私には、一年に一度だけ逢うことを許された愛しい恋人がいます。
毎年この季節になると気もそぞろになって仕事が手につかなくなるのです。恋焦がれた美しい『春の女神』に逢える季節がやってきたから、、、、。
ちょうど昨日、NHKで『石砂山(いしざれやま)の岐阜蝶』のニュ-スが伝えられていました。週末の天気が怪しい。今日、仕事の予定がぽっかり空いている。天気も良くて暖かく『春の女神』もご機嫌麗しいに決まってる。今日しかない。
かみさんに『今日、行っていい?』『行くだろうと思ってました』『じゃあ行ってくるね』。るんるん気分で中央高速を飛ばし、ふるさとの山へ向かった。8時ちょうど、『牧馬峠(まきめとうげ)』には車が一台もない。さすがに今日は木曜日、私一人で『春の女神』を独り占めできるぞ。峠に車を置いて登山道に取り着く。萌葱色の新緑が目に柔らかい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/b0/542448f2aca80adea30dc137eb8265e3.jpg)
春の山には、いくつもの山野草がひっそりと可憐な花を咲かせています。でも、膝を折って同じ目線にしないと出会うことはできません。私の大好きな『春蘭』。凜とした美しさはいつまでも変わることがありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/b9/37163b1d2e92c6a5f412f8c2c2d52f50.jpg)
とても繊細な『一人静か』。静御前が一人で舞う姿から名付けられたそうです。
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やさしい『チゴユリ』の花。山に入るといつも決まって、枯れ葉の上にあぐらをかいて可憐な花たちと話し込んでしまいます。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4b/bf/88889cbb0c0b9014d4299c3a8e506f2d.jpg)
当然に歩みも遅くなって、、、。だから、山は一人で来るに限ります。そろそろテッペンに近づきました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/29/bd/33329960e70a882152c0ae41d1966562.jpg)
9時半に『石砂山』に辿り着きました。普通に歩けば30分なのに3倍もかかっちゃいました。だって道草、楽しいんだものね。やっぱり、今日は誰もいないのです。うれしいなあ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/50/bcbd4f7a6a8195db577f495767f271f6.jpg)
と、喜んでいたのも束の間、つぎから次へと登山者がやってきて、結局16人もの人たちが集うこととなりました。この季節をみんな待っていたんだものね、仕方ないか。
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今日は独り占めできると思ってたのに、ちょっとがっかり気味の高崎さん。でも気を取り直して、皆さんと静かにしずかにお話しながらその時を待つこととなりました。
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10時10分すぎ、いよいよ待ちこがれていたショ-の開演となりました。中腹から舞い始めた舞姫たちは一匹また一匹と頂きへ舞い上がってきたのです。時間の経過とともに、その数は増えつづけ、ひらりひらりとあでやかな舞が頭上で繰り広げられています。ようやく地上に舞い降りた『春の女神』です。そぉ~っと、そぉ~っと近づいて、ズ-ムズ-ム。あでやかで、手を触れるとこわれてしまいそうなあやうさ。『あゝ、今年もまた逢えたね』。いつも同じ言葉を心の中でつぶやいてしまうのです。
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彼女たちに許された時間は午前中だけ。地上に羽を休めた『春の女神』たちも帰らなければなりません。これから交尾をして卵を産み付ける大切な役目を果たさなければなりません。『また来年逢おうね』『また来て下さいね、。ここで待っていますから』『元気でね、、、、とびますとびます!』『ちょっとお待ちになって。私はジロ-さんじゃありませんことよ』
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そして、一年に一度の『春の女神』との短いしのび逢いは終りを告げ、ひらりひらりと天空の彼方へと旅だって行ったのでありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/0a/0811613b8e57209285f751f2aff19848.jpg)
想いを遂げると急に空腹感に襲われて、、、、。
少々のビ-ルで喉を潤し、軽い昼食をとったあとは林の中で枯れ葉を枕にうとうと。おだやかで暖かな一日、気持ち良いお昼寝となりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/81/c05efdcc810f398960ebf7c88f146bc1.jpg)
午後3時半、肌寒さを感じて目をさますと頂にはもう誰もいなくなっていました。
さあ帰ろっかな。今日一日を振り返りながら今朝来た道を戻ります。
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木いちご。初夏には黄色くて甘酸っぱい実を実らせて野鳥たちにご馳走を振る舞ってくれるのです。
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山椿の花。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/32/c6/67143edf6712fc8eac17bb88696afdd0.jpg)
麓の巻き道に道祖神が祀られています。ふる里の人々の山に対する信仰心はいつまでも絶えることがないんですね。私もいつも手を合わせて山歩きの無事を祈っています。そして、この山に生息する『岐阜蝶』がいつまでも神奈川県の天然記念物として守られ続けますように、、、、。
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春蘭、一人静か、チゴユリ、一番美しい彼女たちに出会えた幸運に感謝したいと思います。ほんの何日か違うだけで、今日のように輝いている彼女たちとは出会えなかったと思います。
そして何よりも『春の女神』に再会できたことに感謝しています。このふる里の山は、どこにでもあるようなありふれた山、されどされど、多くの人たちを惹きつけてやまない魅惑の山でもあるのです。
石砂山、今年もありがとね。
毎年この季節になると気もそぞろになって仕事が手につかなくなるのです。恋焦がれた美しい『春の女神』に逢える季節がやってきたから、、、、。
