<08月28日プレイリスト>
[ニュー・アルバム "SONORITE" 特集 PART 2]
SECRET LOVER(シークレット・ラヴァー)/山下達郎
フェニックス (2005 REMIX)/山下達郎
LIGHTNING BOY(ライトニング・ボーイ)/山下達郎
白いアンブレラ/山下達郎
太陽のえくぼ (ALBUM REMIX)/山下達郎
2000tの雨 (2003 NEW VOCAl REMIX)/山下達郎
WHEN YOU WISH UPON A STAR (星に願いを)/山下達郎
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■内容の一部を抜粋
・さよなら夏の日
本来ならば今日の1曲目は「さよなら夏の日」といきたいところなんですが、そ
うはいきません。9月14日に新譜が発売されます。ニュー・アルバム『SONORITE』。先週に引き続きまして全曲紹介、今週が2回目でございます。
これのおかげでこの季節やってまいりました納涼夫婦放談は来週再来週となります。9月4日、11日は竹内まりやさんをゲストに納涼夫婦放談。これも今わたしは地方プロモーションでございます。地方いろいろと旅しておりますのでまとめ録りになっております。どうぞお早めにお便り、リクエストをいただけるとうれしいです。
・オリジナル・フル・アルバムとしては12枚目
オリジナル・フル・アルバムとしましては通算12枚目になります。わたしは今年
で芸能生活30周年を数えます。はじめはシュガーベイブというバンドでございま
したので、ソロになりまして29年目になります。29年でオリジナル・フル・アルバム12枚、他のああいう『BIG WAVE』、『ON THE STREET CORNER』、ライヴ・アルバム、いろいろなものを合わせますとソロ作品としましては通算21枚目になります。30年目にして何を作るのか? もう50を過ぎましたので何を作るのか? そういうようなものをいろいろと考えました。あとは昨今のテクノロジーの変化、デジタルの波、こういうものに対応して音楽スタイルをどのくらいそっちに合わせて、何を変えずに何を変えるか、いろいろと考えまして作りましたアルバム『SONORITE』。
・SECRET LOVER
わりと前半はメロウなクールな繊細な感じの歌い方が増えましたが、この曲はこのアルバムの中で最もそれが顕著に出ております。いわゆるスウィート・ソウル
ものでございます。70年代スウィート・ソウル、30代の頃はよくこういう曲を作っ
ておりましたが最近あまり、ここんとこご無沙汰でございましたが、またこうい
うのをやってみようかなという感じでございます。不倫の歌でございます。不倫
の歌もあまり若い頃やると、いかにも狙ったみたいで「エンドレス・ゲーム」な
んて曲がありましたが、あれは原作の小説がそういうものだった。自分で作りこ
んでそういうのをやるのはあざとくてアレだなと思いましたが、もう50も過ぎま
すとこういう歌もいいんじゃないかという感じでございます。タイトルは「SECRET LOVER」、夜の歌であります。深夜にお聴きいただくとなかなかグッとくる。アルバム『MOONGLOW』その辺のお好きな方には喜んでいただける曲でございます。間奏は土岐英史さんのソプラノいかにも。テイクワンO.K.という1回しか吹かなかったというこういうソロでございます。
・フェニックス
2003年のシングルでございます。この曲がいちばん今回の作品では古いシングルなので2005年リミックス、デジタルの機材が変わりましたので新しいリミックス・ヴァージョンで収録いたしました。今でも続いておりますNHKの環境問題の番組「地球大好き環境新時代」の主題歌で、番組のスタッフが番組を立ち上げる時に直接オファーしていただきました。すごく地味な番組なんですけれど、非常に良心的で環境問題をまじめに、日本の津々浦々からそういう環境に対する取り組みというのを紹介し続けてまいりまして、そういう番組のテーマ・ソングであります。わたしはこの作品に関われたことを今でも光栄に思っております。そうした人の願いといいましょうか、地球という星に自分たちが住む願いというものをフェニックスという不死鳥の姿に例えて歌った1曲でございます。
・LIGHTNING BOY
