関とおるの鶴岡・山形県政通信

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決まってもいない米沢トンネルのために基金を積む?

2024年03月17日 | 県政全般

 
 3月15日の本会議で私が討論をおこなった、山形新幹線(仮称)米沢トンネルのために基金を造成する条例案に反対する討論に少し説明(括弧内)を加えて報告します。
 いつもながら討論時間が3分に制限されていますので、なかなか十分な主張ができません。

<要旨>
○基金は、仮称米沢トンネル整備に向けて、R6年度に5億円、その後6年程度、30億円程度までの積立を想定している。豪雨、豪雪などによる運休・遅延などを減らす事と、10分間のスピードアップのため。
○一、もし実現する場合でも最短で7年程度、実際にはいつ始まるか、始まらないのか見通しが無い。
 コストの低い代案、速やかに実施できる代案が検討されるべき。
○二、国の支援を得るには費用対効果を満たす事業である必要があるが、その説明が無い。
○三、整備費用1500億円、恐らく本県の負担は巨額に及ぶ。効果不明瞭で多額の投資を要する事業より、県民の切実ニーズに応えるために全力を挙げるべき。
○実現の見通しも無い中、「政府にやる気を見せる」などとして、基金を積むというやり方は、合理性を欠く。

<全文>
 山形新幹線新トンネル整備基金条例の制定に反対します。この基金は、仮称米沢トンネル整備に向けて造成し、R6年度に5億円を積み立てるというもので、R6年度から6年程度、30億円程度までの積立が想定されています(担当課長の説明です)。整備の効果は、豪雨、豪雪などによる運休・遅延などを減らす事と、10分間のスピードアップといいます。
 しかしトンネルの構想には何点か疑問があります。

 一つは、運休・遅延対策について。安全・安定運行が重要な課題であることは言うまでもありませんが、豪雨、豪雪、動物等の対策は、トンネルほどの効果は無いにしろ、よりコストの低い方法がないのか代案が検討されるべきです。
 また、トンネル整備はもし実現する場合でも最短で7年程度、実際にはいつ始まるか、始まらないのか見通しがありません。速やかに実施できる安全・安定対策が検討されなければなりません。
 羽越線の運休・遅延対策も強く求めたい。

 二つ目に、費用便益、いわゆる費用対効果が示されていないということです。鉄道のみならず公共事業全般について、国が費用便益1に満たない事業に財政支出をおこなう事は想定されない中、この事業がそれだけの費用便益を満たすという説明はありません。
(県は「トンネルは防災対策でもあり、費用便益だけでは決められない」と言いますが、防災といってもこの路線の場合、決定的な危険が頻発する訳では無く、運休・遅延ですから、やはり費用便益抜きに国が取り組むとは考えられません。
 そこを明らかにすれば、実現可能性が薄い事が明らかになるので、県は示さないのかも知れません。国が負担しなければ整備はできませんので、現時点では可能性が無いということです。)

 三つ目に財政負担の問題です。整備費用1500億円に対して、国は一部でも負担するとは言っておらず、当然、本県とJRとの負担割合も不明です。例えば、本県が費用の3分の1を負担するとした場合でも500億円と言う巨額に及びます。
 厳しい財政状況によって、暮らし関連を始めとする県民の切実なニーズに十分対応できない中では、効果不明瞭で多額の投資を要する事業より、切実ニーズに応えるために全力を挙げるべきと考えます。
 以上のように、代案の検討無く、費用便益にも目をつむったままで、実現の見通しがない現段階で、「政府にやる気を見せる」などとして、基金を積むというやり方は、合理性を欠くと言わざるを得ません。
(30億円というのは「最短コース」で実現した場合の仮定の額であり、そこで実現しなければ、10年で50億、20年で百億と増やしていくのでしょうか? 実現すると仮定した場合百億円でも県負担の一部にとどまります。「山形県財政の中期展望」によれば、「財源確保対策を講じなければ令和8年度に財政調整基金が枯渇してしまいます」とされ、令和10年度には390億円の不足・財政赤字になるという厳しい状況であり、数百億円という財政をハード事業につぎ込む事が可能とは思えません。また、トンネルが実現しなかった場合、県の貴重な資金をただ積立てて寝かせておいた責任は誰が取るのでしょうか。)

  主に以上の3点から、本条例案には賛同し兼ねるものです。

  なお、予算全体については、県民の暮らしを守る諸施策を評価して賛成する立場であることを付言して、討論とします。