Chang! Blog

福岡のハングル検定準2級建築士、そして一児の父の[ちゃん]のブログです

東海乗り鉄きっぷの旅【2】静鉄・天浜・遠鉄・愛環・城北線

2016年09月19日 | ■旅と鉄道

 「JR東海&16私鉄 乗り鉄☆たびきっぷ」の旅。2日目は沼津の親子の最寄り駅、原駅からスタートです。




 「のぞみ」全列車通過やロングシートの普通電車など、JR東海に冷遇されているイメージのある静岡都市圏。朝晩に限って特急型373系の普通電車があり、快適移動にはねらい目の列車です。
 車端部のボックスシートで3人、テーブルを囲んでくつろぎながら静岡方面へと移動しました。


 何度も静岡に来てるけど、きれいに富士山が見えたことはありません。


 清水と静岡の間にある、草薙駅で下車。前日に営業開始したばかりの新駅舎です。要所要所で木材を使っていて、今風ながらにも落ち着きのある駅舎でした。


 駅前にはタワーマンション、駅裏には静岡銀行の新社屋ビル。新都心といった街並みです。


【静岡鉄道】 オンリーワンの新型車・A3000形




 駅前広場を挟んだ向かい側にある静岡鉄道の草薙駅は、昔ながらの私鉄電車のたたずまいを残しています。


 地方私鉄には珍しい、フルスペックの自動改札機。全国共通ICカードにも対応しています。


 今はいずれも静岡市内となった静岡と清水を結ぶ、11kmがすべての静岡鉄道。特徴は、6~7分毎という高頻度の運行で、時刻表を見ずに乗れる便利な下駄履き電車です。
 ちびまる子ちゃんの劇中にも登場する電車でもあり(たぶん)、ラッピング電車も走っています。


 2度乗ったことのある静岡鉄道に三度も立ち寄った理由は、今春にデビューした新型車両、A3000形電車に乗るため! 運行時刻はホームページに公表されており、狙いを定めて行程を組んできました。
 大手の中古でまかなうことが多い地方私鉄が、新車を導入するだけでも驚きなのに、どこでも見たことがない、斬新なスタイルに注目が集まります。


 ベースになっているのは、JR東日本グループ・総合車両製作所の標準型ステンレス車両「サスティナ」。確かにパーツパーツには、首都圏を走る電車との共通項を見いだせます。
 しかし外観だけではなく、内装にも独自のデザインセンスを散りばめたオンリーワンの電車。東京のコピーはしないという、信念すら感じる電車です。


 最近の首都圏の電車は、疲れないように計算された固めの座席がトレンドですが、A3000形はふっくら、やわらか。短い路線だからこそ、わずかな乗車時間にはくつろいでもらおうとの考え方なのでしょうか。


 背の高い人も、低い人も捕まりやすい、2段になった吊り手。単に2段になっただけではなく、デザイン性にも優れています。
 A3000形は編成ごとに異なる7色のレインボーカラーで増備されることが決まっており、吊り革にはいち早く7色がお目見えしています。中吊りのデザインも素敵です。


 情報ディスプレイは横長タイプで、首都圏や近畿圏でも採用例はまだ数少ないものです。富士山ビューのポイントも教えてくれて、ローカル色豊か。


 訪日客対応として、車内wi-fiを備えているのも最先端の装備です。動画視聴できるほどの速度が出ていました。


 前面は1枚窓。ワイドな車窓が広がります。


 新静岡駅に到着。静鉄のターミナル駅も改築され、規模こそ違えど大手の始発駅にも劣らない雰囲気を備えています。
 駅名板なども新型電車に合わせてトータルにデザインされており、新交通システムや地下鉄の新路線にも負けない確立したコンセプトが感じられます。


 改札口も広々。


 頻発運行なので必要性も薄そうですが、ガラス張りの待合室も設けられています。
 中には、A3000形の7色の編成の模型が並べられていました。前面灯も仕込まれ、美しくディスプレイされています。


 形式プレートは、きちんと文字を切り出しものです。カッティングシートでは、この風格は出せません。


 A3000形は今後8年ほどをかけて、全編成を置き換えていく予定とか。快適性はもちろん、沿線の雰囲気すら変えていきそうな意欲的な新車です。
 再び草薙駅まで戻り、家並みと線路が近い私鉄らしい風景の中へ去りゆく、近未来の電車を見送りました。


【天竜浜名湖鉄道】 文化財の鉄路


 草薙から掛川までは約1時間、国鉄形の211系電車の各駅停車で地道に移動。オールロングシートでトイレもない電車だけど、前後の展望が効く&運転席の直後まで座席がある点は、好みの電車です。




