市議会9月定例会最終日、議案に対する討論・採決がおこなわれ、私はH22年度決算議案の内2件について反対討論をおこないました。
当局提案議案は、平成22年度決算議案3件の他、平成23年度補正予算6件等26議案でしたが、採決の結果、決算議案2件は日本共産党のみの反対、その他の議案は全会一致で承認・議決されました。
以下、討論の全文です。
日本共産党市議団を代表して、議第75号平成22年度一般会計及び国民健康保険、後期高齢者医療保険、介護保険の3特別会計及び議第76号病院事業会計の決算の認定に反対の討論をおこないます。
昨年度の政府予算は、一昨年の総選挙の結果を受けて、生活保護母子加算復活、高校授業料無償化、(子ども手当、戸別所得補償)など国民生活にとっては前向きな内容も含んでいましたが、基本路線において自公政治の構造改革路線を引き継ぎ、深刻な生活危機と景気低迷から脱却する道を示すことができない行き詰まったものでした。
こうした中で、市民の暮らしと福祉を守る地方自治体の役割の発揮がいよいよ求められていましたが、H22年度の本市市政の方向性は、残念ながらその要請に応えるものとはならなかったと考えます。
第一は、暮らしを守る施策の立ち後れと後退です。
国保税滞納世帯は加入者の9軒に1世帯にも達し、滞納額は15億円、短期保険証は860件も発行されています。高すぎて納められない国保税は、制度の根幹を揺るがすのみならず、市民生活の重い負担となっています。
合併後の税率統一で、全体としては引き下げが図られたことは、市民の声の反映として評価するものですが、一部地域は引き上げとなりました。
現状は深刻であり、収納対策の強化で解決できるようなものではまったくありません。
根本的解決のために、国に対して国庫負担金引き上げを強く求めていかなければなりません。
増税をもたらし、被保険者から事業運営を遠ざける国保の広域化はおこなうべきではありません。
老人差別の医療制面を無批判に受け入れる後期高齢者医療特別会計決算も容認出来ないものであります。
介護保険では、22年が第四期事業計画の中間年でしたが、特別養護老人ホーム増設数は3年間で78床に止まり、計画の上乗せはおこなわれていません。千人を超える入所待ちの方に応えていくことは、保険者の責務です。
利用料軽減措置の拡充もおこなわれませんでしたが、誰でも必要な介護が受けられる制度に前進させていくために、市の責務は重要です。
第二に、合併調整と行財政改革という名の、市民負担増とサービス削減が進められました。
委託業者の業務内容への市の関わりが法的に制約され、公的責任をまっとうすることが困難となります。
さらに、経験を積んだ市職員は誰もいなくなり、業者の職員は市職員とは比べようもない労働条件で同じ仕事が求められています。市民の命と健康を守る仕事には、安定し安心して働き続けられる処遇が必要です。
また、地場産食材の使用は、委託の前提であったハズですが、業者への要請も、あくまでお願いであって、保障の無いものであることが明らかになりました
加えて、中央の大手業者への委託ですから、事業の利益は地域の外に流出し、地域経済にもマイナスとなりました。
荘内病院に関しては、地方公営企業法全部適用もおこなわれました。病院経営の採算性重視が強められ、将来的な独立行政法人化にも道を開くものとして問題です。
荘内病院が当面する看護基準引き上げのためには、医師とともに看護師の養成・確保に市があらゆる方策を尽くしていくことが求められています。
市立保育園民営化は東部保育園で3園目となりました。地域の保育には民間も市立も不可欠であり、市は公立保育園の役割をきちんと検証し、地域の保育に責任を果たすべきです。
保育料も24年度の統一に向けて21年度に続く引き上げがおこなわれました。
学童保育保育料は、旧町村地域で引き上げです。旧市の施設も含めて保育料軽減は切実です
小中学校の図書館司書は、正規職員から臨時職員への置き換えで22年度に全校が非正規雇用となりました。全国に誇るべき子どものための施策の後退は、もったいないという他ありません。
羽黒中学校改築で自校調理施設が作られず、小学校も含めた外部配送が進められようとしています。
敬老会への公費負担や老人クラブの補助削減、福祉タクシー券削減なども次々と進められました。
