四季の彩り

季節の移ろい。その四季折々の彩りを、
写真とエッセーでつづって参ります。
お立ち寄り頂ければ嬉しいです。

佳いお年をお迎えください

2022年12月28日 15時00分02秒 | 歳末
2022年の干支は「壬寅」でした。「壬寅」は冬が厳しいほど春の芽吹きは生命力に溢れ、
華々しく生まれる年になると言われていました。
この年も、三日を残すのみとなりました。皆さんにとってはいかがでしたでしょうか。

     「冬薔薇 ピンクストライク」

今年の2月24日に始まったロシアのウクライナ侵略戦争は、今月24日で既に10ヶ月に
及んでいます。
なお、「ロシア軍が来年の早い時期にも再び大規模な戦闘を仕掛けてくる可能性がある」と
ウクライナ政府から警戒の声が出始めている状況もあります。
今、自らの愛する者たちや、その大地を守るために想像を超える酷寒の地で意気高く戦う
ウクライナの民の存在を想うと、一日も早い戦争の終結と、平和への国際的な取り組みが
必要と痛切に感じます。

     「東京湾を航行する船舶」

 一方、新型コロナ感染症も国内で12月26日、新たに7万5038人の新型コロナウイルス
感染者が確認され、1週間前より6千人近く増えています。第八波となり寒気の到来と共に、
年末年始の人の移動によりさらなる感染拡大と、医療機関のひっ迫が予測されます。
私たちも引き続き感染症対策の基本に則り地道な対策を行って参りたいと思っています。


     「ようやく紅に染まる 紅葉」

皆様には、このブログにお立ちより頂き、また「水曜サロン」への出詠や、コメント等を
頂きありがとうございました。
皆様のご意見や作品に触れ大いに学ばせて頂くとともに、新たな地平を拓くに似た示唆も
頂きワクワク感と共に、大いに挑戦の機会が与えられ楽しい日々を送ることが出来ました。
これもひとえに皆様のお蔭と感謝申し上げます。
皆様もどうぞ佳いお年をお迎えください。また来る年もよろしくお願いします。


     「東京湾に浮かぶ ヨット」

先のブログにも記させて頂いた短歌ですが、年の瀬に再度掲載したいと思います。
  ☆いくさ無き核も無き世を造りたし
              世紀をまたぐ課題重くも
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素敵なクリスマスに

2022年12月24日 14時13分29秒 | 写真
I hope you have a wonderful Christmas!

素敵なクリスマスになりますように!
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「口語短歌・水曜サロンの会」(その66)

2022年12月21日 07時20分55秒 | 短歌
「口語短歌・水曜サロンの会」(その66)   短歌の投稿を歓迎します!!

 ☆☆☆ 急な連絡となり申し訳ありませんが年末・年始の日程を申し上げます。
 ☆☆☆ 今回の掲載をもって2022年の「水曜サロン」は完了とさせて頂きます。
 ☆☆☆ 2023年の「水曜サロン」は2023年 1月18日(水)から開始致します。
 ☆☆☆ 2023年 1月 最初の締め切りは17日(火)17:00迄とさせて頂きます。


 ☆☆☆ 皆様も良いお年をお迎えください。                 

 ☆☆☆ 出詠頂き、またお立ち寄り頂いた皆様に感謝申し上げます。
 ☆☆☆ 明るく、楽しく、和やかな短歌の交流広場を目指したいと思います。
 ☆☆☆ 短歌の投稿と共に、投稿歌の歌評、感想、ご意見等もお寄せください。


 「口語短歌・水曜サロンの会」は、このブログにお立ちより頂いている皆様の
 詠まれた短歌を掲載し、その作品の鑑賞を行うサロンです。

 短歌の初心者の方から、ベテランの方まで、所属する短歌会等を越えて、自由に
 短歌を投稿し、鑑賞しあえる「賑わいのあるサロン」を目指したいと思っています。
 皆様の短歌の投稿と、歌評、ご意見等をお寄せ頂ければ幸いです。

【サロンの運営について】
 運営等につきましては、末尾に記させて頂きますので宜しくお願い致します。


     「冬に咲く薔薇 ピエール ド ロンサール」

「ブログ友の投稿短歌 交流コーナー」

【詞書】12月14日私のブログで北アルプスの日の出特集をしましたが、そこで詠んだ
    短歌です。
    若い時は親友と軽登山(1000m級)は良くしましたが、今は絶好の場所に
    いながらただただ眺めるだけです。長野県に詳しい選者のご意見を伺いたいと
    思い出詠しました。
☆眼前に北アルプスの名峰が 朝日に染まる安曇野の街
☆雲海は一面広がり富士山も 朝日に照らされ至福の眺め
☆雄大な自然の神秘景色こそ 堪能できる日の出の眺め

                         浅間山明鏡止水さん

【解説】
 安曇野は昨年秋に久しぶりに行って参りましたが、まさに心のふる里、原風景を
 今も見せてくれました。特に安曇野から眺める白銀に包まれた槍ヶ岳の神々しさは
 変わっていませんでした。三首の歌を改めてじっくり鑑賞させて頂きました。
 三首目の「自然の神秘」を、こんな視点で詠んでみましたが、いかがでしょうか。
【ご参考】
 ★日の出には神も姿を見せるらし 稜線燃やす 降臨のとき


【詞書】月曜日7時からBS4で「BS日本のこころ歌」が放映されています。歌曲、
    童謡、演歌と多種多様ですが、はるかな青春時代を懐かしみながら一緒に
    口ずさんでいます。
☆フォレスタの声に合わせて口ずさむ 歌声喫茶の冷たい椅子も
【詞書】訪れる人のいない雨の日に届く喪中のはがき、今年はなぜか多いのです。
    さみしい日です。
☆雨の日のたったひとりの訪問者 喪中のはがきポストに沈む
【詞書】盗人はぎの種をつけた人と子犬。これをひとつづつ取るのは大変な作業です。
☆今日もまた盗人はぎの種つけて男と子犬がのほほんと来る
                         夕庵さん

【解説】
 一首目、「美しい日本の言葉」「美しい旋律」を次世代に歌い継ぐことを
 モットーにした「BS日本・こころの歌」は、実力派コーラスグループの
 フォレスタが「思い出の名曲」を熱唱していますね。「歌声喫茶」も私たちの
 世代には懐かしい思い出です。
 皆で合唱し合った遠い日々は一瞬の花火にも似た輝きを放っていたと思っています。
 三首目の「のほほんと来る」の、ほのぼの感がいいですね。
 なお、一首目の「冷たい椅子も」は、キーワードとして優れていますが、歌声喫茶を
 知らない世代には唐突感を抱かせないでしょうか。少し添削させて頂きました。
【ご参考】
 ★フォレスタの声に合わせて口ずさむ 歌声喫茶の かの日を想い


【詞書】夫は辛抱強い人なので「怖い」という言葉を今までに聞いたことが
    ありませんでした。
    退院して、少しずつ、入院中の事を話してくれています。
☆「一段と寒くなる夜が怖かった」
       入院の夫の闘病の日々

                         リコさん

【解説】
 ご主人の入院の日々に想いを馳せた一首は心に沁みます。
 コロナ禍のもと、ご主人は病室に一人取り残される心細さもあったことと思います。
 闘病の日々を無事乗り越え退院され、さらに心情を吐露してくれたご主人への想いが
 一層募ったことと思います。そんな思いが歌に静謐に表現されています。
 この分野の歌も大いに詠み、出詠頂ければと思っています。



     「露地に咲く シクラメン」

【詞書】サイモン&ガーファンクルのスカボロー・フェアを聴いて
☆伝えて欲しいのは
 君を愛していたということだけ
 日常の
 (パセリ、セージ、ローズマリーとタイム)
☆豆を煮るように愛していただけ
 それしかできなかった
 …
 スカボロー・フェア
 (パセリ、セージ、ローズマリーとタイム)

                         自閑 (jikan314)さん
【短歌説明】自閑 (jikan314)さんご自身の説明です。
 何百年も前の古い歌ですが、サイモンとガーファンクルが、反戦的な歌詞を
 挿入して、 映画「卒業」で大ヒットした曲です。
 今も極寒の戦場で兵士は、妻が作っていた日常の料理を思い浮かべながら
 戦っているのかもと思います。