ちょうど昨日、NHKで『石砂山(いしざれやま)の岐阜蝶』のニュ-スが伝えられていました。週末の天気が怪しい。今日、仕事の予定がぽっかり空いている。天気も良くて暖かく『春の女神』もご機嫌麗しいに決まってる。今日しかない。
かみさんに『今日、行っていい?』『行くだろうと思ってました』『じゃあ行ってくるね』。るんるん気分で中央高速を飛ばし、ふるさとの山へ向かった。8時ちょうど、『牧馬峠(まきめとうげ)』には車が一台もない。さすがに今日は木曜日、私一人で『春の女神』を独り占めできるぞ。峠に車を置いて登山道に取り着く。萌葱色の新緑が目に柔らかい。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/4e/b0/542448f2aca80adea30dc137eb8265e3.jpg)
春の山には、いくつもの山野草がひっそりと可憐な花を咲かせています。でも、膝を折って同じ目線にしないと出会うことはできません。私の大好きな『春蘭』。凜とした美しさはいつまでも変わることがありません。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/08/b9/37163b1d2e92c6a5f412f8c2c2d52f50.jpg)
とても繊細な『一人静か』。静御前が一人で舞う姿から名付けられたそうです。
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やさしい『チゴユリ』の花。山に入るといつも決まって、枯れ葉の上にあぐらをかいて可憐な花たちと話し込んでしまいます。
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当然に歩みも遅くなって、、、。だから、山は一人で来るに限ります。そろそろテッペンに近づきました。
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9時半に『石砂山』に辿り着きました。普通に歩けば30分なのに3倍もかかっちゃいました。だって道草、楽しいんだものね。やっぱり、今日は誰もいないのです。うれしいなあ!
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/18/50/bcbd4f7a6a8195db577f495767f271f6.jpg)
と、喜んでいたのも束の間、つぎから次へと登山者がやってきて、結局16人もの人たちが集うこととなりました。この季節をみんな待っていたんだものね、仕方ないか。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/40/83/8b2c1234a044a75c5fe7b2720fac2e8d.jpg)
今日は独り占めできると思ってたのに、ちょっとがっかり気味の高崎さん。でも気を取り直して、皆さんと静かにしずかにお話しながらその時を待つこととなりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/65/bf/03ba3b20f174fc6860903cdeffd83a91.jpg)
10時10分すぎ、いよいよ待ちこがれていたショ-の開演となりました。中腹から舞い始めた舞姫たちは一匹また一匹と頂きへ舞い上がってきたのです。時間の経過とともに、その数は増えつづけ、ひらりひらりとあでやかな舞が頭上で繰り広げられています。ようやく地上に舞い降りた『春の女神』です。そぉ~っと、そぉ~っと近づいて、ズ-ムズ-ム。あでやかで、手を触れるとこわれてしまいそうなあやうさ。『あゝ、今年もまた逢えたね』。いつも同じ言葉を心の中でつぶやいてしまうのです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/30/f2/d2617a90fdec7e9b74299fd5127ce644.jpg)
彼女たちに許された時間は午前中だけ。地上に羽を休めた『春の女神』たちも帰らなければなりません。これから交尾をして卵を産み付ける大切な役目を果たさなければなりません。『また来年逢おうね』『また来て下さいね、。ここで待っていますから』『元気でね、、、、とびますとびます!』『ちょっとお待ちになって。私はジロ-さんじゃありませんことよ』
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/52/ee/3db5ba59404f75c668380af21d1c6926.jpg)
そして、一年に一度の『春の女神』との短いしのび逢いは終りを告げ、ひらりひらりと天空の彼方へと旅だって行ったのでありました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/3a/0a/0811613b8e57209285f751f2aff19848.jpg)
想いを遂げると急に空腹感に襲われて、、、、。
少々のビ-ルで喉を潤し、軽い昼食をとったあとは林の中で枯れ葉を枕にうとうと。おだやかで暖かな一日、気持ち良いお昼寝となりました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/78/81/c05efdcc810f398960ebf7c88f146bc1.jpg)
午後3時半、肌寒さを感じて目をさますと頂にはもう誰もいなくなっていました。
さあ帰ろっかな。今日一日を振り返りながら今朝来た道を戻ります。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/15/65/d4f2087e17af52582764283dcdc016ef.jpg)
木いちご。初夏には黄色くて甘酸っぱい実を実らせて野鳥たちにご馳走を振る舞ってくれるのです。
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山椿の花。
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麓の巻き道に道祖神が祀られています。ふる里の人々の山に対する信仰心はいつまでも絶えることがないんですね。私もいつも手を合わせて山歩きの無事を祈っています。そして、この山に生息する『岐阜蝶』がいつまでも神奈川県の天然記念物として守られ続けますように、、、、。
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春蘭、一人静か、チゴユリ、一番美しい彼女たちに出会えた幸運に感謝したいと思います。ほんの何日か違うだけで、今日のように輝いている彼女たちとは出会えなかったと思います。
そして何よりも『春の女神』に再会できたことに感謝しています。このふる里の山は、どこにでもあるようなありふれた山、されどされど、多くの人たちを惹きつけてやまない魅惑の山でもあるのです。
石砂山、今年もありがとね。