串は40分ほどで焼けるそうですが、長年の経験から時計など無くてもおいしく焼けたことがわかるとのことです。イワナの形が崩れないように慎重に串を抜くと、塩焼き一皿の出来上がりです。この日は予定していた数より多くの本数が出ている、とは仲間内での会話でした。
お店の奥の囲炉裏の炭火の周りにたくさんの串に刺したイワナが斜めに差し掛けられていました。塩をまぶしたイワナは遠赤外線効果で骨の中までしっかり火が通ります。ベテランの山男さんが慣れてた手つきでイワナの串を空いた場所にきれいに刺し並べています。
参道に面した日よけ屋根の下で、名物イワナ焼き定食を注文しました。ほどなく届いたイワナは頭から尻尾までおいしく食べました。また圧力釜で焚き上げたご飯もおいしいお味でした。店の方のイワナを焼く囲炉裏を見てほしいとの誘いにありがたく乗せてもらいました。
上高地を知る人は英人・ウェストンを北アルプスに案内した上條嘉門次の名前を知っています。明治初めに参道脇に建てた小屋を拠点にして猟師や山案内人をしていました。今は5代目の女性が嘉門次小屋の主です。正午近く、小屋の屋根から立ち上る紫煙が道ゆく人を誘います。