とくにビタミンEは心不全と心不全による入院の発生数を増加させました。

どうしてビタミンEが様々な疾患に効果がないのかという疑問に対するウィダー博士とハリソン博士のコメントです。
「ラジカルとビタミンEの反応によりビタミンEラジカル(tocopheroxyl radical)が形成されるが、これは酸化促進効果をもちうる。さらに、一部の活性酸素種は有益なシグナル特性をもっており、ビタミンEがこれらを取り除くことで体に害がもたらされる可能性がある。」

さらにこのように結論づけています。
「ビタミンEは、確立した冠動脈疾患、末梢血管疾患、脳卒中の既往、または糖尿病を有する患者への適応はなく、これらの患者に投与すべきではない。総合ビタミン剤にわずかに含まれる場合(おそらく1日50IU未満)を除き、これらの患者にはビタミンEを摂取するのをやめさせるべきである。」

以前、脳循環改善剤のある薬がその後の研究で全く効かない事が判明し発売中止になった事がありました。その時「今までその薬に支払った代金はどうなるの?」と思いましたが、この薬も近い将来そんな結末をむかえそうです。今後このまま動脈硬化にビタミンEを買わされていくとすれば、それは「債務不履行」(民法415条)ではないですか?「履行請求」(民法414条)は無理でしょうから、損害賠償請求(民法415条)でしょうか。ひょっとすると詐欺(民法96条)かもしれません。

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(みそしる様のコメント)
こんにちは。ご指名いただきありがとうございます。参上いたしました。

まず、だますつもりがなければ、詐欺にはなりませんので、民法96条を理由に契約を取り消すことはできないと考えます。

問題は債務不履行でしょうね。今まで販売していた薬に効き目が無かったことがわかったとすれば、欠陥品を売買していたことになり、債務不履行の一種である「不完全履行」ということになります。

不完全履行の場合は「追完」といいまして、代わりになる他の同等価値のものを提供すれば、責任を免れることになります。しかし、期待する効き目のある薬が、まだ現代科学で開発されておらず、この世に存在しないということになると、追完ができず、結局「履行不能」となります。やはり債務不履行です。

では、この場合に履行不能を理由に損害賠償や契約解除はできるのか。条文はこうなっています。

◆ 民法 第415条(債務不履行による損害賠償)
 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。債務者の責めに帰すべき事由によって履行をすることができなくなったときも、同様とする。

◆ 民法 第543条(履行不能による解除権)
 履行の全部又は一部が不能となったときは、債権者は、契約の解除をすることができる。ただし、その債務の不履行が債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。


薬の買い主側が、売買契約の解除を主張して代金を取り戻したり、損害賠償を請求したりするには、債務者(売り主)の「責めに帰すべき事由」(略して帰責事由)が必要になります。

民法の解釈上、帰責事由は、「故意や過失」とほぼ同じ意味です(厳密にはもう少し広いですが)。なので、薬の売り主が、契約当時、効き目が無いことを知り得たのに、予想できたのに売ったのならば、帰責事由ありで、解除や損害賠償の主張を甘んじて受けなければならなくなるでしょう。

ここから先は、具体的な事実認定の問題ですから、具体的な事情をご存知のsecondopinionさんのご判断に委ねます。

これからもよろしくお願いします!
コメント (1)
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