今回はいろいろな意味ではじめてやる試みが多いアルバムでございます。「忘れないで」というのは作風からしまして、ああいう曲調は今までやったことがありませんし、例えばレゲエビートの曲なんてものもはじめてでございますが、次にお聴きいただくこの曲も5拍子、5拍子なんてやったことございません。なぜそんなものをやろうかと思ったかといいますと、ジャズのテイストの曲を1曲入れてみたい、ジャズといいましてもいわゆるインプロビゼーションでいくやつでございまして、ライヴ向きの長~いインプロビゼーションのジャズ・テイストのクロスオーバーした作品をずいぶんと作ってたんです。けれども「クリスマスイブ」がヒットする前後くらいから、どちらかというともっとポップなメロディアスな曲、あまり器楽的な曲というのが、わりとこう、好まれない時代だと感じまして、しばらくそういうのを作ってなかったんですが、やっぱり50も過ぎたので、少しは昔の20代、30代の頃にやりたかったことをやってみようという気になりました。5拍子の曲を1曲書きました。タイトルは「LIGHTNING BOY」。稲妻の歌でございますが、これはわたしと30年近く一緒にやっておりますサックス・プレイヤーの土岐英史さんのソプラノ・サックスのソロをやりたくて作ったそういう風な曲でございます。是非ともアルバムの中で土岐英史さんの素晴らしいサックス・ソロを堪能していただきたいと思います。いつもの青山純、伊藤広規、難波弘之、そしてわたくし4人のリズム・セクションに土岐さんソロ、非常に演奏難度の高い曲であります。先ほどの「SECRET LOVER」同様、これも土岐英史さんワンテイクです。これがすごい。「オレは割り切れねぇビートは嫌いだ」とか言ってボソボソやりますが、50代半ばサックス一筋30数年、こういう楽器のプレイヤーはいいですね、そういう蓄積ができますから。例えばアレジャーとかは機材が変わりますとそれまでのノウハウが崩壊しますが、ひとつの楽器で通せるプレイヤーはうらやましいと思います。
・白いアンブレラ
スウィングのワルツです。昔からこういった曲調をやってみたかったんですが、
なかなかチャンスがありませんでした。バート・バカラックがよく取り上げるよ
うなものなのでレコーディング開始した仮題が「なんちゃってバカラック」。た
だ曲調はバカラックっぽいんですが、曲のコード進行とかメロディー・ラインは
'40年代、'50年代のアメリカン・スタンダードのイディオムでございます。ブラ
ス、ホーンのオーケストレーションは服部克久さんにお願いしまして、素晴らし
いアレンジを書いていただきました。わたくし、自分でブラシのドラムを叩いた
コンパクトなリズム・セクションに服部さんの華麗なブラスのフレーズが重なり
ます。服部さんは「昔、こういうのよくやったよな」とお話されながらやってお
りまして、わたくしの製作意図を完全に熟知した素晴らしいスコアでございます。わたしの作品によくある過ぎた恋のイリュージョンの歌でございます。銀座の舗
道に雨が降っていると何色のアンブレラがいいかな、それで白にしようかな(笑)、そういうような感じでございます。歌中でわたしと絡んでいるサックスは平原マコトさん。あの平原綾香さんのお父さんですね。メロウなサックスが素晴らしく素敵です。
・太陽のえくぼ (ALBUM REMIX)
フジテレビ朝の番組「めざましテレビ」上半期のテーマソングなのでもうすぐ終了いたしますがアルバムで残ります。朝のポジティブな空気を歌ったものなので山下達郎の直球勝負、ガチンコの典型みたいな曲でございます。アルバム用にマスタリングをやり方を変えてもうちょっと立体感を出す、少しハードディスク・レコーディングに習熟してまいりましたので、シングルよりも奥行きのあるミックスとなっております。11曲目の「太陽のえくぼ」までで、今回の『SONORITE』というアルバムの精神的なニュー・アルバムという部分ではひとつの区切りになっております。残りの2曲はボーナス・トラックみたいな扱いでお聴きをいただければと思います。
・アルバム製作方針の変更
