旧ソ連で生まれた格闘技『サンボ』の研究所

サンボの技術・トレーニング法を徹底的に研究します。

自転車

2005-07-27 00:15:36 | サンボの技術

 子供の頃から自転車に乗るのが好きでした。山を幾つも越えて行く隣町。更に遠くまで海を見に行くこともしばしば。その性格は大人になっても変わらず、モスクワに留学した時も、真っ先に自転車を買いに行きました。日本とは違いモスクワで自転車を見かけることはほとんどなく、稀に選手として街を走っている人がいるくらいでした。スポーツ用品店へ行き、自転車を求めると、地下に案内されました。お金を払うと(当時1000円くらいだったと思います)自転車の部品を渡されました。どうやら自分で組み立てなければいけないようです。



 アパートに帰ると、さっそく先生に工具を貸して貰い、何とか組み立てました。先生には「治安が悪いので、あまり外出しないように」と言われていましたが、放浪癖があり、自転車好きの私は、次の日から、体育大学への練習も自転車で通いましたし、暇があればモスクワの街をぶらぶらしていました。

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 ずっと前の記事で、「普段の自転車は足の鍛錬になるので良いが、練習前に自転車に乗ることは足が動かなくなるので止めた方が良い。」と書いた記憶がありますが、あれは撤回します。精密機械ではなくタフなつくりを理想とするロシア式で、その考えは間違いであると気づきました。

 確かに昔の私のスタイルでは、瞬発力が勝負のカギでしたので、スキル的な練習や試合前に足を疲労させるということはタブーです。

 しかし、ロシア的な考えでは、まず戦略的準備を含んだ組み手を大事にします。戦略的準備を含んだ組み手がしっかりしていれば、相手の懐に入り込むスピードはそれほど重要ではありません。足の疲労によって、技のキレがなくなることはありえないのです。

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 ・・・最近の傾向として、パワーが重視され、ウエイト・トレーニングの流行がみられる。そして、それ一辺倒に走りがちでもある。ロープ登り、懸垂などの鉄棒を利用してのトレーニング、マラソンやダッシュなどの地味ではあるが確実に身体を強化するトレーニングにも熱を入れねばならないであろう。バーベルやダンベルだけを使用して身体づくりに励むと、筋肉隆々になろうとも、生きた役立つ筋肉がつくられないことを指摘しておく。
 ソ連では木を倒したり、その根っこを掘り起こしたり、田畑を時間を決めて耕したりして、日常労働をトレーニングに取り入れている場合が多い。これは生きた筋肉、役立つ体を養成して、それを格闘技に生かそうとする試みである。肉体作業においては、「これが労働だと思えばたんなる肉体労働で終わるが、トレーニングだと思えば立派なトレーニングになる」ことが、体育心理学の中でも認められているから、競技者の意識がどれほど重要であるかを知らされる。・・・

 少し長くなりましたが、1986年発行、古賀先生の「これがサンボだ!」より引用しました。

 私なりの解釈で、補足すると、競技者の意識があっても、あくまで力や体の合理的な使い方を身につけた人だけが、サンボのトレーニングになるのであって、筋肉の刺激のみを意識した労働では意味がないということです。ウエイトトレーニングの意識があると、何をやっても「筋肉にどうやれば負荷がかかるか」と考えてしまい、連動を忘れがちです。

 最近になって私も古賀先生のおっしゃることが理解でき、そして実感しています。ロシア式のトレーニングの考え・そして体の使い方が身についていますので、何をやってもサンボに役立つ体づくりが出来てしまうんですネ。

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ロープ登り

2005-07-26 12:55:47 | トレーニング理論

 ロシアの体育館や道場には必ずといっていいほど、肋木とそれに引っ掛けるタイプの懸垂用のパー、ディップスのバー、天井からぶら下がっている太くて長いロープがあります。

 ロシア人のトレーニング風景で一番ビックリしたのが、重量級の選手であっても、まるで猿の様に、するするとロープを登っていたことでした。足を絡めては当然すばやく登る事ができませんので、皆、腕だけで(足は自転車をこぐように、空中をバタバタさせ、反動として利用しますが)上手に登ります。

 当時左手の薬指を骨折していたので、ロープ登りは見学し、チューブでのトレーニングをメインにしていた私ですが、日本に帰り、試しにロープ登りをしてみたところ、嘘のようにするすると登れるではありませんか。下から誰かに押してもらっているような感覚で、自分の体重が全く感じられないのです。

 ロシア式トレーニングマニュアルは自宅で出来るようにしたものですから、ロープ登りは外してありますが、私の経験からチューブトレーニングでも、ロープ登りをしたのと同じくらい、鍛えられるというのは実証済みです。日本では危険な為か体育館のロープがないところもふえているようですが、もしお近くにロープがぶら下がっていたら、是非とも登ってみて下さい。これが自分の力なのかとビックリするはずです。

