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ロケットマン

2019年08月30日 | 映画

イギリス出身の世界的ミュージシャン、エルトン・ジョンの伝記映画です。「ボヘミアン・ラプソディ」のデクスター・フレッチャー監督が手掛け、タロン・エガートンがエルトン・ジョンを演じています。

ロケットマン (Rocketman)

音楽をテーマにした作品が大好きなので楽しみにしていた本作。タロン・エガートンの歌も楽しみでしたが、吹き替えなしのタロンのパフォーマンスはほんとうにすばらしくて感動しました。タロン自身の優しさがにじみ出るような演技も心に残りました。

「ボヘミアン~」の監督作品ということで、二匹目のどじょう?と斜めに見ていましたが、本作もまた違った魅力がありました。エルトン自身が製作に関わっていて、彼の内面にぐっと踏み込んだ内容になっています。弱い部分もずばりと描かれていますが、これはエルトン自身が伝えたかったメッセージなのだと受け止めました。

フレッチャー監督は、タロン・エガートンが実在のスキーヤーを演じた「イーグル・ジャンプ」(Eddie the Eagle) の監督さんなのですね。タロン・エガートンとエルトン・ジョンは「キングスマン ゴールデンサークル」で共演していますし、きっと和やかな雰囲気の中で映画が作られたんだろうなーと想像しました。

エルトンが幼少から音楽の才能に恵まれていたというのは聞いていましたが、モーツァルトのトルコ行進曲を耳コピしてその場で再現してしまう天才ぶりにびっくり。でもそれ以上に衝撃だったのは、両親はどういうわけかエルトンに対して無関心で、おばあちゃんだけがよき理解者だったということ。孤独な彼の心を支えたのが唯一音楽の世界だったのですね。

エルトンが両親からもらった名前を変え、ド派手な衣装をまとってパフォーマンスしたのも、まったくの別人に生まれ変わりたいという心の表れだったのかもしれません。そんな彼の、現実から逃げ出したくなるような心のうちを、ミュージカルとファンタジーで表現していたのはとてもよかったです。

やがて、希代のメロディメーカーとしてレコード会社に才能を認められ、唯一無二のすばらしい詩を書くバーニー・トーピン(ジェイミー・ベル)に出会って、次々と名曲を生み出し、スターダムへと上っていきます。名曲 Your Song が生まれる場面が、バラバラな家族の心のリレーとなっていたのが印象的でした。

これまでずっと恋人を思って作られたラブソングだと思っていましたが、改めて聴くと、エルトンの愛を求めるはてしない思いが込められているようで、胸が締め付けられました。あるいは、バーニーとエルトンの永遠の友情がつまっているようにも感じました。

エルトンがスターへの階段を駆け上り、アメリカでのツアーを成功させるまでの前半から一転、後半は、エルトンのセクシャリティゆえの苦悩や、パートナーとの別れ、薬物との戦いなど、つらい場面が続きます。

それだけに、長くて暗いトンネルを抜けて、ようやく自分のアイデンティティを認め、自分を受け入れられるようになるラストは、派手ではないですが、静かな感動を味わいました。

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