子供の頃から自転車に乗るのが好きでした。山を幾つも越えて行く隣町。更に遠くまで海を見に行くこともしばしば。その性格は大人になっても変わらず、モスクワに留学した時も、真っ先に自転車を買いに行きました。日本とは違いモスクワで自転車を見かけることはほとんどなく、稀に選手として街を走っている人がいるくらいでした。スポーツ用品店へ行き、自転車を求めると、地下に案内されました。お金を払うと(当時1000円くらいだったと思います)自転車の部品を渡されました。どうやら自分で組み立てなければいけないようです。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/5d/c0/a903865fc079dd1b2955e0a78a13fbf4.jpg)
アパートに帰ると、さっそく先生に工具を貸して貰い、何とか組み立てました。先生には「治安が悪いので、あまり外出しないように」と言われていましたが、放浪癖があり、自転車好きの私は、次の日から、体育大学への練習も自転車で通いましたし、暇があればモスクワの街をぶらぶらしていました。
-------------------------------------------------------------------
ずっと前の記事で、「普段の自転車は足の鍛錬になるので良いが、練習前に自転車に乗ることは足が動かなくなるので止めた方が良い。」と書いた記憶がありますが、あれは撤回します。精密機械ではなくタフなつくりを理想とするロシア式で、その考えは間違いであると気づきました。
確かに昔の私のスタイルでは、瞬発力が勝負のカギでしたので、スキル的な練習や試合前に足を疲労させるということはタブーです。
しかし、ロシア的な考えでは、まず戦略的準備を含んだ組み手を大事にします。戦略的準備を含んだ組み手がしっかりしていれば、相手の懐に入り込むスピードはそれほど重要ではありません。足の疲労によって、技のキレがなくなることはありえないのです。
-------------------------------------------------------------------
・・・最近の傾向として、パワーが重視され、ウエイト・トレーニングの流行がみられる。そして、それ一辺倒に走りがちでもある。ロープ登り、懸垂などの鉄棒を利用してのトレーニング、マラソンやダッシュなどの地味ではあるが確実に身体を強化するトレーニングにも熱を入れねばならないであろう。バーベルやダンベルだけを使用して身体づくりに励むと、筋肉隆々になろうとも、生きた役立つ筋肉がつくられないことを指摘しておく。
ソ連では木を倒したり、その根っこを掘り起こしたり、田畑を時間を決めて耕したりして、日常労働をトレーニングに取り入れている場合が多い。これは生きた筋肉、役立つ体を養成して、それを格闘技に生かそうとする試みである。肉体作業においては、「これが労働だと思えばたんなる肉体労働で終わるが、トレーニングだと思えば立派なトレーニングになる」ことが、体育心理学の中でも認められているから、競技者の意識がどれほど重要であるかを知らされる。・・・
少し長くなりましたが、1986年発行、古賀先生の「これがサンボだ!」より引用しました。
私なりの解釈で、補足すると、競技者の意識があっても、あくまで力や体の合理的な使い方を身につけた人だけが、サンボのトレーニングになるのであって、筋肉の刺激のみを意識した労働では意味がないということです。ウエイトトレーニングの意識があると、何をやっても「筋肉にどうやれば負荷がかかるか」と考えてしまい、連動を忘れがちです。
最近になって私も古賀先生のおっしゃることが理解でき、そして実感しています。ロシア式のトレーニングの考え・そして体の使い方が身についていますので、何をやってもサンボに役立つ体づくりが出来てしまうんですネ。
-------------------------------------------------------------------
格闘技人気ブログランキング
-------------------------------------------------------------------