【解説】
 サイモン&ガーファンクルと言えば、1970年1月、アルバム『明日に架ける橋』を
 リリースし、全世界で売上が1,000万枚を超える大ヒットとなり、グラミー賞の
 最優秀レコード賞・最優秀アルバム賞等を受賞して一躍、時の寵児となりましたね。
 また、1982年にはS&Gとして初来日し、後楽園球場と大阪スタヂアムでコンサートを
 行ったと記憶しています。
 「スカボロー・フェア」は、サイモンの反戦歌をアレンジし、ガーファンクルが
 作曲した新しいメロディですね。『パセリ・セージ・ローズマリー・アンド・タイム』
 の詞が繰り返される優しい二人のハーモニーが響く曲で、聴くたびに懐かしさが
 こみ上げてきます。また、この詞をBGMに使った詠歌も斬新な試みと考えます。
 短歌説明にもありますように「妻が作っていた日常の料理」を想い出し、その妻と
 愛する人々を守るために、凍てつく戦場で闘う兵士たち。その彼らへの励ましの曲
 とも感じます。
 二首目の「豆を煮るように愛していただけ」の言葉は、平易ながら深いですね。
 究極の夫婦愛とも感じます。


☆------------☆ 「ネット歌会」了 ☆------------☆
【詞書】引き続き「ネット歌会」として展開された詠歌を掲載致します。
    注) ☆:元歌  ★:返歌

☆雲海は一面広がり富士山も 朝日に照らされ至福の眺め
                         浅間山明鏡止水さん
【詞書】真近くで初めて見た雲海に感激してしばらくその場所から離れることが
    できませんでした。昨日は見ることができなかったというガイドさん、
    ラッキーでした。ここから上高地へ向かったのでした。
★濃き薄き千々の雲海ひろごりて大地の術に祈りこそあれ
★乗鞍山(のりくら)の畳平より見る雲海 神秘の極みに言葉の出でず

                         夕庵さん

☆凍る地でいまだ戦う民あまた ウクライナの地 我の大地と
                         ポエット・M
★凍る地に戦ふ民の魂にたまゆら安らぎあれと祈れり
                         水仙さん
★戦いに魂(たま)の安らぐ時よあれ ウクライナの地 激戦のなか 
                         ポエット・M

☆「一段と寒くなる夜が怖かった」
        入院の夫の闘病の日々

                         リコさん
【詞書】12年前の12月の入院中を思い出して詠いました。
★腸閉塞おこし入院せしときに痛みに耐えかね「殺してください」
★殺さずに緊急手術をしてくれし医師の医術で今も生きゐる

                         水仙さん
【詞書】散文の様ですが思いはこの方が上手く伝わると思います。
★わが想い受け止めくれる人の居て
       伝えていこう日々の些事でも

                         リコさん

☆------------☆ 「ネット歌会」了 ☆------------☆


☆冬の陽につつじ一輪帰り花 迷える者の痛み我にも
                         ポエット・M

【解説】
 光の乏しい冬の日差しの中で、つつじが一輪密やかに咲いていました。帰り花とも、
 狂い咲きとも言われていますが、その花の慎ましやかな姿に引き寄せられました。
 季節に惑い、あるいはいち早く春の兆しを感じて花開くそんな花に、自らを重ねて
 いました。やがて来る冬の厳しさを凌ぐ才覚も、又力もないままに冬を前に咲く
 一輪の花の凛々しさと、それが纏う寂しさも同時に感じて詠んでみました。


     「未だ咲く 皇帝ダリア」

「五行歌集 ―君へのレクイエム― 」鑑賞 嵯峨吹雪著 (9)
 
 1.貴女へのレクイエム(9)

   貴女(きみ)の御霊よ!永遠に安かれ!

    とぼとぼと
      帰る帰りの
         足音は
        風にさらわれ
           闇に消えゆく

         背を曲げて
           歩めば楽な
              心地して
             素直に曲げる
                我は老いたり

                 春風に
                   花は咲けども
                       胸を打つ
                    鼓動は哀し
                      ああ貴女(きみ)ありてこそ

         春風に
           鳥は歌えど
              冴えかえる
                青空哀し
                  ああ貴女(きみ)ありてこそ

     かの日から
       我が胸底に
          時として
         痛みは激し
           疼く死の棘



     「シクラメン」


【短歌入門・質問・提案コーナー】
 この「水曜サロン」に集う皆様の直近のコメント等に記された、短歌を作るうえでの
 ヒント、質問、諸々の疑問点、さらにご意見等について触れていきたいと思います。
 皆様からのご提案、歌評、さらに素朴な疑問も含めて、コメント欄にお寄せ頂ければ
 幸いです。
 なお、私の「質問への回答」は、あくまでも一つの「解」でありますので、他の回答、
 反論、ご意見等もありましたら、このコーナーで大いに議論して参りましょう。
 それが学びに繋がれば嬉しい限りです。

【サロン参加者からのコメント】前週に続き掲載致します。
 自閑 (jikan314)さんのコメントです。

 正岡子規は、再び歌よみに与ふる書の中で、
 「古今集以後にては新古今稍々すぐれたりと相見え候」と
 言う事で、指折り数える程だがと注文を付けてはいますが、その歌を紹介します。
  ものゝふの八十氏川の網代木にいざよふ波のゆくへ知らずも
                   (雑歌中 柿本人麿 万葉集巻第三 264)
 まあ万葉集にも有る歌ですが。
  鵲のわたせる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける  (冬歌 大伴家持)
 面白く候。との事。万葉集には無いが、家持集にはあります。
  なこの海の霞のまよりながむれば入日を洗ふ沖つ白波
   (春歌上 後徳大寺左大臣)
 此歌の如く客観的に景色を善く写したるものは新古今以前にはあらざるべくとの事。
  ほの/”\と有明の月の月影に紅葉吹きおろす山おろしの風 (冬歌 源信明)
 これも客観的の歌にてけしきも淋しく艶なるに語を畳みかけて調子取りたる
 處いとめづらかに覺え候。
  さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵を並べん冬の山里 (冬歌 西行)
 西行の心はこの歌に現れ居候。庵を並べんといふが如き斬新にして趣味ある趣向は
 西行ならでは得言はざるべく、特に「冬の」と置きたるも亦尋常歌よみの手段に
 あらずと存候。異論は無いですね😃西行は、目の前に有る風景をそのまま読んで
 います。
  閨の上にかたえさしおほひ外面なる葉廣柏に霰ふるなり  (冬歌 能因)
  岡の邊の里のあるじを尋ぬれば人は答へず山おろしの風  (雑歌中 慈圓)
 此種の歌の第四句を「答へで」などいふが如く下に連続する句法となさば
 何の面白味も無之候。
  さゞ波や比良山風の海吹けば釣する蜑の袖かへる見ゆ   (読人しらず)
  神風や玉串の葉をとりかざし内外の宮に君をこそ祈れ   (釈教歌 俊惠)
  阿耨多羅三藐三菩提の佛たちわが立つ杣に冥加あらせたまへ(釈教歌 傳教)
 空前絶後の歌ですね😃

【ネット歌会について】
 「ネット歌会」は、「お題」を決めて短歌を詠みあうという方式ではなく、
 「水曜サロン」へ掲載された、各位の歌に対して「返歌」するという自然発生的な
 歌会です。従って掲載された歌の中に自分に響くものがありましたら、それへの
 返歌として大いに詠んで頂き、コメント欄に記入して頂ければ幸いです。
 各位に記入して頂いた短歌を基に、編集させて頂きます。
 従って、統一性や「お題」に向けた収斂性には欠けますが、面白いと思っています。
 当面は、手探りでやってみたいと思っています。さらに、良いアイデアがあれば
 各位よりお寄せ頂ければ嬉しいです。


     「白い山茶花」

【運営にあたって】 注)文頭から移しました。
 (1) 投稿期間は毎週水曜日から翌週火曜日17:00までと致します。
    なお、変更がある場合は、その都度ご連絡致します。
 (2) おひとり様 3首まで(1首でも可)コメント欄に投稿願います。
 (3) 口語短歌を基本としますが、文語混じりでも構いません。
   仮名遣いは新仮名遣いとし、旧仮名遣いは極力避けて頂ければ幸いです。
 (4) 投稿頂いた短歌は、そのまま掲載します。皆様から感想等頂ければ幸いです。
 (5) 作者名は投稿頂いたペンネーム等を、そのまま掲載します。
 (6) 掲載順序は、原則本ブログのコメント欄への到着順と致します。
 (7) 掲載された短歌の著作権は、投稿者に帰属します。
 (8) 最近心無い「スパムメール」等がコメント欄に届いています。
    誠に心苦しいのですが、今後コメントは「許可制」にさせて頂きます。
 (9) 投稿に当たっては、ご自身のブログのアドレス(url)も記入願います。
    ニックネームのみでIDのない方、あるいは匿名の投稿は内容により掲載
    できない場合もありますのでご了承願います。
                     了
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「春秋」(「綜合詩歌」改題)誌鑑賞(15)「揺れる絵馬」