今回の『SONORITE』というアルバム、'90年代に入ってから『ARTIZAN』、『COZY』、そして『SONORITE』と7年ずつオリジナル・アルバムが分かれていまして、今回からはっきり政策方針を変えました。'90年代なんでそんなにアルバムが出ないのかなと自分でいろいろと考えまして、わたしの個人的な事情じゃない他の事情、契約の問題、人間関係、いろいろそういうこともあるんですが、若い頃にやっていたレコーディングというのが、時間とお金が余りかけられなかった。サブカル出であまりアルバムが売れなかった時代ですね。そういう頃には時間もお金をかけられなくてアルバム1枚カツカツの数しか録れなかったんです。当時はアナログのLPでしたから1枚のアルバムに10曲入るとすればせいぜい11曲、10曲録って9曲使うとかですね、従いまして3時間のセッションで2曲録って、それが5日間続いて10曲録って、それに今みたいにシンセサイザーとかありませんから、ドラム、ベース、ギター、ピアノに、ブラスとストリングス入れて、コーラス入れて、歌入れて終わりと。比較的制作期間が短くできるんですが、例えばひとつの曲を違うアレンジでトライしてみるとか、演奏がいまいち納得いかなくてもう一回やりたい言っても、そういう予算も時間もかけられない。「そうしたければレコードを売りなさい」と言われる。それじゃあレコード一所懸命売って、レコードに予算をかけたいという欲求が増えまして、その後「RIDE ON TIME」というヒットが出まして、アルバムがチャート1位が取れるようになって、そのおかげでレコーディングにすごく時間がかけられるようになった。それで'80年代からレコーディングにかけるようになりまして、例えば『FOR YOU』というアルバムは17曲録って、『POCKET MUSIC』は23曲、『僕の中の少年』は32曲という具合にたくさん録れるようになりました。それはすごく内容の充実とかには力になったんですが、逆にたくさん録るとたくさん時間がかかりますので、それだけレコーディングの時間を費やすということになります。その分リリースのインターバルが長くなる。あとは捨て曲が増える、ボツ曲が増えるんです。未発表作品、お蔵入りがものすごく増えてくる。どうしてもそれは忍びないので、シングルに出したカップリングの曲をオミットして、新曲をアルバムに入れようという傾向が'90年代からどっと増えてくる。それのおかげで『RARITIES』なんてアルバムで(苦笑)、後からフォローしなければならない羽目になりました。そういういろんな事を鑑みまして、わたし、50過ぎましたので、あと何年、あと何作と考えますと、これ以上ボツ曲増やしたくないので、2003年以降出したシングルのカップリング全部入れてあります。『COZY』の時すらおそらくオミットするかもしれませんが、今回からは出したシングルは全部アルバムに収録します。そうしますとストックがその分増えるので今回も7曲ストックがあります。次のアルバムは比較的早くやれるんじゃないかと、そういう風なことをいろいろと考えまして、今回はシングルもカップリング全部入れることになりました。あとは収録時間を短めに抑えようと、『COZY』は75分、『RARITIES』も75分あります。そうなると15曲,16曲入りますと何がなんだかわからなくなりますので、アルバムのトータリティーもへったくれもありませんので、精神的に集中力が続く時間でコンパクトにまとめたいという欲望がすごく強くなりまして、今回は61分収録で全13曲という内容になっております。それが意図的に製作方針を変更したいちばん大きな部分であります。
・2000tの雨 (2003 NEW VOCAl REMIX)
ここ数年間は「RIDE ON TIME」、「LOVELAND, ISLAND」、わたしの過去の作品がいろいろなところで使われる機会がとても多くて、非常にありがいことなんですけれども、その極めつけが「2000tの雨」という曲でございます。これは1978年、今からは27年も前の、わたしが25歳の時のアルバム『GO AHEAD!』のいちば~ん最後に入ってる曲でございます。これを映画監督の堤幸彦さんが自分の映画に使いたいと言って下さって、2003年に『恋愛寫眞』という映画のエンディング・テーマになりました。「なんで2000tの雨?」ということなんですけど。なぜかって言いますと『GO AHEAD!』というアルバムは、おそらくこれが自分のソロ・シンガーとしての最後のアルバムになるんじゃないかという感じで作っておりましたので、それのB面の最後、この「2000tの雨」がフェードアウトしていく時に、「あぁ、これでたぶんもうアルバム作ることないな」とゆうように考えた(苦笑)、自分にとって思い入れの強い商品でありまして、それが20数年の時を隔てて使って下さる方がいらっしゃるとは夢にも思いませんでした。