 掛川駅で下車。JRの在来線口の駅舎は戦前の木造建築です。


 市民からの募金によって守られた、愛されている駅舎。内部もオリジナルの雰囲気を大切にしつつ、リニューアルされていました。


 右隣りにこじんまりした駅舎を構えるのが、第三セクターの天竜浜名湖鉄道。路線の西半分の新所原~西鹿島間は以前に乗ったので、今回は残りの掛川~西鹿島間を「乗りつぶし」ます。


 車両はTH9200形。各地の三セクで見られる、標準タイプの気動車です。


 内部は特別仕様。全席転換クロスシートの、快適な車両です。団体利用も視野に、AV機器も装備されているのだとか。


 天浜線の特徴の一つが、駅舎や橋梁の多くが国の登録有形文化財になっていること。重要文化財よりも登録のハードルが低く、改修・改造も認められているのが特徴です(その代わり、国からの補助は少なめ)。若桜鉄道やわたらせ渓谷鉄道でも取り組まれています。
 昔はどこでも見られたような木造駅舎も、国の文化財の称号を得るとより風格を増して見える気がします。




 沿線風景もどこかほっとする感じ。静岡らしく、お茶畑も広がります。


 本社もある中核駅、天竜二俣は駅弁売りでも出てきそうなホーム。青い駅名版が、よりタイムスリップしたかのような情感を醸し出します。


 駅構内はミニ鉄道博物館風になっていて、駅構内で足こぎミニトロッコをこぐことも。車内にも親子連れの姿が増え、遊園地的に親しまれている様子が心強かったです。


 貴重な20系寝台車や、キハ20系気動車の姿も。ちょっと荒れ気味なのは残念なところです。


 天竜川を渡れば、西鹿島駅。68kmに渡る長大路線を踏破しました。


【遠州鉄道】 高架でかける政令市の街乗り電車


 赤い三角屋根の可愛い駅舎からは、浜松に根を下ろす地方私鉄・遠州鉄道に乗り換えです。
 浜松までは18kmで、静鉄より少し長め。静鉄ほどではないものの、12分間隔の高頻度運行で政令市・浜松の生活を支えます。


 静鉄のようなフルスペックの自動改札機はなく、ICカードはセルフ、切符は有人検札という、地方都市の私鉄でよく見られる形の改札スタイルです。
 赤い電車が特徴の遠鉄にあって、待っていたのは青い電車。地元企業のフルラッピング広告電車で、赤い電車の中では むしろ目立ちます。


 電車は静鉄同様、大手の中古ではなく、オリジナル新車の導入が続いています。2両編成で、車両間のホロが大きく開いていて解放感があるのが特徴です。
 

 ワンマン運行ではなく、全列車で車掌も乗務。無人駅も多く、改札の位置によっては運転士さんも集札に当たります。
 西鹿島方は周囲にぎっしり家が建て込んでいるわけでもなく、ポツポツと畑も見えるような沿線風景。のどかな風景と対照的に、座席はほとんどが埋まっています。市街地の高架区間ではどんどん乗り込んでくる一方で、昼間なのに満員電車になりました。 


 新浜松駅到着。高架のホームを乗客が埋め、地方都市、それも昼間の風景とは思えません。


 改札の台数も多く、朝夕のラッシュ時の混雑が想像できます。


 便利な電車が街に人を集めるのか、魅力的な街だから電車の乗客が多いのか。卵か鶏かのような、あまり答えが出なさそうな疑問にぶち当たりました。


【愛知環状鉄道】 空いた単線分の敷地


 東海道本線を西へ。浜松から豊橋までの普通電車は3両編成で、昼間でもかなりの混雑でした。
 一方、豊橋で乗り換えた新快速は転換クロスシートで、ゆとりある6両編成。名鉄というライバルの存在で、ずいぶん変わるものだなとひとりごち。


 岡崎で、三セクの愛知環状鉄道に乗り換えました。三セクとはいっても15分~20分毎に走り、乗客も順調に増え続けている、立派な都市近郊鉄道です。
 電車も、JR東海の313系と同じタイプの幹線級電車。


 車内がクロスシートだったのは嬉しい誤算です。休日昼間の乗客は少なく、終始1ボックスを独り占めできました。


 言わずと知れた企業城下町・豊田も沿線です。街の規模だけを見れば愛環の乗客はもっと多くても良さそうですが、路線が名古屋中心部へ向いておらず、利用は限られてくるようです。
 しかも自動車産業だけあって、沿線に見える工場やオフィスは、それぞれ巨大な駐車場を完備。通勤もメインはクルマなのかな。