2022年12月17日 07時12分16秒 | 短歌
-戦時下、空白の短歌史を掘り起こす その15-
    「揺れる絵馬」


 ★さねさし相模の小野に燃ゆる火の火中に立ちて問ひし君はも(古事記)
の歌を残し三浦半島、走水の荒ぶ波間に消えた弟橘比売(おとたちばなひめ)。愛する夫、倭建命(やまとたけるのみこと)の渡航を可能とするため、自らの身をもって海を鎮めたと伝えられる弟橘比売。その比売を祭る走水神社は、浦賀水道を見下ろす小高い丘の上に立っている。師走の日差しを浴びた浦賀の海は胡蝶の乱舞にも似た無量の輝きを放ち、穏やかなうねりを見せている。

     「走水神社 全景 2022年12月現在」

 神社はドラマチックな古事記の世界とは裏腹に、むしろ慎ましやかで質素なたたずまいを見せている。その神社の絵馬掛には初冬の風に揺れ、多くの絵馬が乾いた音を立てている。「合格」「良い結婚」「無事出産」等々と言った多くの個人的な「大願」への祈りの中で、「戦無き核も無き世に・・・」と水茎の跡も見事に記された絵馬がひときわ目を引く。奉納はあの「2003イラク進攻」の2003年3月19日付けとなっている。

     「弟橘比売の歌碑」

 気品に満ちたその筆跡から、ある老婦人の面影が浮かぶ。いかなる党派にも属さず筆文字による手製の署名簿を手に駅頭に立ち、戦争の悲惨さと核兵器の廃絶、原子力空母母港化見直しを静かに諭すように訴える、その姿に幾たびか触れた。「生きていればあなた達のいいお兄さんになれた子供があったのよ」と、言葉少なに語る半生の歩を込み上げる思いをかみ締めながら伺った記憶が甦る。

     「神社の絵馬掛」

 幼子を背に行方不明の夫を探す必死の彷徨。その途上で浴びたヒロシマの「黒い雨」。その洗礼に始まる自身とわが子の重く辛い歩みの日々。「亡くなったあの子が私を奔らせるのよ」と柔和な微笑を浮かべながら訴えかける、その婦人から昭和史の生きた証言者のあり方を静かに諭される思いがした。

     「山茶花 (白)」

 敗戦から70余年の歳月を経た今日、なお重い影を曳く大戦末期の状況と証言を戦時下の文学の世界から謙虚に学んでみたい。「春秋」第五号は、昭和十九年十一月、十二月の号併合として編集し発行された。本誌について前号に引き続き短歌、歌論を中心に紹介、鑑賞を行っていきたい。

 サイパン島玉砕をはじめマリアナ群島の敗戦により、太平洋戦線は昭和十九年十一月に崩壊した。ここを基地とするアメリカ軍機の本土への空襲は、焼夷弾攻撃を含めて一段と激しさを増していった。戦時誌として生まれ、育まれた本誌はその宿命ゆえか、これらの戦時情勢に敏感に反応し呼応した編集方針を余儀なくされていった。編集後記にも記されている通り「撃滅決意推進号」としての位置づけが、それらを如実に物語っている。

 巻頭作品は「撃滅決意推進の歌」と題して、吉野秀雄、高木一夫、杉本糸子、野村泰三の各氏を含む十名の方が作品を寄せている。これらの作品は、前号の「神州空軍讃歌」と同様に、現存する各氏の歌集にも掲載されているものが少なく、作品としてばかりでなく、資料的にも貴重な内容を持つものばかりなので、抜粋し掲載したい。


     「山茶花 (淡紅)」

 撃滅決意推進の歌
○処女等も今は勤労に従へり吾が日常に響きくるもの     高木 一夫
○妻死にてひと月余り哭きゐしがわれは再び起ち上りたり   吉野 秀雄
○かりそめの命と思はず厳しかる軍さの中に今しありつつ   杉本 糸子
○二つのもの一つを割きて国に添ふ所以と知れば躊躇もなし  上林 角郎
○千難萬苦は踏みひしぐべしいくさする兵にわが決意はも   野村 泰三


 表題に添った形式的な戦意高揚歌とは異なり「妻死にてひと月余り哭きゐしが」と歌う吉野氏や、「かりそめの命と思はず」と歌った杉本氏等々に、戦時下なお健在であった詩人の肉声を聞いた思いがする。それは詩人の深奥から絞り出された矜持の声でもあった。 これら十氏の他に本号に作品を寄せた代表的歌人は、桑山良、本郷駒吉、長谷川竹夫、中郷三郎、佐藤きよし、笹川祐資の各氏を含む三十名の方々であった。

     「山茶花 (紅)」

 アメリカ軍の連日の焼夷弾攻撃により、主要都市が焼かれ肉親の、そして自らの死が現実となる恐怖。そんな状況下でなお、内奥より突き上げてくる詩魂。その魂の凝縮とも言うべき歌からは、これら歌人の悲愴な思いとともに祈りにも似た思いが伝わってくる。そんな祈りが底ごもる響きとなって聴こえて来る歌を抄出させて頂いた。


 渡辺 曾乃
○大陸の大景観を讃へたる文の静けさよいくさは告げず
○退避壕掘りつつ泣けり父母を入れ申すべくは此処よりあらぬ
○慈母観音の石の肌への匂ふがに雲を離れし月のかげさす


 吉野 秀雄
○千曲川岸のにこ草うち敷けば過ぎ来しわれのうたた嘆かゆ
○旅にして萌えづる草にころぶすや心の疼きやむ時もなし
○青葉木莬鳴く宵闇に我対う家なる子らは粥するる頃か


 中井克比古
○夜更けてわが冴えをれば窓下に熟柿の落つる音二つ三つ
○壕に入り非常のいまを昼あかきまうへの土に蟋蟀なけり
○穴堀りてものは埋むる古にありけむ人もかくや埋めし


 仲郷三郎
○防空壕庭に掘りたる夜より降り溜り水汲む朝々の役に
○煙草買ふ行列寒く町に続き埃り風白し戸閉せる店に
○酒も煙草も不要と言ひて済し得ぬ人の暮しのさぶしくもあるか


 野村泰三
○見つつゐてうつつ美し白鷺は姿かがよひ青田を越えぬ
○稀に見て親しむ月の夏ふかく今宵は冴えぬ桐並木道
○秋のいろ既に伴ひふる雨を窓より見つつこころしたしむ


 太平洋戦線の崩壊が現実のものとなり、主要都市がアメリカ軍の焼夷弾攻撃で焼き尽くされる喧騒の中。「文の静けさよいくさは告げず」と詠った渡辺曾乃氏の一連。詩人として、また生活者としての深い祈りが「慈母観音の石の肌への匂ふがに雲を離れし月のかげさす」の歌に凝縮されている。それは風韻すら漂わせ時空を越えて、静かに響いてくる。

     「咲き初める 日本水仙」

 本号には、先にも触れたように「特集号」としての性格から金井博士による、特集の趣旨に沿った論文が掲載されている。元寇の役に臨む北条時宗に、法の導師である祖元禅師が呈した「勿煩悩」の一句。この句を引用した論文は歴史的にも貴重なものでもあるが、抜粋しての掲載は紙面とのかねあいで割愛したい。本号には、これら論文のほかに歌論、随筆、歌評等が厳選され掲載されている。これら歌論の内で現時点においてなお学ぶべき諸点を抑えている大橋松平氏の「短歌初学(1)」より、一部抜粋し掲載したい。


 ― 歌の本質は機智、頓智にあるのでもなく、思いつきや表現形式やの奇妙奇て烈にあるのでもない。動揺つね無きイズムの先走りをするのでも、時代の流行を模倣して大衆におもねることでもない。とすればその何であるかは自ずから明らかになるものであろう。歌の本質は実に「いのちの芸術」にあるのであって「真なるが故に新た」なる芸術でなければならないのである。-中略-
 短歌は抒情詩であることは千古に渝ることはない。ただ私等はその抒情ということを概念的に考えて満足することはできないのである。抒情の意味を生命の流れにおいて正しく会得する為には、私達は現実の形象を無視することは出来ない。言い換えれば現実の形象のみが、かかる抒情に値するのである。―


