大動脈瘤は大動脈のどこにでも発生する可能性はありますが、最も起こりやすいのは腎動脈と大動脈が下肢へと枝分かれする間の腹部大動脈です。動脈瘤がある部位はちょうど蛇が卵を丸呑みしたように紡錘形にふくらみます。ほとんどが何年も無症状で過ぎますが、拍動性のしこりとして偶然に自分で気づいたり、診察中に発見されたりします。確定診断にはCT、超音波検査や血管造影が有効です。腹部大動脈が一度破裂すると緊急手術以外には救命の方法はありませんが、手術が間に合わない場合が多く致命的になります。一般に動脈瘤の直径が5.5cmを越えると、破裂の可能性が急速に増加するので、できるだけ早期に手術して人工血管で置換します。
腹部大動脈瘤はその大きさがどれくらいの時に手術をするべきか、先日アメリカ心臓病学会からガイドラインが4年ぶりに改定され根拠が示されました。
ACC/AHA 2005 Practice Guidelines for the Management of Patients With Peripheral Arterial Disease (Lower Extremity, Renal, Mesenteric, and Abdominal Aortic).
Circulation. 2006;113:e463.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
このガイドラインでは2つの大規模無作為臨床試験の結果が示されています。1つめは
United Kingdom Small Aneurysm Trial Participants. Long-term outcomes of immediate repair compared with surveillance of small abdominal aortic aneurysms.
New England Journal Medicine. 2002;346:1445.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
対象は40mm以上の小さな腹部大動脈を指摘された方(平均年齢69歳)で、その大きさが54mm以上になるまで手術をしないで様子をみる群(527人)と、発見された時点で積極的に手術をする群(536人)に分けられ8年間観察されました。
観察群では最終的に大きさが54mmに達したためや大動脈瘤が破裂したために手術が必要であったのは62%でした。他の原因による死亡も含めて8年間での死亡率は観察群で48%、手術群で43%で平均としては両群で差がありませんでしたが、大動脈瘤の大きさ別でみると観察群で48mmまでの死亡率が46%であるのに対して55mmまで手術しないでいた場合の死亡率は56%と有意に高くなってしまう事がわかりました。
手術の死亡率は5.4%で、女性であるという因子は死亡率を4倍高くしました。破裂率は年間3.2%でした。
もう1つは
Immediate repair compared with surveillance of small abdominal aortic aneurysms.
New England Journal Medicine. 2002;346:1437.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
対象は40mm以上の小さな腹部大動脈を指摘された方(平均年齢68歳)で、その大きさが54mm以上になるまで手術をしないで様子をみる群(567人)と、発見された時点で積極的に手術をする群(567人)に分けられ5年間観察されました。
観察群では最終的に大きさが54mmに達したためや大動脈瘤が破裂したために手術が必要であったのは62%でした。他の原因による死亡も含めて5年間での死亡率は観察群で22%、手術群で25%と平均としては両群で差がありませんでしたが、大動脈瘤の大きさ別でみると観察群で49mmまでの死亡率が22%であるのに対して54mmまで手術しないでいた場合の死亡率は32%と有意に高くなってしまう事がわかりました。
手術の死亡率は2.1%で、破裂率は年間0.6%でした。
こちらの報告は対象に女性がほとんど入っていない事と調査期間が短いということで、1つめの報告より死亡率は低くなっています。
これらの結果をうけて、
40mmから54mmは6カ月から1年に1回超音波やCTで検査が必要
40mm以下は2年から3年に1回超音波で検査が必要
55mm以上は手術が必要
50mmから54mmまでは手術が有用
症状がなく、男性で50mm以下、女性で45mm以下の場合、手術は推奨されない
(つまり、男性ではこの場合手術をせずに50mmを超えるのを待ってから手術をしても予後は同じ)
というガイドラインになりました。
ただし、これらは白人や黒人の調査に基づいているので、日本人の場合、体格の平均が1割小さいとすれば、手術を必要とする大きさも1割(約5mm)小さくして考えた方がいいかもしれません。
「なるほど、ためになった」と思われた方は、こちらから投票をお願いいたします
今は何位かな?
腹部大動脈瘤はその大きさがどれくらいの時に手術をするべきか、先日アメリカ心臓病学会からガイドラインが4年ぶりに改定され根拠が示されました。
ACC/AHA 2005 Practice Guidelines for the Management of Patients With Peripheral Arterial Disease (Lower Extremity, Renal, Mesenteric, and Abdominal Aortic).
Circulation. 2006;113:e463.
(インパクトファクター★★★★☆、研究対象人数★★★★★)
このガイドラインでは2つの大規模無作為臨床試験の結果が示されています。1つめは
United Kingdom Small Aneurysm Trial Participants. Long-term outcomes of immediate repair compared with surveillance of small abdominal aortic aneurysms.
New England Journal Medicine. 2002;346:1445.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
対象は40mm以上の小さな腹部大動脈を指摘された方(平均年齢69歳)で、その大きさが54mm以上になるまで手術をしないで様子をみる群(527人)と、発見された時点で積極的に手術をする群(536人)に分けられ8年間観察されました。
観察群では最終的に大きさが54mmに達したためや大動脈瘤が破裂したために手術が必要であったのは62%でした。他の原因による死亡も含めて8年間での死亡率は観察群で48%、手術群で43%で平均としては両群で差がありませんでしたが、大動脈瘤の大きさ別でみると観察群で48mmまでの死亡率が46%であるのに対して55mmまで手術しないでいた場合の死亡率は56%と有意に高くなってしまう事がわかりました。
手術の死亡率は5.4%で、女性であるという因子は死亡率を4倍高くしました。破裂率は年間3.2%でした。
もう1つは
Immediate repair compared with surveillance of small abdominal aortic aneurysms.
New England Journal Medicine. 2002;346:1437.
(インパクトファクター★★★★★、研究対象人数★★★★★)
対象は40mm以上の小さな腹部大動脈を指摘された方(平均年齢68歳)で、その大きさが54mm以上になるまで手術をしないで様子をみる群(567人)と、発見された時点で積極的に手術をする群(567人)に分けられ5年間観察されました。
観察群では最終的に大きさが54mmに達したためや大動脈瘤が破裂したために手術が必要であったのは62%でした。他の原因による死亡も含めて5年間での死亡率は観察群で22%、手術群で25%と平均としては両群で差がありませんでしたが、大動脈瘤の大きさ別でみると観察群で49mmまでの死亡率が22%であるのに対して54mmまで手術しないでいた場合の死亡率は32%と有意に高くなってしまう事がわかりました。
手術の死亡率は2.1%で、破裂率は年間0.6%でした。
こちらの報告は対象に女性がほとんど入っていない事と調査期間が短いということで、1つめの報告より死亡率は低くなっています。
これらの結果をうけて、
40mmから54mmは6カ月から1年に1回超音波やCTで検査が必要
40mm以下は2年から3年に1回超音波で検査が必要
55mm以上は手術が必要
50mmから54mmまでは手術が有用
症状がなく、男性で50mm以下、女性で45mm以下の場合、手術は推奨されない
(つまり、男性ではこの場合手術をせずに50mmを超えるのを待ってから手術をしても予後は同じ)
というガイドラインになりました。
ただし、これらは白人や黒人の調査に基づいているので、日本人の場合、体格の平均が1割小さいとすれば、手術を必要とする大きさも1割(約5mm)小さくして考えた方がいいかもしれません。
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