岐阜県側の谷から流れてくるガスは時折強い風を伴って吹き上がってきます。先ほど見えていた丸山の標識も次の瞬間には何も見えなくなりそうです。山の天気はこんなものと分かっているつもりですが、予想外の変わりように驚きました。
さらに梓川をさかのぼる形で左いっぱいまで視野を広げてゆくと、屏風岩の続きと思われる急な斜面の向こうに、横尾らしき谷筋が見えました。横尾の小屋には若かりし頃お世話になったことがありなくかしく感じました。
足元の岩の間にしきりと顔を出してくれる小さな白い花の一叢です。花は五弁ですが、深い切れ込みがあるので花びらが10枚あるように見えます。名前は後でしらべて、高山の岩礫に咲く多年草のイワツメクサと分かりました。足元ばかり見つめて歩くのですっかりおなじみになりました。
風雪にさらされて、白い骨のように研ぎ澄まされているシラビソの木が目の前にときおり現れます。一歩一歩高度が増しているのが周りの景色でも感じ取れます。ただしせっかくの景色なのですが、気持ちの余裕がなくチラッと横目で見るのがやっとの状態でした。