教育史研究と邦楽作曲の生活

一人の教育学者(日本教育史専門)が日々の動向と思索をつづる、個人的 な表現の場

地方教育史研究の醍醐味?―具体的な教育の姿を垣間見る

2010年05月20日 23時55分55秒 | 教育研究メモ
 先ほど、ようやく週末の学会発表の準備が仕上がりました。週末の発表準備がひとまず完了したのは、かなり重荷がおりた感があります。まだ本番があるので気は抜けませんが。
 今週日曜に発表する題目は、「明治30年代初頭の鳥取県倉吉における教員の問題関心―地方教育雑誌『東伯之教育』を用いて」です。この間記事にした内容そのまんまの題目ですね。研究した結果、今回は小学校普及問題と中学校増設問題とに絞りました。教員集団の再組織化という興味深いテーマも見出せる興味深い史料だったのですが、前2つの問題の上にさらに取り上げると、とてもひとつの発表に収まらないので、別の学会でまた発表する予定です(夏に予定)。
 明治30年代という時代は、小学校就学率の急激な上昇(小学校制度導入以来、はじめて就学率90%を超えた)と中等教育機関(中学校・高等女学校・実業学校および師範学校)の増設・拡充が顕著に見られた時代です。こういう激動の時代に、鳥取県倉吉という一地方において、教員たちは何を問題として意識したのか。今回の発表では、とくに高等小学校と中学校とに対する問題意識に絞り込みました。急激な教育拡充がまさに進行していた最中に、高等小学校増設や中等教育機会の拡大について、教員たちはどう認識し、どこを問題として意識していたのか。こういう研究問題の設定と『東伯之教育』という史料とによって、従来よく研究されてきた政策立案者の考え方ではなく、現場の、教員の生に近い考え方をさぐることが少しはできたのではないかと思います。
 研究過程において、資料上面白いなと思ったところをひとつご披露させていただきましょう。『東伯之教育』誌上では、某教員が中学校増設論を唱えていたのですが、その根拠として中学校進学について保護者へ自分でインタビューした結果や、教え子である高等小学校生に行った進路希望調査の結果<などを使っていたのです。これほど生々しい資料に出会えるとは思わなかったので、研究していた私も正直驚きました。中央のことを研究していたときには見えてこなかった、地域における具体的な教育の実態が少し見えてきます。地方教育史研究の醍醐味はこういうところにあるのかもしれませんね。
 詳しくは、当日の発表を聞いていただくか、発表後どこかで活字化する予定なので、それを読んでいただければと思います。発表は、全国地方教育史学会第33回大会(於・九州大学馬出地区薬学部第2講堂・第3講堂)の第1会場、10時半~11時です。
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