朝の2時に歌入れをしまして、一日に5曲歌入れをするそういう短期間レコーディングなので、歌がすごく不本意だったので、2003年ニュー・ヴォーカル・リミックスとして、ヴォーカルをやり直させていただきました。この曲はとっても思い入れが強いので、どうしても今回のアルバムに収めてやりたいという思い断ち難く12曲目に入れました。まさか「RIDE ON TIME」と「LOVELAND, ISLAND」まで入れるわけにはいきませんが、この曲は本当に自分にとって特別の曲なので。27年の時を隔て、また自分のニュー・アルバムに収録することができました。感慨無量というほかありませんが。
・WHEN YOU WISH UPON A STAR (星に願いを)
わたし、シンガー・ソング・ライターなのでオリジナル・ソングを作るのが専門でございますけれども、カヴァー・ヴァージョンが好きなので人の曲のカヴァーというものを1曲ないし2曲入れております。『ARTIZAN』にも『COZY』にもそういう曲が入っております。今回はローラ・ニーロの「And When I Die」をやろうと思っていたんですが、レコーディングをしようと思っている矢先に、日音という日本を代表する非常に有名な音楽出版社がありますが、そこの会長さんの村上守さんという方がいらっしゃいます。この方は戦後の音楽出版界の文字通りパイオニアでございまして、たくさんの伝説に彩られた人でございます。わたし、たいへんにお世話になってた人であります。村上さんが先日お亡くなりになりました。この方の人生でいちばん好きだった曲が「星に願いを WHEN YOU WISH UPON A STAR」、ディズニーの『ピノキオ』の主題歌でございます。村上さんは以前、わたしが「WHEN YOU WISH UPON A STAR」を録音したことがありまして、シングル「LOVE CAN GO THE DISTANCE」のカップリングで収録してありますが、このわたしの「星に願いを」をいたく可愛がっていただきまして、長いこと日音の会社の電話の保留にしていただくほどの入れ込み方をしていただきました。村上さんには本当に昔からず~っとお世話になりまして、わたしはミュージシャンでありますけれど、やはり先日お亡くなりになりました草野昌一さん、漣健児さんですね、草野さんや村上さんのような音楽出版界の中から日本の邦楽、それから洋楽をクリエイトしていかれた方々の精神的影響を非常に受けておりまして、どちらかというとそうした方々の後塵を拝して理想を継承していければと、Sunday Songbookといったこういう番組もそういう考え方のもとにやらさしていただいております。村上さんには本当にお世話になりまして、わたしがレコーディングしている最中の訃報でございましたので、急遽、わたしがレコーディングした「星に願いを WHEN YOU WISH UPON A STAR」、もともと1999年のシングル「LOVE CAN GO THE DISTANCE」のカップリングで一度世に出ておりますが、アルバム化は初であります。この曲を今回のアルバム『SONORITE』の最後に持ってくることにいたしました。なかなかに難しい歌なんですけれども、あの当時としては精一杯に歌った歌であります。オーケストレーションはもちろん服部克久さんであります。
■今後の予定
9月4日、11日は竹内まりやさんをゲストに納涼夫婦放談。
竹内まりやさん宛てのお便り、リクエストお待ちしております。
わたしプロモーションで全国動いております。
今週の末あたりにまとめ録りしますので、お早めにお便りをいただくとちゃんと
ご紹介できますので、それまでによろしくお願いします。
宛先
〒102-8080
TOKYO FM 山下達郎「Sunday Songbook」
先週今週でニュー・アルバム『SONORITE』の全曲紹介をいたしましたので、私の
個人ホームページで曲順やアルバ・カヴァー、そうした情報を公開しております。それから今後、プロモーションのスケジュール、雑誌の掲載だとかラジオの出演なども同じところで公開してまいりますので、そちらのほうでチェックをお願いします。