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大相撲

2005-07-23 19:00:30 | トレーニング理論

 久しぶりに大相撲を観てみました。いやー、いいですね琴欧州。背が高くて、ハンサムで。さぞかしもてると思います。うらやましい限り。
 顔では、私もひけをとらないと思っていますが(結構いい線いってると思うのですが、どんなもんでしょう?)足の長さにはひたすらコンプレックスを感じてしまった私でした。

 それはさておき、ブログを読んでいただいている方が知りたいのは、モンゴル、ブルガリア、旧ソ連勢の強さに関することだと思いますので、私の正直な感想を述べます。

 柔道でも中学、高校レベルでは、短期間のウエイトによって、成績が上がる場合がしばしばみられます。技術(本当に上手い力の使い方も含め)より、単純なパワーが上回ってしまうからだと考えますが、長期的な選手育成ではなく、その場の結果を急いでしまう導者からすれば、その方が都合がよいのだと思います。選手としても、ウエイトトレーニングによって、すぐに結果が出てくる訳ですので、ウエイト万能主義に陥ります。

 しかし、10代特有の勢いがなくなってしまうと、もうどうにもなりません。結果は出なくても、コツコツと技術を磨いてきた選手、本当に上手い力の使い方を勉強してきた選手に勝てなくなるのです。若いうちだけ、すぐ結果の出てくる単なる筋トレをしてきた選手と長期的な目で見て強くなることを考えた選手とでは立場は逆転します。

 モンゴル、ブルガリア、旧ソ連の強さは、短期的な目で考えたトレーニングを決してしていないことにもあると思います。おそらくサンボ強国の大相撲での活躍は制限をしない限り止めようもないと思いますが、10年後20年後を考え、今から指導者が方法を改めれば、少なくとも外国人横綱だけの大相撲なんてのは避けられるのではないかと思います。

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お知らせ

2005-07-21 11:28:34 | その他

 サンボラボSHOPでご注文された場合、すぐに、ご注文確認メールが届きます。メーラーのセキュリティの関係で届かない場合もありますが、入力の際、単にメールアドレスの間違えで届かないケースが増えております。
 送信前に、今一度確認をお願いします。

 また、どうしても上手くいかない場合は、

 sombolabo@yahoo.co.jp
 
 まで、ご連絡下さい。

入り口

2005-07-20 23:58:09 | サンボの技術

 モスクワの体育大学には、たまにおじいちゃんのサンビストも指導に(遊びに?)来る事がありました。
 年齢も年齢ですので若い頃の体力はもちろんありませんが、しかしながら、スパーリングにおいてはめちゃくちゃ強く(というより上手く)当時23歳の私は、木の葉の様に投げられた記憶があります。
 ロシアではあちこちにサンボやレスリングのクラブがあり、いつでも、練習できる環境ですし、試合こそ出ないものの、レクリエーションとして、年をとってもよく練習します。ただ、若い選手(現役バリバリの選手とも)熟年サンビストが本気でスパーリングしている光景を今の日本で見ることは(柔道でも、相撲でも)皆無だと思いますが、いかかでしょうか?

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 年をとっても、何故若い選手とスパーリングできるのかという事について考えた時、思い出すのが合気道の故塩田剛三先生です。先輩サンビストが塩田先生のへ行き、このように言われたそうです。「若いうちは、体をどんどん鍛えなさい。力の使い方を覚えなければ、その先のことは理解出来ない」と。著書を見ても、塩田先生自身は若い頃、随分鍛えられたようです。若いうちから、達人の技術だけに囚われ、お稽古事のような、或いは実戦を伴わない理屈のみの偽者格闘家は論外ですが、鍛える場合でも、筋肉のみの働きを考えたものでは、偶然若い時だけ、強くなる場合も考えられますが、本物の強さとは違うと思うのです。

 ロシアの熟年サンビストと塩田先生に共通しているのは

 1、若い頃、さんざん体を鍛えた。

 2、年をとっても強い

 ということです。

 ロシアのサンビストはもちろんですが、おそらく塩田先生の場合でも(鍛えるという意味は)体を連動させる鍛え方に間違いないと思います。
 体を連動させ、力の合理的な使い方を覚える。これは、格闘技において初歩的なこと(もちろん正しい方法で、徹底的に体を苛め抜かなければいけません)、つまり入り口だと思うのですが、入り口の部分からして間違った人、入り口をすっ飛ばして、いきなり達人の真似事をしてしまう人。これが、日本の格闘技界の問題点だと考えます。間違った方向に進んだ格闘家は年をとると、口ばかり達者になり、若い人と戦う事がありません。

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 年をとっても元気で強いロシアのサンビストを間近に見てきた私や現在NPOサンボ振興会で活躍中の先輩サンビストは、正しい入り口を見つけるために、自分の体を実験材料に、様々な事を試し、様々な失敗も繰り返し、サンボを追求してきました。私自身何度となく、コーラの様な小便を出し、それなりに鍛えてきたつもりですが、もしも、今のNPOの指導者に教わり正しい方法で鍛える事ができたのなら、同じ血の小便を出すにしても、もっともっと強くなれたのかもしれません。

 若い格闘家には、私たちと同じ過ちを犯すことなく、正しい入り口から、正しい方向に進んで欲しいと思っています。

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