どこへ行く日本の安保 インタビュー
東大大学院教授 高原 明生氏
…前略。
--日本が対中外交を立て直すためには何か必要ですか。
「日中関係の強みである経済、文化交流の促進と、弱みである安保交流の強化を同時に進めるべきだ。それには日本が具体的な提案を示さなければならない。それもなく、ただ『会おう、会おう』と言うだけでは物事は進まない」
3面
テレビ販売1ヶ月600万台
…前略。
11月の薄型テレビの販売台数が、単月として過去最高の約600万台に達したもようだ。例年なら約1千万台とされる年間販売台数の6割を、1ヵ月で売った。1日から家電エコポイントの付与額が半減するため、駆け込み特需で販売が急伸。2010年通年は前年比8割増の2500万台以上に膨らむ見込みだが、今後は反動減も予測される。
…後略。
7面
発表直前空売り膨らむ
割を食う既存株主
株式市場が増資インサイダー問題に揺れている。事前に人手した増資情報をもとに発表前にその企業の株式を空売りし、安値で買い戻して利益を得る――。最近の市場で指摘されるこうした行為は、日本固有の資本調達手法や法規制が投機筋につけ入る隙を与えた面もありそうだ。不正摘発に加え、グローバル化に取り残された資本市場の異質な構造の見直しが急務だ。
「外部に情報が漏れている証拠がある。増資中断を検討すべきかもしれない」
9月、日本板硝子が踏み切った約400億円の公募増資。同社は増資を取締役会で決議する8月 24日の数日前に、事前の株価下落の背後に社外関係者による情報漏れがあるとの疑いを強めていた もようだ。
公表、氷山の一角
板硝子について、東京証券取引所への報告義務のある発行済み株式の0・25%以上の空売りを発表前に報告した国内外のヘッジファンドや金融機関は7社。ある外資系証券の幹部は「これは氷山の一角。むしろ、確信犯のヘッジファンドは空売りが表に出ないよう巧妙に偽装するはず」と話す。
「東京電力が6000億円規模の公募増資を発表するという話は本当か?」
東電の増資発表(9月29日)の約1週間前、ある米系証券の投資銀行マンのもとに複数の海外投資家から相次いで電話がかかった。関係者によると、引受主幹事の野村証券が他の引受証券4社と払込銀行に増資実施を事前連絡したのは9月21日。その翌日から東電の株価は下げ足を速めた。 7月に大型増資を実施した国際石油開発帝石は発表の3日ほど前から空売りが目立っていた。9月末の増資発表直前の高値から払込日まで株価が4割近く下げた相鉄ホールディングスは「(空売り急増で)発表前から早くも貸し出し可能な貸株が市場で底をついていた」(大手証券)という。
企業の増資を巡っては、市場で観測が浮上するだけで株価が動き、損失回避などを目的に空売りを出す投資家もいる。では、本当にヘッジファンドに情報は漏れているのか。
「貸株も用意したうえで事前に証券会社から情報が回ってきていた。会社の電話は録音されているから、会話はすべて携帯電話だった」。ある海外の大手ヘッジファンドに勤めていたA氏はこう証言する。同ファンドは数年前に実施されたある有名企業の増資で事前に数百億円規模の空売りを出し、その後に引き受けた安値の新株で貸株を返済。「ぬれ手で粟(あわ)」で膨大な利益を手にした。
1次受領者に罰
企業が増資を発表すると、1株当たりの企業価値の希薄化を警戒して株価が下落しがちだ。このため、企業は調達資金をどう利益成長に結びつけるかを訴え、株主らの懸念を和らげようとする。だが、最近は「投資家を納得させるだけの成長ストーリー不在の大規模増資が多すぎる」(欧州系証券の投資銀行幹部)。
株式売買の低迷が続くなかで一般投資家に人気がない案件が増え、「空売りの買い戻しで新株を買う需要がなければ、増資を吸収できないのが市場の現状」(同)。市場の需給の緩みが増資前後の株価下落だけで利益を狙うヘッジファンドの存在感を高める皮肉な現象を生み、長期に株式を保有してきた既存の株主たちが一方的に割を食う。
日本のインサイダー取引規制は増資など企業の重要事実の決定に関与した当事者と、その人物から直接情報を得た「第1次情報受領者」を罰則の対象とする。増資インサイダーではとの指摘を受け東証などは調査を始めたが、一連の売買でヘッジファンドが利益を得ていても罰則対象となるかはグレーだ。証券犯罪に詳しい郷原信郎弁護士は 「証券市場の公正さに対する投資家からの信頼が低いことが日本市場の最大の問題点」と指摘する。市場の不透明さを放置すれば、地盤沈下はさらに加速しかねない。