8月18日(金)、「介護保険良くする会」が、福祉用具貸与をうち切られる人への救済策や制度変更の十分な説明などを求めておこなった緊急の対市交渉に参加しました。この件をご報告しようと思ったのですが、そのためには、昨年来の介護保険制度改悪について整理する必要がありますので、今日はそのご報告。
介護保険では、「要介護度」を軽い方から1~5に区分し、要介護1に至らない人を「要支援」としていました。今四月から、これまでの「要支援」と「要介護1」の大部分の人が「要支援1、2」という区分に変えられ、従来のサービスである「介護給付」とは別枠の「新予防給付」に移行されることになりました。
新予防給付は、受けられるサービスが限定されるとともに、将来的にサービスが切り捨てられていく仕組みになっています。
1)新予防給付開始の困難
新予防給付を受けるためには、「予防プラン」を作成してもらわなければなりませんが、体制が無い(のに開始した)ためにかなり遅れを来しています。
都市部では、遅れどころか「プランを立ててくれる人が無い」という状況も広がり、「予防プラン難民」という言葉も飛び交っているそうです。
2)負担増による施設退所
昨年十月から施設入所者に居住費・食費が自己負担とされ、退所者が増加しています。保険医団体連合会の調査から推計すると、全国で3200人程度の人が退所を余儀なくされたと見られます。 山形県では、57人の退所が明らかになっています。
私も市内の老人保健施設をいくつか視察しましたが、「個室だと月15,16万円」と聞いて、入れない市民が多いだろうなと痛感しました。
3)保険料アップ
今年の四月から全国で「第3期介護保険事業計画(3ヶ年)」が始まりましたが、介護保険料は、92%の自治体で引き上げられ、平均で24%引き上げられました。 鶴岡市では、基準額で月3271円が4158円に引き上げられました。
さらに、高齢者大増税の影響で介護保険料が増加した(段階が上がった)人が約5800名にのぼり、増税額は約8800万円にもなっています。
4)生活援助の削減
新予防給付では「自分でやる」ことが基本とされ、家族や近所の助けなども無いような人でないと生活援助が受けられなくなりました。通院の支援も外されました。 介護給付(要介護1~5の人が対象)でも、ヘルパーの生活援助の報酬が一時間でうち切られるため、実質的に一時間で制限されました。「買い物を頼んだら『筋トレをやれ』と言われた」などという利用者の嘆きも紹介されています。
福祉用具では、車イス、介護用ベッドなど五種類が貸与打ち切りの対象となりますが、鶴岡では打ち切りの対象となる人(福祉用具を借りている人の中で、要介護1、要支援1・2の人)は4~500人にのぼると見られ、影響は深刻です。
当初の「理念」はどこに??
介護保険制度は、「利用者が介護サービスを選択できる」「介護を社会化し、家族の負担を無くす」などと言う触れ込みで開始され、新たに介護保険料が徴収されるようになりました。それまで福祉で無料で受けられた人も「利用料」が取られるようになりました。「お金を払うと、権利意識が高まる」などとも言われたものです。「介護度」は1から5まで設け、該当する人に介護を提供するということになりました。
ところが今回の改悪では、折角「選択」した施設からは追い出され、介護予防を受けるための計画さえ立ててもらえない状況が広がっています。福祉用具が無くなって家族の介護が必要となる人も出ます。介護度も「1の人はやっぱり対象から外します」などということが簡単に決められていいのでしょうか。しかも、保険料は引き上げです。
介護保険が始まってたったの5年(昨年時点)、最初の「理念」なるものがいかに薄っぺらなものであったか明らかです。だから政治が信頼されないんですよね。
(薄っぺらいのは、理念を真剣にめざした関係者の方々ではなく、国の社会保障支出削減という動機を「理念」でコーティングしようとした人々の「理念」です。)
以上を前置きとして、対市交渉の内容を後日ご報告します。