 80年代開業の路線なので踏切はなく、全線に渡って高架橋が続きます。しかも複線分のスペック。
 もともとは東海道本線の貨物列車が、名古屋都心を通過しないで済むよう計画された、バイパス貨物線だった名残です。


 なんとももったいない用地と構造物に見えるけど、線路の点検に車で乗り付けられるのは便利そうですね。


 1時間強で、中央本線に接続する終点・高蔵寺へ。岡崎と同様に、JRとの間に乗り換え改札はありません。愛環はICカードを導入していないので、TOICAで乗ったらJR線経由とみなされそうだけど、大丈夫なのかな?
 隣に着いた中央線の電車に、ホームタッチで乗り換えられたのは便利でした。


【東海交通事業城北線】 複線高架は壮大な夢の跡


 JR中央本線の快速電車でリレー。名鉄のようなライバル不在の中央本線だけど、その分代替輸送がきかない、重責を担う路線でもあります。
 勝川駅で下車。立派な高架の駅です。


 目指す城北線の乗り場へ、サインを目印に歩いていきます。1階に降りて、外に出て…


 高架沿いに歩いて、駐車場の横を抜けると…


 プッツリ切れてつながっていない高架橋が現れました。階段を上がった先が、目指す城北線の駅かと思いきや…


 高架上の検修場の横をすり抜けて…


 ようやくホームに到達。中央本線のホームから、ゆうに10分以上はかかってしまいました。
 ぶつ切れの高架上駅舎は中央本線高架化までの仮駅だと聞いていましたが、結局は高架化後もつながらないまま、極めて不便な状態が続いているのです。これは、なんだかなあ…。


 運行しているのは、単行のディーゼルカー。昼間の運行本数は1時間に1本。車内の乗客はまばら。名古屋近郊とは思えない、のどかさです。
 本来ならJRの経営となっていた路線のはずですが、需要が見込めないことから、身軽に動ける関連会社の東海交通事業に任されているという経緯があります。


 それなのに、この立派な線路! 頑丈な幹線級の高架橋に、複線の線路が伸びています。本来は愛環とつながり、貨物のバイパスとして機能するはずだった路線。その機能は勝川の高架さえつなげば果たせるのに、切れたままです。
 もちろん建設当時より貨物の需要が落ち込んでいるという背景はあるのですが、災害時を考え、バイパスを整備しておくことも必要なんじゃないかなと、部外者は勝手に思うのでした。


 全線で高架が続き、高さもあるので眺めはいいです。遠く、名駅の摩天楼を望めます。しかし列車がいくら進んでも、距離感は変わらず。放射状に結ぶ路線形態が、車窓からも分かります。


 名古屋市内に出るには便利な名鉄と、2ヶ所で交差。しかし乗客を国鉄に誘導したかったのか、乗り換えには距離があります。
 せめて名鉄との接続駅が整備されていれば乗客の倍増、3倍増も狙えたんじゃないかと、甘木鉄道という身近な例を知っていると感じてしまいます。


 枇杷島駅着。こちらはJRの駅と一体で、線路もつながっています。なおのこと、勝川で切れた線路が寂しく感じられました。


 枇杷島駅前。名古屋の一つ隣の駅とは思えないほど、がらんとした駅前です。停車する電車も昼間は1時間に4本だけ。
 もっとも福岡でも、博多から一つ南の竹下でも本数は少なく、さぼど便利じゃありません(居住経験者としての感想)。


 東海地方の私鉄乗り比べはこれにて終了。2日とも綱渡りのような乗り継ぎダイヤだったのに、それぞれの列車は1本も遅れなく走りました。形態も規模も様々だけど、安全・正確な日本の鉄道の一つでした。ちなみに「乗り鉄きっぷ」のエリアで普通に乗車券を買えば17,000円近くになり、ほぼ倍乗ったことになります。
 往路と同じく、新大阪までは在来線で。


 岐阜までのった311系電車は快適だったけど、窓ガラスの汚れ具合には驚きました。まるですりガラス、「車窓」なんて望むべくもありません。


 岐阜で新快速に(といっても岐阜以降各駅停車ですが)、米原でさらに新快速へと乗り継いで西へ西へ。枇杷島~新大阪は3時間弱でした。


 3連休の最終日とあって、新大阪駅は雑踏の中。僕も当初は指定券を取れておらず、キャンセル待ちで博多乗り換えの便を確保。その後さらに生まれたキャンセルで、新大阪~久留米直通の「さくら」を抑えました。JR九州アプリが大活躍です。
 九州ではスター扱いの「みずほ」「さくら」も、東海道の大動脈の中では脇役的な存在。どことなくローカルな風情すらただよう、端の20番線から発車します。


 座ってしまえば、3時間後には久留米。楽な時代にはなりました。

最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。