 うたの本質は「いのちの芸術」であり、短歌の抒情性は「現実の形象」によって裏打ちされなければならないと言う指摘は、今もなお新鮮で貴重な示唆を含んでいると考える。

本号では、会員からの投稿歌を前号に引き続き、中井克比古、高木一夫、泉四郎の三氏が選者となって、それぞれ「千日居詠草」「魚木亭詠草」「白光集」と題して三部立てで選歌を行っている。アメリカ軍機が、都市爆撃に猛威をふるい焼夷弾攻撃にさらされる中、人々は自分や家族の生活を維持することすら難しい、精一杯の状況におかれていった。そんな日々にあって爪で岩に思いを刻むように紡ぎ出された歌。それは人々の今を生きている証しであり、祈りの証明でもあった。そんな思いの滲む歌を中心に抄出させて頂いた。


○命ありて会ひ得し事のあやしさよ言にしいはば涙流れむ      中野 睦子
○波しぶき逆巻く海に吾子抱きて吾日本の女は死にき        田崎 俊治
○連絡を絶ちてののちの汝が果てを遥にてわが如何に描くべき    吉田 俊治
○目の前に疎開児童の幼さよ幼きままのおもひやきびし       桐井 緑
○疎開地の児童が書きし日の丸を肩にかけつつ弟は征つ       金満 伊佐夫
○胸にあまる思いに耐えて佇めば船は港を離れつつあり       吉岡 道夫
○生還は期せずと征きし夫なれど晴の帰還を願い続くる       高梨 麗子
○再びは見る事のなき母上の老顔見るもつらきこの朝        金子 秀吉
○しまし征くこの時にして男子われやむにやまれぬ一日を過ごす   山岡 忠雄
○弟よ何故に死にしと夜の湯に我は泣きつつ髪洗ふなり       市川 とし枝
○悲しみは人には告げじな ま白なる庭の小菊になごむ明け暮れ   矢住 さち子
○いで立つとわが手を振ればわが子らも小さきその手振りて応へぬ  片野 静緒


 サイパン島における戦闘は、守備の日本軍ばかりでなく、婦女子を含む在留邦人もろともの文字通りの「玉砕」であった。そこには「波しぶき逆巻く海に吾子抱きて」身を躍らせた、否躍らせざるを得なかった多くの女性たちの無念と悲しみに沈む姿があった。

 痛々しいまでの幼さを残す疎開地へ送った吾が子。その子の書いた「日の丸を肩に」征つ父が「胸にあまる思いに耐えて」紡いだ歌。そして愛する夫の「御霊」となっての帰還を「悲しみは人には告げじな」と詠んだ、詠まざるを得なかった女性達の歌。そこには、悲しみや嘆きという人間の心情の表出を超えた深い祈りが滲んでいる。

     「走水神社から見る 浦賀水道と房総半島」

 浦賀の海を見下ろす走水神社の絵馬の一つに記された「戦さ無き…」の歌に込められた祈り。それは遥かに遠い古事記の時代から連綿と続けられた男達の戦さの裏側で、「もう一つの戦さ」を闘いぬいた女性達の深奥に溢れた思いであり、悲願でもあった。その悲願とも言うべき「大願」はガザにおける戦闘を、さらには今年二月に始まったロシアによるウクライナ侵略戦争、そして、新たに決定された日本の「敵基地攻撃能力保有」の明記等の現実を見るまでも無く、未だ叶えられることなく祈りとして続いている。その一つの形象でもある絵馬は師走の風の中で微かに揺れていた。

 絵馬に記された祈りの歌。そこからの本歌取りとしては力が及ばないことを承知しつつ、パンドラの箱の底に残る「希望」を詠んでみたい。現実の厳しさ、課題の重さを認識しつつも・・・。
  ☆いくさ無き核も無き世を造りたし
              世紀をまたぐ課題重くも

                       初稿 2008年12月20日

註)初稿掲載時の文章に、現行の情勢等を踏まえ若干の手直しを行っています(2022年12月17日)。
                   了


     「浦賀水道を航行する船」

 本ブログへ「戦時下、空白の短歌史を掘り起こす」と題した記事を15回にわたって掲載させて頂きましたが、今回をもって掲載をいったん終了とさせて頂ければと考えています。
 基礎資料となる「綜合詩歌」「春秋」が1944年12月の本号までしかに入手できず、諸々の手段を駆使して探しましたが探しきれず残念ながらここで中断せざるを得なくなりました。「綜合詩歌」「春秋」誌は資料等を検索・調査すると、東京大空襲で発行所が消失した1945年3月まで発刊されたことは突き止めましたが、残り3刊の入手は不可でした。またの日に入手できましたら別途執筆に挑戦したいと思っています。

 分を越えた、大それた題を掲げて挑戦した「シリーズ」でしたが、調査も、分析、検証、さらに洞察も未熟なままに拙い文を書き連ねて参りましたが、各位には温かく見守り頂き、励ましと、貴重なご意見と示唆を頂き感謝の申し上げようがありません。皆さんからの励ましたが、未熟ながらも書き続けるモチベーションにもなりました。長い間わたってご愛読頂きました皆様に改めて感謝申し上げます。
 なお、執筆に当たって参照させて頂いた著書、文献、資料等を掲載させて頂き、学ばせて頂きましたことに心から感謝申し上げます。これらの文献には引き続き学んで参りたいと思います。
 主な参考文献
  「太平洋戦争陸戦概史」     林  三郎(岩波書店)
  「太平洋海戦史」        高木 惣吉(岩波書店)
  「大東亜戦争全史」       服部卓四郎(鱒書房)
  「昭和史」           遠山 茂樹・他(岩波書店)
  「昭和史」           半藤 一利(平凡社)
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「口語短歌・水曜サロンの会」(その65)

2022年12月14日 05時20分55秒 | 短歌
「口語短歌・水曜サロンの会」(その65)   短歌の投稿を歓迎します!!

 ☆☆☆ 明るく、楽しく、和やかな短歌の交流広場を目指したいと思います。 ☆☆☆
 ☆☆☆ 短歌の投稿と共に、投稿歌の歌評、感想、ご意見等もお寄せください。☆☆☆


 「口語短歌・水曜サロンの会」は、このブログにお立ちより頂いている皆様の
 詠まれた短歌を掲載し、その作品の鑑賞を行うサロンです。

 短歌の初心者の方から、ベテランの方まで、所属する短歌会等を越えて、自由に
 短歌を投稿し、鑑賞しあえる「賑わいのあるサロン」を目指したいと思っています。
 皆様の短歌の投稿と、歌評、ご意見等をお寄せ頂ければ幸いです。

【サロンの運営について】
 運営等につきましては、末尾に記させて頂きますので宜しくお願い致します。



     「シクラメン」

「ブログ友の投稿短歌 交流コーナー」

【詞書】12月6日私のブログで日本の橋特集をやっていますが、その中で三条大橋が
    出て来ました。三条大橋は三条河原処刑場があった場所でもあります。
    ここで処刑・晒し首にされた著名な人物を挙げますと石川五右衛門・
    豊臣秀次・石田三成・近藤勇がいます。彼らを見ていますと時の流れに
    翻弄された人達ばかりです。
    全て「もし」がつくならば勝利者になっていたかも知れません。
    そこで「もののふの憐れ」を感じながら短歌を詠んでみました。

『註:豊臣秀次 もし秀吉に世継ぎ秀頼が生まれていなかったら』
☆ねねの甥数奇な運命に翻弄 謀反噂さも一家斬首刑

『註:石田三成 もし小早川秀秋が東軍に寝返りしなかったら』
☆家康の政略勝ちで負け戦 覚悟を決めた斬首刑こそ

『註:近藤勇 もし薩長連合が錦の御旗掲げなかったら』
☆決戦は時の勢い鳥羽伏見 勝てば官軍負けて晒し首
                         浅間山明鏡止水さん

【解説】
 歴史に「もし・・・」はつきものですが、勝者が自分の為に書いたと言われる
 歴史書は常に「?」はつきものですね。いずれの歌も多くのドラマと、痛切な
 悲しみが詰まっています。勝ち負けは紙一重とは言え、そこに至るドラマには
 学ぶべきものがあまた詰まっていると思っています。出詠歌を、それぞれの歴史も
 踏まえじっくり鑑賞させて頂きました。
 二首目の歌を家康に焦点を当て詠んでみましたが、いかがでしょうか。
【ご参考】
 ★人の持つ弱みを撞きていくさ練る 軍略超える家康の策


