次の感想も社会学部2年生の男子学生のものです。
はっきり言って、自分もニヒリズム、虚無にとらわれた考えを持つ人間でした。
131pページ(注:テキスト『生きる自信の心理学』)に書いてあるように、ばらばらの原子がおりなす一生命で、死んだら元に戻るだけ……とか、結局は自分で何とかしなければ、自分さえよければ……という近代科学の知識と個人主義からなる典型的なニヒリズムでした。
自分が今まで20年かけて考えてきたことを、先生は1ページでさらっと分析していたので、少々ムッとするとともにおどろきました。
結論から言うと、コスモロジーを知って良かった。全てのものはつながっていて、「意味の無い生はない!」と考えられるようになった。全てのものには母や父がいて、それをたどると宇宙にまでさかのぼる。夜空の星々と自分が同じ元素でできていると思うと何か感動するものがある。
個人主義も見なおすべきと思う。今の自分は一人では決して存在せず、生きることすらできない。
自分とこの世とのつながりはなんと強く複雑で、そしてあたたかいのだろうか。そう考えると自分をしばるニヒリズムが少し消えるのを実感した!!
全ての因果や時の流れは全てつながっていて、自分もその一つで、さらに、これからも進化はつづく。そう考えると、少しは生きることに対する考えが、マイナスからプラスへと変化していくように思える。
「自分が今まで20年かけて考えてきたことを、先生は1ページでさらっと分析していたので、少々ムッとするとともにおどろきました」と正直に感想を書いてくれています。
私たちは社会的存在なので、自分の属しているその時代の社会の通念・常識をもとに「自分」「自分の考え」を形成せざるをえません。
そして、それがあたかも社会の通念・常識とは関わりなく自分自身で作り上げた「自分独自の考え」であるかのように思い込みます。
それは、「自分は自分である」という思い、つまりアイデンティティを形成するにはやむをえないことなのですが、いったん出来上がってしまうと、社会の通念に不都合がある場合、自分にも不都合がある――この場合ニヒリズムとエゴイズム――にもかかわらず、「自分独自の考え」-アイデンティティはなかなか変更できません。
この学生のケースでは、「少々ムッと」した程度のわずかな抵抗で、比較的スムーズに、「結論から言うと、コスモロジーを知って良かった。全てのものはつながっていて、『意味の無い生はない!』と考えられるようになった」という肯定的変化が起こったようです。
人によって、ほとんど抵抗なし、ただ驚きだけで変化するケース、多少抵抗はあってもやがて変化できるケース、抵抗が強くて「頭では納得しても実感が湧かない」というのから、「理屈はそうだが受け入れられない」、さらには「自分を否定されたようで腹が立つ」というケースまで、反応は多様です。
私はいつも、「ぼくはとてもいいと思うし、臨床的にも非常にたくさんの肯定的変化のケースがあるので、強くお勧めしたいと思うけど、決してこれは強制じゃないからね」と言っています。
それでも、「宗教の布教みたいだ」と言われることもあります。
もちろん、万能でも、唯一でも、まして絶対でもないと思っているのですが、多くのケースから相当な効果があると判断できますので、ついつい強くお勧めしたくなってしまうのです。
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