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光をくれた人

2018年01月12日 | 映画

M. L. ステッドマンのベストセラー小説「海を照らす光」を「プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ/宿命」のデレク・シアンフランス監督が映画化。マイケル・ファスベンダー、アリシア・ヴィカンダ―、レイチェル・ワイズが共演しています。

光をくれた人 (The Light Between Oceans)

第1次世界大戦後のオーストラリア。孤島に灯台守として赴任した帰還兵のトム(マイケル・ファスベンダー)は、土地の美しい娘イザベル(アリシア・ヴィカンダ―)と結婚し、幸せな日々を送っていましたが、イザベルは不幸にも2度続けて流産してしまいます。そんな折、父親らしき男性の遺体と赤ちゃんをのせたボートが島に流れ着きます。

本土に報告しようとするトムに、自分の子として育てたいと懇願するイザベラ。その思いに負け、トムは男性を埋葬し、娘が生まれたと虚偽の報告をしたのでした。2人は赤ちゃんにルーシーと名づけて大切に育てますが、洗礼式のために本土に渡った際に、夫と娘を海で失くしたハナ(レイチェル・ワイズ)という女性を知ります...。

公開時になんとなく見逃してしまいましたが、この作品、私はとても気に入りました。詩情あふれる海辺の風景と、そこで生きる誠実な人たち。戦後を時代背景に、孤島という特殊な環境の中で、ふとした出来心が引き起こした悲劇と再生への物語が、ていねいに描かれていて引き込まれました。

舟で運ばれてきた赤ちゃんをルーシーと名づけ、我が子として大切に育てるイザベラとトム。誰も知らない孤島であれば、その幸せは長く続いたかもしれませんが、本土に渡った2人は、ハナがルーシーの実の母親であることを知ってしまいます。トムは罪の重さに耐えかねて、イザベラに黙ってハナに手紙を送り、それがもとで事実が明らかにされるのでした。

全ての罪をひとりで背負うことを決意するトム。ルーシーを失い悲しみの中に突き落とされるイザベラ。そしてようやくもどってきた実の娘から、母ではないと拒絶され苦悩するハナ。

トムとイザベラが犯した罪はたしかに重いですが、そうせざるを得なかった当時の状況も理解できたので、イザベラを責めることはあまりに酷であると感じました。それでもイザベラが真実を話し、トムが背負った荷を少しでも軽くしてくれることを、心の中で望みながら見ていました。

一方ハナは、当時敵国人として差別されていたドイツ人を愛し結婚したほどの、真に自由な心をもった聡明で勇気ある女性。彼女は試練の中でもがき苦しみながら、かつて夫から教わったことばを思い出し、トムとイザベラを赦すことを決断するのでした。

この物語がどこに向かうのか、いろいろな可能性を思い浮かべながらスクリーンを見守っていましたが、ルーシーと関わるすべての大人たちが互いを思いやり、何よりもルーシーの健やかな成長と幸せを願って行動したことで、最終的に一番いい道が導かれたように思いました。

ややおとぎ話にすぎるという向きもあるでしょうが、俳優たちのすばらしい演技によって美しい物語に命が吹き込まれ、静かな感動を味わいました。

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