市一般職職員給与の削減もおこなわれました。財政難を職員に転嫁するものであり、地域経済を冷え込ませるものともなりました。
以上のように、合併調整と引き続く行財政改革は、民間に委ねてはならないものも民間に投げ出し、その評価もおこなわないものであり、事業の意義・内容の精査を省略した支出削減追求、民主党政権流のいわゆる事業仕分けのようなものになっているのではないかと危惧されるものです。
特に、民間委託による事業の「効率化」とは、結局、労働者の処遇の引き下げによって経費削減を進めるだけのものになっているのではないかという疑念が深まりました。
年度末に発生した未曾有の大震災の体験は、安心して暮らしていくことのできる地域をつくるということが、自治体施策の根本的テーマであること、暮らしを守ることが政治の最大の課題であることを、すべての関係者に警鐘を鳴らしていることに注目すべきです。
第三に、産業と雇用政策の基本方向についてです。
先端生命科学研究所関連事業として、産業支援センターの拡張がおこなわれました。
「バイオ産業での企業40社の創業と一千人の雇用創出」という10年前の市の説明が達成される見通しも無いままに投資が続けられています。
その事業は産業面のみならず、「多面的観点からの戦略的振興策」などとしして、本市の命運をかけるかのような巨額プロジェクトとなっています。
このような事業が市民の合意も無いままに際限なく進められていることは、市政の最大の問題です。
世界最先端という研究の進展が価値あるものであることは言うまでもありませんが、本市の支援は、地場産業・中小商工業の振興と雇用拡大に結びつくものでなければならないものであり、研究の推進は国の支援でおこなわれるべきものであることを改めて指摘するものであります。
次に森林文化都市の問題では、外国との交流事業よりも何よりも、森を守る中山間地の住民の生活を成り立たせる施策が求められます。旧町村でつくられた条件不利地への支援、暮らしを守る施策の意義を見直し発展させるべきですが、特色ある農業・林業と関連産業の振興とともに、自然エネルギーの産業化が期待されています。
これまで重ねられてきた各種の実験的事業をふまえ、22年度には再生可能エネルギー賦存量調査が実施されました。
世界でも日本でも脱原発の大きな流れが広がりつつある今、本市の豊かな資源を活用するこの分野を花開かせる施策が求められます。
市政運営で改善された面にも触れておきます。
行財政委員会への公募委員導入と公開の原則については、今日多くの自治体で当然の施策となっていますが長年の市政への批判に対応したものであり、選考課程もオープンになつつ、すべての審議会・委員会に拡大していくべきものと考えます。
子どもの医療費軽減制度が入院で中学三年生まで拡大されたことも、子育て世代の要望に応えるものです。県内他市に遅れを取ることなく、一層の伸展を図ることが望まれます。
市長の車座トークなど、市民の生の声に触れようとする取り組みが開始されたことについても評価してきましたが、今議会に請願が寄せられた羽黒地区の学校給食の問題のように、市民と行政がぶつかりあったときにしっかりとした合意形成が追求されるのか否か、市長の姿勢の真贋が問われるところであります。
合併の弊害に目を向けて地域庁舎への予算と権限を配分するごとは適切なものでしたが、規模が小さすぎて地域要望に応えるにはほど違いものに終わっています。
地域審議会の権能を高めることなど、地域分権を進めるべきです。
最後に、決算全体についてでありますが財政上の様々な指標から「決算は大変良好」なものになったと説明されましたが、それは申し上げてきたような市民サービス縮小と負担増の進行の中で生じたものでした。
合併後10年、今から5年後にやってくる財政上の危機への対応として、H22年度市政の広範な分野で市民の痛みが広がったということであります。
合併5年の決算は、市町村合併が国による最大の自治体リストラであり、住民に大きな負担をもたらすものであったことをいよいよ明白なものとしました。
「合併してよかったと思える町づくり」などという 市民感情にそぐわない 不合理な
スローガンはやめて、合併の弊害を直視しつつ、徹底した市民参加の仕組みを構築することによって、市民の知恵を総結集して危機を乗り越える道を拓くことこそが今もとめられています。
そうした方向性にはなりえていないということを指摘して、反対討論とします。