【詞書】奈良県の奥山の懐に歴史ある茅葺きの苔むした茶屋があります。灯りが
    ぼんやりと浮かび昔話に出てくるようなこの茶屋は魂鎮めの私の好きな
    場所です。
☆民話より抜け出たような茶屋のありもみじ灯りにぼうと浮かびぬ
                         夕庵さん
【詞書】音もなくしとしとと降る秋雨の肌寒い日、何もすることがない日は、
    めったにしないお昼寝にずいぶん年を重ねてきたものだと自分を
    愛おしく思ったものです。
☆ひねもすの秋霖の日は所在なく少し眠ろういのちを抱いて
☆古い靴 断捨離なんてできないよ地球をどれだけ歩いたのだろう

                         夕庵さん

【解説】
 今時、「茅葺きの苔むした茶屋」とは珍しいですが、おっしゃるように癒しの
 場所であり、「魂鎮め」にはふさわしい隠家でもありますね。
 そんな大切な茶屋に寄せる作者の想いが、歌の行間に溢れています。
 二首目の歌の下の句「少し眠ろういのちを抱いて」もいいですね。
 自分を省みて「愛おしく思う」ことは、私たちの世代にとって、大切なことと
 思っています。それこそが、自分も含めて人を理解する原点でもあると考えています。
 二首目を少し添削してみましたが、いかがでしょうか。
【ご参考】
 ★秋霖の雫したたるもみじ葉に 眠りさそわれしばし目を閉づ


【詞書】カサブランカ(映画)/ 時の過ぎゆくままにを
☆後悔ばかりという空意地を張る時もある”As Time Goes By”
☆グラスの真ん中に氷
   時がゆっくりと過ぎる
       ジャズを聴きながら

                         自閑(jikan314)さん
【短歌説明】自閑(jikan314)さんご自身の説明です。
 初心を思い出す為に、過去の自分の作った短歌を見直しております。
 カサブランカは、ハンフリー・ボガートとイングリッド・バーグマン主演の
 映画で、ボガートは、女にフラれた男だが、滅茶苦茶カッコいい役でした。
 自分も若い(中年ですが)頃は、そう言うのに憧れていたなあと思い出しました。

【解説】
 映画『カサブランカ』の大ヒットで「As time goes by」というと、すぐに
 「時の過ぎ行くままに」という邦題が浮かんできます。
 おっしゃるように、映画『カサブランカ』は仏領だったカサブランカを舞台に
 反ファシズム(ナチ)の戦いを背景に、三人の悲恋が濃密に描かれておりますね。
 パリでかつて恋人同士だったバーグマンとボガートの、カサブランカでの再会と別れ。
 ピアニストのドゥーリー・ウィルソンの歌う「As time goes by」の曲が流れる中、
 ボガートの恋人を真に想う「やせ我慢」の美学が貫かれ、カッコよく描かれて
 いた印象があります。
 かつてのジュリーをはじめ、多くの青年たちの心を揺さぶったボガートの在り方に
 作者が憧れるのは十分わかります。「空意地を張る時も」の句が心に沁みます。
 また、原点に返って自らの短歌を見直すという営みは、勇気がいりますが、私も
 見習わなければと思っています。



     「山茶花」

【詞書】横浜に住んでいた頃はよくドライブしたものでした。素晴しい景色ですよね~
    京急観音崎ホテルには一度、宿泊したいと思ったものですが…。
    薔薇とクロちゃんを詠んでみました。
☆ビロードの 赤も鮮やか 冬に咲く
        見惚れる薔薇に 寒さも忘れ
☆いつの間に 厚手のコート 着て走る
         クロの元気が 何より嬉し

                         クロママさん

【解説】
 横浜からだと、横須賀、逗子等へのドライブは比較的近いし、海も森もあり
 快適なコースだったことと思います。
 京急観音崎ホテルは隠家的なホテルでしたが、静かで落ち着いた居室で
 見かけよりアットホームな雰囲気でした。今、経営者が変わりリニューアル中
 ですが、来春再開とのことです。
 冬薔薇と愛犬クロちゃんを詠んだ二首の歌は、分かりやすい表現ですっきりと
 詠まれており、手直し不要な完成度の高いお歌と考えます。
 二首目の歌、寒い季節をクロちゃんと共に楽しむという視点で詠んでみましたが、
 いかがでしょうか。
【ご参考】
 ★いつの間に 厚手のコート 着る季(とき)に
             元気に走る クロと楽しむ


☆わたしにも一陽来復きたらむと冬至くるのを待つ冬至前
                         水仙さん

【解説】
 「一陽来復」には諸々の解釈がありますが、「冬が終わり春が来ること。
 新年が来ること」等とともに、「悪いことが続いた後で幸運に向かうこと」等の
 意味もあります。また、「犀のように歩め」さんのブログでは、
 「今日より明日を良きものにしようという、いわば励ましの言葉でもあります」と
 語っておられました。
 この言葉を織り込んだ作者の、祈る想いの現れた一首をじっくり鑑賞したいと
 思っています。


☆-----------☆ 「ネット歌会」開始 ☆------------☆
【詞書】引き続き「ネット歌会」として展開された詠歌を掲載致します。
    注) ☆:元歌  ★:返歌

☆目立たぬも香り仄かな枇杷の花 枯れ野の果てに楚々と咲きいる
                         ポエット・M
★枇杷のはな枯野に咲きて香り立つときに密かに人を引き寄す
                         水仙さん
★枇杷の花 香り淡々漂うも 君は遥かに 酔いしかのとき
                         ポエット・M

☆引き抜いて丸き穴から人参の暮らしの薫りがゆらりと昇る
                         I.Sato さん
★収穫の玉蜀黍は歯抜けでも幼は両手に高く突き上ぐ
                         夕庵さん
                       
☆------------☆ 「ネット歌会」了 ☆------------☆



☆凍る地でいまだ戦う民あまた ウクライナの地 我の大地と
                         ポエット・M

【解説】
 今年の漢字に「戦」が選ばれました。たまたま今週詠んだ短歌の中に、ウクライナの
 民への連帯を込めた「戦」を含む歌がありました。2月24日ロシアのウクライナへの
 侵略戦争から既に10か月になりますが、依然として国際法を踏みにじる蛮行を続ける
 ロシアの攻撃は、じり貧と言われながらも止む事はありません。
 酷寒の地で、未だ愛する者の為に闘うウクライナの人々への想いを繋ぐ意味で一首
 詠んでみました。



     「咲き初める 藪椿」

「五行歌集 ―君へのレクイエム― 」鑑賞 嵯峨吹雪著 (8)
 
 1.貴女へのレクイエム(8)

   貴女(きみ)の御霊よ!永遠に安かれ!

    何もかも
      総べて新たに
          成るという
        貴女(きみ)よその日の
                朝まで眠れ

         いそいそと
           コーヒー淹れて
               パンを焼く
             貴女(きみ)の姿の
                  無きが虚しさ

                せめてもの
                  桜の花の
                     咲く四月
                   四月まではと
                      願いしものを

         梅の花
           梅の花さえ
              待たずして
             貴女(きみ)は命を
                 散らして逝きぬ

     貴女(きみ)がため
       急ぎ帰りし
          日々のこと
         我は返らず
           とぼとぼ帰る



     「初冬に咲く薔薇 クリスチャンディオール」

【短歌入門・質問・提案コーナー】
 この「水曜サロン」に集う皆様の直近のコメント等に記された、短歌を作るうえでの
 ヒント、質問、諸々の疑問点、さらにご意見等について触れていきたいと思います。
 皆様からのご提案、歌評、さらに素朴な疑問も含めて、コメント欄にお寄せ頂ければ
 幸いです。
 なお、私の「質問への回答」は、あくまでも一つの「解」でありますので、他の回答、
 反論、ご意見等もありましたら、このコーナーで大いに議論して参りましょう。
 それが学びに繋がれば嬉しい限りです。

