展望台近くにも大きなアセビ(馬酔木)が花盛りでした。眼下に見える大矢倉跡の形は遺跡としても美しく、城の守りにふさわしい位置にあります。近場にこのような魅力ある城跡があることを今まで知りませんでした。別の季節にも訪れたいとの思いを残してここを後にしました。
天守台跡の南側の石廻り二十三間二尺(45m)の巨岩、名付けて「馬洗岩」。場所から考えて名前が意味不明でした。説明板によりますと、敵に攻められ水道を絶たれた時、この岩の上に馬を乗せ米で馬を洗い、水は豊富であるかのように見せ、敵を欺いたことが名前の由来でした。
天守展望台を下りて左側に回り込み、岩に近づいて見ますと、城を築くときに掘られた柱穴の様子がよくわかります。最初にこの岩山に上り、この巨岩の上にお城を建てようと、考えを巡らせたいにしえの建築家の想像力の強さに敬服です。
高い位置からの眺望はいわば一枚の静止画のように見えます。その中で乾いたザラザラというような音が展望台まで定期的に聞こえていました。大きなバケットが水の中に投げ込まれ、引き上げられています。重機の横の小さな山の上にバケットから石が流し出される音でした。
天守展望台に上がりました。苗木城天守の2階にあたります。ここは巨岩を跨ぐように造られ、四間半(9m)×5間半(11m)の広さでした。きそがわ展望台はこの広さの床面を想定して復元しています。全ての構造物を支える柱は建築当時に二つの巨岩に掘られた柱穴を利用しています。
天守は天守縁の下と言われる地階と玉蔵と呼ばれる1階そして一番上が今は展望台になっている2階の三層の構造になっています。地階から5段の階段を上がったところの1階部分からは大きな岩が目の前に見えます。ここからさらに階段を上がると天守2階になります。
天守が建てられていた頂上に着きました。ここではすべてが自然の巨岩の上です。山の頂上にある二つの巨岩にまたがる形で、岩に掘られた穴に柱を立てた三層構造の天守閣になっていたと伝えられています。現在は天守の柱を立てた穴を利用して展望台が造られています。