1991年、私はフランス・シャンベリーで行われた世界選手権の62kg級に参加しました。
この大会の予選で私は1勝2敗。その2敗はナティック選手(ベラルーシ)とグルジアの選手で、今考えると運が良かったのか(トップクラスの選手と戦えて)運が悪かったのかわかりませんが、ともかく決勝リーグには進めず、ひたすら旧ソ連勢の試合に注目して観戦していました。
決勝戦は私が予選で対戦した、ナティック選手とグルジアの選手でした。
序盤から、ナティック選手は「飛び十字」と切れ味鋭い「内股」を連発し、ポイントをリードしていました。1か2ポイント差だったと思います。僅差ながらも試合はとても激しいものでした。
ラスト1分くらいで、グルジアの選手が膝をついた「一本背負い」を仕掛け、ナティック選手は不意をつかれた形で完全に相手の腰に乗ってしまい、観ていた私は「うわー!4ポイント(柔道なら、かつがれたその瞬間、一本!と思うような感じです)とられたー!」と思ったのですが、結局ナティック選手はその技を、防ぎ1ポイントも相手に与えませんでした。
完全にかつがれた状態から1ポイントも許さなかったその防御法とは・・・。
大外刈りのように相手の後頭部に自分のふくらはぎを引っ掛け、防いだのです。
あんな防御法、見たこともありませんでしたので、「人間技じゃねー!」と私は思いました。
床の上でいわゆる背筋運動(頭を上げ、足も上げるタイプ)をしていると想像して下さい。その状態から柔軟体操の前屈をする体勢になり、かついでいる相手の後頭部を足で刈ったのです。・・・何を言っているのかわからない人もいると思いますし、なんとなく状態が想像できる人も「そんなことできる訳が無い!」と言われるかもしれません。しかし本当にあったことなのです。
-------------------------------------------------------
「サンボとは身体機動力の最大開発!」という田中さんの言葉を思い出すたび、ナティック選手が頭に浮かぶのでした。
-------------------------------------------------------
格闘技人気ブログランキング