環境問題と心の成長 9
*以下の記事は、すでに書いたスウェーデンに関する記事とかなり重なっていますが、連載記事なので、省略しないで掲載することにしました。関心をもっていただけた方は,
関連記事をお読みください。
環境先進国・北欧への旅
私事のようで恐縮ですが、テーマに深く関わっていますので、予定を変更して、最近(2008年2月18日~27日)、行ってきた環境視察の旅で感じたことを書かせていただこうと思います。
企業の社会的責任として本気で環境問題に取り組んでいる株式会社はせがわの依頼で、スウェーデン・フィンランドの環境に対する取り組みの視察に講師として同行してきました。
寒さの厳しい時にあえて北欧というのは、暖かいところに生まれ今も暖かいところに住んでいて寒さの苦手な私にはかなり覚悟のいることでしたが、「やはり行っておかなければならない」という気持ちでお引き受けした、作家小田実さんの本の名前を借りていえば「義務としての旅」でした。
なぜスウェーデン・フィンランドなのかというと、この2つの国は環境についても福祉についても経済についても、実にたくみな国づくりをしていて、3つをみごとにバランスさせており、これからの日本にとって非常に重要なモデルになると思われるからです。
ちなみに、ここのところ信頼していいと思われるさまざまな組織・調査機関が種々の「国際比較ランキング」を公表しています。
国際自然保護連合が環境や福祉や経済といったさまざまな要素で評価した「国の持続可能性ランキング」では第1位スウェーデン、第2位フィンランドでした。ちなみに日本は残念なことに第24位です。
またアメリカの有名な総合雑誌「リーダーズダイジェスト」が調査した「環境的住みやすさランキング」では世界の141カ国のなかで第1位フィンランド、第4位スウェーデン、日本は第12位です。
福祉の充実度が両国とも世界の最高水準にあることはいまさら言うまでもないでしょう。2006年、イギリス・レスター大学の研究者ホワイト氏が178カ国を対象に調査・査定した「国民の幸福度ランキング」というのもあるのですが、これでは第1位デンマーク、第2位スイス、第6位フィンランド、第7位スウェーデンです。そして日本は、なんと90位です。
そこまで環境や福祉に力を入れている――つまり国家予算を使っている――と経済に問題が生じているのではないかと思われるかもしれません。
しかし経済の「国際競争力ランキング」では、世界経済フォーラム(WEF)の評価によれば、2006年度、第1位スイス、第2位フィンランド、第3位スウェーデンで、日本はここまで経済に集中してきているにもかかわらず第7位にすぎません。
国際経営開発研究所(IMD)というより産業主義的な機関の評価では、国際競争力の第1位はアメリカとなっていますが、それでもスウェーデンは第9位、フィンランドは第17位、日本は24位です。
そしてドイツに本部のある民間組織が行なった2005年の「政府の透明度ランキング」では、第1位アイスランド、第2位フィンランド、第6位スウェーデン、日本は第21位です。
こうしたいくつもの国際比較評価を見てみると、スウェーデン・フィンランド(より広く言えば北欧)が福祉と環境という現代の大きな問題についてしっかりとした解決への道を歩みながら、経済的にも豊かな、実にバランスの取れた「いい国」をつくっていることはまちがいなさそうです。
今回の視察は、そうした文献その他から得た「まちがいなさそう」と考えられる情報について、現地に行って実感的にも「まちがいない」と感じられるかどうかを確かめることが一つの目的でした。
そして、まちがいないとしたら、なぜスウェーデン・フィンランド、北欧諸国ではそういうことが出来たのか、特に国民性つまり国民の心がどうなっているのかを直接に人々に触れて知りたいというのが、もう1つの、ある意味でより重要な目的でした。
第1の目的については、スウェーデンが1996年に国の方針として発表した「エコロジカルに持続可能な社会」を25年計画で構築するというヴィジョンは、着々と実行されつつあると見てまちがいないという、確かな感触を得ました。
ここ2年あまりの学びがスウェーデンに集中していたので、フィンランドや北欧全体についてはまだ知識不十分の類推ですが、それもまちがいなさそうです。
スウェーデン・北欧にはできて、日本にはできていない。それはなぜか、ということが本連載のテーマと深く関わっているので、私事のようですが、あえてお話しているわけです。
内容については、今後の連載で徐々に掘り下げていくことにして、結論だけ先に言ってしまえば、それは国民の心の成長度の違いによると判断してまちがいないでしょう。
あるいは、北欧の人々は近代的なばらばらコスモロジーに陥ることなしに健全な合理性を身に付けて近代化をすることができ、その上でさらに近代を超えるような成長に向かっている。
それに対し日本人は急速でかなり無理のある近代化をせざるをえなかったために、極端な近代的ばらばらコスモロジーに陥り、心の成長が停滞している、というふうにいってもいいでしょう。
迫る危機
フライトは、フィンランド航空で成田昼過ぎ発。ロシア上空を地球の自転とちょうど逆に十時間ほど飛ぶので、フィンランドの首都ヘルシンキの空港までずっと昼間でした。
実は私にとって初めてのヨーロッパ旅行でもあるので、とても新鮮で、時差ボケしないためには寝ておいたほうがいいと思いつつ、しばしば目を開けて眼下に広がる白いロシアの大地を何度も何度もカメラに収めました。
とりわけ北極海と陸地の境目あたりを飛んでいて、陸地との境目がくっきりわかれて模様になっているところを見ながら、その美しさに感動しました。
しかし、後から気づいてみると、それは北極海に凍っていない部分がたくさんあったということのようで、感動してばかりはいられないことだったようです。
ヘルシンキ空港に降りてみると、なんと雪はまったくなく、恐れていたような寒さもありません。乗換えでスウェーデンの南部ヨーテボリに向かいましたが、ヨーテボリにも雪はありませんでした。
聞いてみると、「250年ぶりの雪のない冬」なのだそうです。
それは、ヨーテボリからストックホルムまでの列車の旅の窓の外の風景もそうでしたし、ストックホルムにも雪はありませんでした。
ストックホルム港から大きな客船でヘルシンキ港に向かいました。
バルト海は凍結しておらず、ヘルシンキ港では何隻もの砕氷船が暇そうに停泊していました。
長年フィンランドにおられる日本人ガイドさんによれば、こんなことは経験したことがないということでした。
旅行の後半に行った、フィンランドのもっとも北の方、サンタクロース村のあるロバニエミではさすがに雪がありましたが、道の両側に積んである雪は2メートルもありませんでした。
サンタクロース村では、少し前まで雪がなく様にならなくて困っていたそうです。村は、北極圏の入口にあるのですが。
さらにロバニエミからスウェーデンの最北部のキルナまで、うっすらという感じに雪のある高速道をバスで何時間も走りました。
雪をかぶった――包まれたり、埋もれたりではなく――白樺や樅の果てしなく続く美しい道でした。
途中、運転手さんが、「毎年マイナス30度にもなるのに、今年は寒くてもせいぜいマイナス20度くらいにしか下がらず、寒さでほとんど死んでしまうはずの病害虫の卵が生き延びてしまって、暖かくなってから白樺などのやわらかな葉を食べて森に大きな被害を与えるのではないかととても心配だ」と話していました。
日程を終えて、ふたたびフィンランド航空で成田にもどりましたが、北風が強くスウェーデンやフィンランドよりよほど寒く感じました。
ほんとうに異常気象・気候変動です。
危機はもうごく身近にまで迫っていると感じたことです。マスコミ的話題にはされていますが、日本人はほんとうに適切な行動を取ろうとしているでしょうか。
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