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手抜きで適当が万事安泰とはいかなくなった現代『憑神』

2021-04-23 07:45:13 | 歴史から学ぶ
平和の世が長く続くと手抜きが当たり前になり、律儀なものが居ずらくなる、と本文にある。やがて根底から崩れ落ち、幕末から明治の改革が興きた。現代、戦後76年目(明治維新から153年目)今まで民間ベースの絶え間のない努力が実り経済復興を成し遂げてきた日本が一気に様変わりし始めた。それは本文にある幕末の江戸八百八町の凋落ぶりと照合わせると、今のコロナ感染疫病に当てはまるような気もする。経済復興の活気を取り戻すには強力なリーダーシップを持った人材(政治家)が居なくては無理だと言うことを。
『待っているだけの人達にも何かが起こるかもしれないが、それは努力した人達の残り物だけである』エイブラハム・リンカーン -
『憑神』浅田次郎
「概略」限りある命が虚しいのではない。限りある命ゆえに輝かしいのだ――時は幕末動乱の時代、貧乏旗本の次男の身ながら、その才を見込まれて大身の入婿となった彦四郎。だが、跡継ぎを授かったとたん離縁され、実家に出戻るはめに。ふとした気まぐれから、荒れ果てた祠を拝んだ彦四郎の前に現れたのは、神は神でも人に仇なす神だった……。
次男坊の彦四郎と出会ったのは「祠」それも3つの神付き、貧乏神、厄病神(疫病)、死神
・貧乏神は婿入りした組頭舅先で罠にハマり妻子を奪われ離縁追い出され、実家で浪人となる
・厄病神は舅先がその後出火し、火元注意で家族諸共江戸払いの沙汰になる
・疫病神は兄が仕事をしないばっかりに家取り潰しになる前に弟に相続できるよう兄に取り憑く
・死神は幕末の徳川慶喜の影武者となり、彦四郎は自分自身の死に場所を見つけた。それは出世を目指し、かも「世の中をそっくり背負ちまうほどの出世」だった。影武者は徳川由来の兜に金扇の御馬標とともに上野に潜んだ2千の彰義隊が守る寛永寺に捧げた。
「人の世は興行でござんす。天下太平の世の中で、お前のように何でも律儀になそうとすれば、他の者の立つ瀬がのうなる。お前様はその律儀さゆえに、自ら不運を招いてしもうた
「世間の仕組みがとやらが間違うているのだ。何事も手を抜いて、適当にやっていれば万事安泰だなどと、そんな理屈がまかり通ってたまるものか
江戸八百八町の凋落ぶりも、まさしく疫病神に取り憑かれたかのようだ。貨幣価値が著しく下がり、商人にかつての勢いがなくなった。職人の手間代も材料代も上がったから、建前の槌音さえ珍しく無くなった。大水で壊れた家々も一向に修復される気配はなく、市中の侍が参勤交代の撤廃で数が少なくなり、消費に頼っていた界隈の商店や職方はいよいよ暮らしが立ち行かぬ
戦いは勝ち負けではない。勝ちっぷりと負けっぷりじゃ。戦いには何の値打ちもない。無論武士も武士道も、何の値打ちもないことになる。世は武士の棟梁として、立派な負けっぷりをせねばならぬ」


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