【サロン参加者からのコメント】
 自閑 (jikan314)さんのコメントです。

 正岡子規は、再び歌よみに与ふる書の中で、
 「古今集以後にては新古今稍々すぐれたりと相見え候」と
 言う事で、指折り数える程だがと注文を付けてはいますが、その歌を紹介します。
  ものゝふの八十氏川の網代木にいざよふ波のゆくへ知らずも
                   (雑歌中 柿本人麿 万葉集巻第三 264)
 まあ万葉集にも有る歌ですが。
  鵲のわたせる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける  (冬歌 大伴家持)
 面白く候。との事。万葉集には無いが、家持集にはあります。
  なこの海の霞のまよりながむれば入日を洗ふ沖つ白波
   (春歌上 後徳大寺左大臣)
 此歌の如く客観的に景色を善く写したるものは新古今以前にはあらざるべくとの事。
  ほの/”\と有明の月の月影に紅葉吹きおろす山おろしの風 (冬歌 源信明)
 これも客観的の歌にてけしきも淋しく艶なるに語を畳みかけて調子取りたる
 處いとめづらかに覺え候。
  さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵を並べん冬の山里 (冬歌 西行)
 西行の心はこの歌に現れ居候。庵を並べんといふが如き斬新にして趣味ある趣向は
 西行ならでは得言はざるべく、特に「冬の」と置きたるも亦尋常歌よみの手段に
 あらずと存候。異論は無いですね😃西行は、目の前に有る風景をそのまま読んで
 います。
  閨の上にかたえさしおほひ外面なる葉廣柏に霰ふるなり  (冬歌 能因)
  岡の邊の里のあるじを尋ぬれば人は答へず山おろしの風  (雑歌中 慈圓)
 此種の歌の第四句を「答へで」などいふが如く下に連続する句法となさば
 何の面白味も無之候。
  さゞ波や比良山風の海吹けば釣する蜑の袖かへる見ゆ   (読人しらず)
  神風や玉串の葉をとりかざし内外の宮に君をこそ祈れ   (釈教歌 俊惠)
  阿耨多羅三藐三菩提の佛たちわが立つ杣に冥加あらせたまへ(釈教歌 傳教)
 空前絶後の歌ですね😃

【ネット歌会について】
 「ネット歌会」は、「お題」を決めて短歌を詠みあうという方式ではなく、
 「水曜サロン」へ掲載された、各位の歌に対して「返歌」するという自然発生的な
 歌会です。従って掲載された歌の中に自分に響くものがありましたら、それへの
 返歌として大いに詠んで頂き、コメント欄に記入して頂ければ幸いです。
 各位に記入して頂いた短歌を基に、編集させて頂きます。
 従って、統一性や「お題」に向けた収斂性には欠けますが、面白いと思っています。
 当面は、手探りでやってみたいと思っています。さらに、良いアイデアがあれば
 各位よりお寄せ頂ければ嬉しいです。


     「陽だまりに咲く 日本水仙」

【運営にあたって】 注)文頭から移しました。
 (1) 投稿期間は毎週水曜日から翌週火曜日17:00までと致します。
    なお、変更がある場合は、その都度ご連絡致します。
 (2) おひとり様 3首まで(1首でも可)コメント欄に投稿願います。
 (3) 口語短歌を基本としますが、文語混じりでも構いません。
   仮名遣いは新仮名遣いとし、旧仮名遣いは極力避けて頂ければ幸いです。
 (4) 投稿頂いた短歌は、そのまま掲載します。皆様から感想等頂ければ幸いです。
 (5) 作者名は投稿頂いたペンネーム等を、そのまま掲載します。
 (6) 掲載順序は、原則本ブログのコメント欄への到着順と致します。
 (7) 掲載された短歌の著作権は、投稿者に帰属します。
 (8) 最近心無い「スパムメール」等がコメント欄に届いています。
    誠に心苦しいのですが、今後コメントは「許可制」にさせて頂きます。
 (9) 投稿に当たっては、ご自身のブログのアドレス(url)も記入願います。
    ニックネームのみでIDのない方、あるいは匿名の投稿は内容により掲載
    できない場合もありますのでご了承願います。
                     了
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観音崎「シップウオッチング」

2022年12月10日 13時08分38秒 | 日々の歩み
 かつて、このブログで「ヨコスカ散歩道」として、ヴェルニー公園を起点とし、観音崎まで
続く道路の総称、「10,000メートルプロムナード」の景観を紹介させて頂きました。

     「観音崎灯台」

 その終点の観音崎の海の写真も紹介させて頂きましたが、今回はその観音崎公園から眺める
浦賀水道を行きかう船の画像を中心に紹介いたします。

     「観音崎海岸から望む 京急観音崎ホテル」

なお、浦賀水道とは、三浦半島と房総半島に挟まれた海峡であり、太平洋と東京湾とを
つないでおり、広義では東京湾の一部とされています。


 この公園には、週のうち3回は「シップウオッチング」を行うという自称カメラマンの
おじさんや、向かい側の房総半島の木更津駐屯地から飛び立つ陸上自衛隊オスプレイの
写真を撮り続ける方、公園に棲む「はやぶさ」の写真を撮り続ける方等々、多くの
カメラマンの方々が集っています。
皆さん立派な望遠レンズをマウントした高級な機材を構えている中で、入門機のカメラ
しか持たない私は肩身が狭いのですが、皆さん親切に諸々アドバイスして頂けるので、
細君共々気楽に仲間に入れて頂いています。

     「すでに咲き初める 日本水仙」

 また、この浦賀水道にはヨットや小型漁船、大型貨物船から軍艦まで、1日あたり約400
から700隻もの船が往来する、世界有数の海上交通路と言われています。
海幅最小 6.5km の狭水道で、航行する船の数も多く、潮流も早いことから、日本の
周辺海域では有数の航海の難所と言われ、海難事故が起こりやすい箇所の1つに挙げられて
います。その為、大型船舶のみが利用できる「浦賀航路」が設けられているようです。

 当日は残念ながら艦船等の航行が時間帯との兼ね合いで無かったため、タンカー等を
中心に順次掲載致します。






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「口語短歌・水曜サロンの会」(その64)

2022年12月07日 05時29分35秒 | 短歌
「口語短歌・水曜サロンの会」(その64)   短歌の投稿を歓迎します!!

 ☆☆☆ 明るく、楽しく、和やかな短歌の交流広場を目指したいと思います。 ☆☆☆
 ☆☆☆ 短歌の投稿と共に、投稿歌の歌評、感想、ご意見等もお寄せください。☆☆☆


 「口語短歌・水曜サロンの会」は、このブログにお立ちより頂いている皆様の
 詠まれた短歌を掲載し、その作品の鑑賞を行うサロンです。

 短歌の初心者の方から、ベテランの方まで、所属する短歌会等を越えて、自由に
 短歌を投稿し、鑑賞しあえる「賑わいのあるサロン」を目指したいと思っています。
 皆様の短歌の投稿と、歌評、ご意見等をお寄せ頂ければ幸いです。

【サロンの運営について】
 運営等につきましては、末尾に記させて頂きますので宜しくお願い致します。



     「初冬に咲く薔薇 ニュー・ドーン」

「ブログ友の投稿短歌 交流コーナー」

【詞書】11月24日「私のブログ」で日本の橋を取り上げました。なかでも山口県
    「襟帯橋」をShimaさんが注目して下さって嬉しかったです。山口県は
    私のふる里でもあり錦帯橋は何回も行きました。そこで錦帯橋を短歌で
    詠んでみました。錦帯橋はかの吉川栄治氏が「宮本武蔵」の著書で
    佐々木小次郎が燕返しの術を編み出した場所として着想し有名になりました、
    そして岩国城や白蛇も有名です。
☆景観は錦の名こそふさわしく 春夏秋冬色彩豊か
☆小次郎は逸話に残るイケメンと 姿形は違い討ち死にす
☆赤とんぼもみじに染まる錦帯橋 もののふのあわれ白蛇に宿す

                         浅間山明鏡止水 さん

【解説】
 故郷山口県の「襟帯橋」「佐々木小次郎」「白蛇」を詠んだ三首の詠歌には
 作者の深い望郷の想いも滲んでいると感じます。
 なお、岩国市の「白蛇」は天然記念物に指定されており、遺伝による白化(アルビノ)
 が子孫の代にも、人為的ではなく受け継がれているとのことですね。
 また、地域の人々が昔から白蛇を神のみ使いとして特別に大切なものと扱ってきた
 とのこと。それらの背景も含め、それぞれの歌をじっくりと味合わせて頂きました。
 三首目の歌をもののふ、佐々木小次郎にフォーカスし少し添削してみましたが、
 いかがでしょうか。
【ご参考】
 ★御使いの白蛇もおわす岩国に もののふの意地今も息づく


【詞書】1首目は、昼間鮮やかだった紅葉もライトアップされると、とても怪しい
    雰囲気を醸し出します。ふと、お能に出てくる「鬼女紅葉伝説」を思いました。
    諸説あるようですが、平維茂が鬼女を討伐したあのお話です。
    2首目は宝厳院を訪ねたときのことです。京都嵐山の天竜寺の塔頭の宝厳院の
    庭園には苔むした大きな岩が(獅子岩)と名付けられ、見る方向によると
    あたかも獅子が大きな口を開けているようでした。
☆紅葉の波も日ぐれて鎮もれり 鬼女も出そうな京の古寺
☆紅葉の宝厳院の庭巡り 苔むす獅子岩大き口あく
☆紅葉は炎となりて燃え上がり吾(あ)もまた噴きたき日のあるものを

                         夕庵さん

【解説】
 いずれも、紅葉にまつわる詠歌を学びつつ味合わせて頂きました。
 紅葉伝説は室町時代から江戸時代にかけて、「紅葉狩」という題名で能や浄瑠璃、
 歌舞伎で演じられてきていますね。
 詞書にもあります通り、いくつかの異なる物語になっていますが、平維茂が鬼女・
 紅葉と闘い、討ち取る話となっています。紅葉が鬼女に成らざるを得なかった
 哀しい物語も背景にはあるでしょうが、終焉の耀きとも言える紅葉を見ると、
 その妖しいまでの美しさが鬼女を連想させます。
 伝説は北信濃戸隠山の紅葉ですが、一首目の「京の古寺」に置き換えも可能ですね。
 三首目の、「吾(あ)もまた噴きたき日のあるものを」の想いと、燃え上がる
 紅葉との対比が鮮やかです。
 一首目を少し手直しさせて頂きましたが、いかがでしょうか。
 ★古寺のもみじ音なく散りゆかば 鬼女も出そうな妖し静けさ


【詞書】11月に農作業の手伝いに行って人参の収穫をしました。
    今は機械収穫の時代ですが、手で一本ずつ抜く農家でした。穴から育てた
    土の匂いと育った人参の甘い香りがして、小さな農家の1年を感じました。
☆引き抜いて丸き穴から人参の暮らしの薫りがゆらりと昇る
                         I.SATOさん

【解説】
 多くの作物を育てる大地は、そこに住む微生物をはじめ多くの虫たちの住まい
 でもありますね。それらの命の香りでもある「土の匂い」は、人参をはじめ
 根菜類の寝床の香りであり、土づくりに尽力する里人の愛情の結晶の香りでも
 あったことと思います。
 それを「暮らしの薫り」と表現されたI.SATOさんの大地に寄せる想いに、
 深い祈りを感じます。また、「ゆらりと昇る」の、長閑さがいいですね。
 自然と、大地、そして作物に寄せる揺るがない優しさが詠歌から響いてきます。




【詞書】月のカケラ
☆私の中の月のカケラと云うものが遠い星空を見上げる
【詞書】フェルマーの最終定理
☆ 万華鏡とドーナツが出会う時三角形の立体が歩む
                         自閑 (jikan314)さん
【短歌説明】自閑 (jikan314)さんご自身の説明です。
 46億年前の原始地球に火星程の大きさの惑星が衝突して、百年程で月が出来た
 そうです。それをジャイアント・インパクト説と云うそうです。
 このお陰で地球の自転が生まれ、気温が平準化して、23.4度の傾きと四季が
 出来たそうです。
 潮汐力により、海が掻き回され、生命が生まれたのも月のお陰と言っても良いとの
 事。そんな月のカケラが自分の身体の中に1分子でも含まれているのだと思い。

 数学のフェルマーの最終定理と解明したワイルズ博士のテレビ動画を見ました。
 何が何だか解らないが、万華鏡のような絵(モジュラー形式)とドーナツの形を
 したもの(楕円曲線)が、関係あるらしいです。
 友人のトポロジー数学者に聞くと、「お前は何もわかっていない」との事。
 そりゃ350年も天才的な数学者達を悩ませた命題だから😅

 フェルマーの最終定理とは、nが3以上の自然数の時
 x^n+y^n=z^nの0でない自然数(x,y,z)の組み合わせは無いというもの。
 n=2の時は有名なピタゴラスの定理で三角形の立体とはそこから来ている。
 あくまでも、「これは短歌」であるので、数学的に間違いがあるかも知れないです😉
 宮沢賢治は、詩や小説の中で、農学、鉱物学、火山学などの当時の最先端の知識を入れて
 作っております。まあ私もと、無謀な試みですね😃

【投稿外コメント】自閑 (jikan314)さんご自身のコメントです。
 正岡子規は、再び歌よみに与ふる書の中で、
 「古今集以後にては新古今稍々すぐれたりと相見え候」と
 言う事で、指折り数える程だがと注文を付けてはいますが、その歌を紹介します。
  ものゝふの八十氏川の網代木にいざよふ波のゆくへ知らずも
                   (雑歌中 柿本人麿 万葉集巻第三 264)
 まあ万葉集にも有る歌ですが。
  鵲のわたせる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける   (冬歌 大伴家持)
 面白く候。との事。万葉集には無いが、家持集にはあります。
  なこの海の霞のまよりながむれば入日を洗ふ沖つ白波(春歌上 後徳大寺左大臣)
 此歌の如く客観的に景色を善く写したるものは新古今以前にはあらざるべくとの事。
  ほの/”\と有明の月の月影に紅葉吹きおろす山おろしの   (冬歌 源信明)
 これも客観的の歌にてけしきも淋しく艶なるに語を畳みかけて調子取りたる處いとめ
 づらかに覺え候。
  さびしさに堪へたる人のまたもあれな庵を並べん冬の山里   (冬歌 西行)
 西行の心はこの歌に現れ居候。庵を並べんといふが如き斬新にして趣味ある趣向は
 西行ならでは得言はざるべく、特に「冬の」と置きたるも亦尋常歌よみの手段に
 あらずと存候。異論は無いですね😃西行は、目の前に有る風景をそのまま読んで
 います。
  閨の上にかたえさしおほひ外面なる葉廣柏に霰ふるなり    (冬歌 能因)
  岡の邊の里のあるじを尋ぬれば人は答へず山おろしの風    (雑歌中 慈圓)
 此種の歌の第四句を「答へで」などいふが如く下に連続する句法となさば
 何の面白味も無之候。
  さゞ波や比良山風の海吹けば釣する蜑の袖かへる見ゆ     (読人しらず)
  神風や玉串の葉をとりかざし内外の宮に君をこそ祈れ     (釈教歌 俊惠)
  阿耨多羅三藐三菩提の佛たちわが立つ杣に冥加あらせたまへ  (釈教歌 傳 教)
 空前絶後の歌ですね😃

【解説】
 「フェルマーの最終定理」は、1994年に米国プリンストン大学のワイルズ教授に
 よって証明され、フェルマー・ワイルズの定理とも言われていますね。
 中学生でも理解できる内容の定理なのに、アンドリュー・ワイルズ教授が証明する
 までに約360年もかかったとのこと。
 この定理の本質を「万華鏡とドーナツが出会う時」と表現するのは、自閑さんの詩人
 としての鋭い感性故と思いますし、決して無謀ではないと思います。このような
 ひらめきは、数理論の解を求める際にも必須であり、作詩、作歌においても大切な
 要素と思います。
 なお、正岡子規による「再び歌よみに与ふる書」の中で「…すぐれたりと相見え候」
 の和歌を紹介いただきありがとうございました。
 この記事は、サロンに集う皆さんにも学びとなりますので、翌週以降の
 【サロン参加者からのコメント】欄にて紹介させて頂ければと考えます。


☆-----------☆ 「ネット歌会」開始 ☆------------☆
【詞書】引き続き「ネット歌会」として展開された詠歌を掲載致します。
    注) ☆:元歌  ★:返歌

☆遊ぶがに花弁をゆらす秋風に 皇帝ダリアの軸は揺らがず
                         ポエットM
★秋風に皇帝ダリアの花ゆれて揺らがぬ軸のごとくわが夫(つま)
                         水仙さん
★秋風と遊ぶがごとく花揺らし 皇帝ダリアは恥じらいも秘め
                         ポエットM
★見下ろしてもの言う仕草につけられし「皇帝ダリア」と人は嘯く
                         夕庵さん
★見下ろすも はにかみまとう仕草ゆえ 「皇帝ダリア」の名は重たしと
                         ポエットM

☆もみじ葉は風なき空にゆれ揺れて 哀しいまでの艶やかさを秘め
                         ポエットM
【詞書】紅葉するのも裸木になるのも次代の樹のためと自然の摂理に
    うなずかされます。
★紅葉はめぐりの季(とき)の手段とて燃えて散らせて深き眠りに 
                         夕庵さん
                       
☆------------☆ 「ネット歌会」了 ☆------------☆


☆目立たぬも香り仄かな枇杷の花 枯れ野の果てに楚々と咲きいる
                         ポエット・M

【解説】
 枯れ野の中で、梢にひっそりと五弁の小花をつけるビワの花。冬に真向かう花の
 少ない今の時季に咲く貴重な花と思っています。一見するとあまり目立たず寂しい
 印象ですが、綿毛に包まれた小さな白い花、そんな花の楚々とした風情に寄せて
 一首詠んでみました。
 また、花の色が白から黄みを帯びてくるにしたがって、香りが徐々に増し、その
 香りにより花の存在を知ることもあります。



     「皇帝ダリア」

「五行歌集 ―君へのレクイエム― 」鑑賞 嵯峨吹雪著 (7)
 
 1.貴女へのレクイエム(7)

   貴女(きみ)の御霊よ!永遠に安かれ!

    人の世の
      習いといえど
          これがまあ
        貴女(きみ)に対する
              我がなす業か

         轟々と
           地獄のごとく
               燃ゆる火に
             貴女(きみ)を見捨てて
                  貴女(きみ)を滅ぼす

                青炎と
                  赤炎おどる
                     炉の前に
                    我は耐え立つ
                       鬼神と成りて

         ああ終に
           貴女(きみ)を死なせて
                   火に屠る
               我がなす業を
                  赦させ給え

     生前に
       貴女(きみ)が願いし
               教会の
          墓地にて眠れ
              永遠の朝まで




【短歌入門・質問・提案コーナー】
 この「水曜サロン」に集う皆様の直近のコメント等に記された、短歌を作るうえでの
 ヒント、質問、諸々の疑問点、さらにご意見等について触れていきたいと思います。
 皆様からのご提案、歌評、さらに素朴な疑問も含めて、コメント欄にお寄せ頂ければ
 幸いです。
 なお、私の「質問への回答」は、あくまでも一つの「解」でありますので、他の回答、
 反論、ご意見等もありましたら、このコーナーで大いに議論して参りましょう。
 それが学びに繋がれば嬉しい限りです。

【サロン参加者からのコメント】前週に引き続き掲載いたします。
   自閑さんよりのコメントです。
 今回は、新古今から離れて、建礼門院右京大夫を紹介します。

 建礼門院右京大夫は、建礼門院(平徳子)に出仕し、平資盛と恋仲となり、
 平家の都落ちで生き別れ、壇之浦の後、建礼門院を大原に訪ねる様子が、
 建礼門院右京大夫集にあります。
 滅多に古典を現代語に訳さないのですが、右京大夫集と今昔物語集だけは、
 訳をblogに掲載しております。右京大夫のイメージとして、若尾文子さんが、
 語りかける様にと自分では思っております。

  寿永の平資盛との別れ
   またためしたぐひも知らぬ憂きことを見てもさてある身ぞうとましき
    拙訳 また他に前例の無く、同じ樣な事も知らない生き別れという辛い経験を
       したのに、まだこうしてそのままに生きている自分がうとましい…

  大原訪問
   今や夢昔や夢と迷はれていかに思へどうつつとぞなき
    拙訳 今の詫び住まいが夢なのか、昔の栄華が夢なのか迷ってしまい、
       どう考えても現実のことと思われません

   仰ぎ見し昔の雲の上の月かかる深山の影ぞ悲しき
    拙訳 昔、宮中で拝見致しました雲の上の月の樣にお美しかった建礼門院樣が、
       この樣な深山にお住まいの御樣子を拝見致しますとは悲しい事であります。

   山深くとどめおきつるわが心やがてすむべきしるべとをなれ
    拙訳 (建礼門院樣のお住まいになる)この山深い大原に残して置いてきた
       私の心が、やがて出家するという導きの道標となっておくれ

 右京大夫集は、再度注目されたのが、太平洋戦争で、夫や恋人を出征で戦地に送った
 方々から読まれたとの事です。
 大原の寂光院の裏山には、右京大夫の墓との伝承の墓石があります。観光客も
 そこまでは行かないです。

【サロンへのコメント】
 「栄枯盛衰」と題してチョウキチさんよりお寄せ頂きました。

 ★亡き人の菩提弔う ねねの声 逆さもみじの水面に響く
               「浅間山明鏡止水さん詠歌への 参考詠」

  秀吉の妻寧々の声でしょうか。逆さ紅葉は家康でしょうか。華やかな紅葉にも
  哀愁が込められているのでしょう。           チョウキチさん

 ポエット・Mの返信
  いつも、短歌の核心を撞いた歌評をお寄せいただきありがとうございます。
  高台院は、秀吉の菩提を弔おうと北政所(ねね)が寺院の建立を発願し、
  徳川家康もその建立を支援したと言われています。
  紅に染まるモミジと、逆さもみじが映える池の水面からねねの声が今にも響いてくる、
  そんな錯覚すら感じる寺域のまとう哀愁。それは「浪速のことも 夢のまた夢」と
  辞世の句を詠んだ秀吉の、想いに重なる故かも知れません。

【ネット歌会について】
 「ネット歌会」は、「お題」を決めて短歌を詠みあうという方式ではなく、
 「水曜サロン」へ掲載された、各位の歌に対して「返歌」するという自然発生的な
 歌会です。従って掲載された歌の中に自分に響くものがありましたら、それへの
 返歌として大いに詠んで頂き、コメント欄に記入して頂ければ幸いです。
 各位に記入して頂いた短歌を基に、編集させて頂きます。
 従って、統一性や「お題」に向けた収斂性には欠けますが、面白いと思っています。
 当面は、手探りでやってみたいと思っています。さらに、良いアイデアがあれば
 各位よりお寄せ頂ければ嬉しいです。


     「山茶花」

【運営にあたって】 注)文頭から移しました。
 (1) 投稿期間は毎週水曜日から翌週火曜日17:00までと致します。
    なお、変更がある場合は、その都度ご連絡致します。
 (2) おひとり様 3首まで(1首でも可)コメント欄に投稿願います。
 (3) 口語短歌を基本としますが、文語混じりでも構いません。
   仮名遣いは新仮名遣いとし、旧仮名遣いは極力避けて頂ければ幸いです。
 (4) 投稿頂いた短歌は、そのまま掲載します。皆様から感想等頂ければ幸いです。
 (5) 作者名は投稿頂いたペンネーム等を、そのまま掲載します。
 (6) 掲載順序は、原則本ブログのコメント欄への到着順と致します。
 (7) 掲載された短歌の著作権は、投稿者に帰属します。
 (8) 最近心無い「スパムメール」等がコメント欄に届いています。
    誠に心苦しいのですが、今後コメントは「許可制」にさせて頂きます。
 (9) 投稿に当たっては、ご自身のブログのアドレス(url)も記入願います。
    ニックネームのみでIDのない方、あるいは匿名の投稿は内容により掲載
    できない場合もありますのでご了承願います。
                     了
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ささやかな紅葉狩り

2022年12月02日 20時16分56秒 | 短歌
秋の訪れが遅いここ、横須賀にもようやく紅葉と晩秋の花が咲き競う季節が
訪れつつあります。
手続きや、ボランティアの合間を縫って「隠れた紅葉の名所」と密に言われる
横須賀しょうぶ園に、ささやかな紅葉狩りに行って参りました。

     「咲き残る薔薇 ブルーライト」

横須賀しょうぶ園は日本有数の規模を誇る、広さ7000平方mのしょうぶ田に
412種類14万株の花しょうぶの花が植えられており、6月には江戸系等様々な
品種の花しょうぶが見事に咲き誇ります。
また、トンネルやポール立てなどさまざまな花の姿が美しいふじ苑、園内中央の
斜面一帯に植栽されたしゃくなげ苑などが広がっています。さらに、スイレン、
曼殊沙華などを四季折々の花を楽しむことができます。
今は…、花も無く訪れる人も少なく寂しさも漂っていましたが…。

入り口広場のケヤキ並木は枯れ葉混じりなっていましたが、イロハモミジ等は
散り際の艶やかさを見せていました。 寒暖差の少ない横須賀では、中々色鮮やかな
紅葉に出会えることは少ないのですが、傾いた日差しに映えるモミジはその怪しい
までの美しさを見せていました。


この、もみじ葉に寄せて即興で二首詠んでみました。
  ☆ 朽ちつつも虚空さまようもみじ葉は 夕映えこえて耀ようすべも
  ☆ もみじ葉は風なき空にゆれ揺れて 哀しいまでの艶やかさ秘め


コメント (3)
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