文明のターンテーブルThe Turntable of Civilization

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ウクライナ侵略戦争で浮き彫りになったのは覇権国米国対膨張主義ロシア・中国という対立の構図である

2022年06月27日 11時37分09秒 | 全般

以下は昨日の産経新聞に、米利上げの衝撃 中露の膨張主義を抑制できるか、と題して掲載された田村秀男の論文からである。
彼と安倍晋三氏は今月号の論壇に登場している中で、日本の経済、世界の経済を知り、正しい経済政策と戦略を知っている双璧である。
日本の問題は、経済については無知と言っても過言ではないメディアが、お茶の間を支配している事である。
このメディアに財務省の受け売りの知識しか持っていない、幼稚園児同然の学者や評論家、或いはテレビ局の社員がキャスターと称して、日本と世界の経済を語ったきた。
彼らが、先進諸国が蛇蝎の如くに忌み嫌う、1990年から今日まで続いて来た日本型長期デフレを作って来たのである。
本論文も田村秀男が戦後の世界で有数の経済論者である事を証明している。
見出し以外の文中強調は私。
中露の膨張主義を抑制できるか
ウクライナ侵略戦争で浮き彫りになったのは覇権国米国対膨張主義ロシア・中国という対立の構図である。
それを大きく動かす要因が米国の金利引き上げである。
過去の大幅利上げは原油、穀物価格の急落、中国などからの資本逃避ラッシュを引き起こし、中露を苦しめてきた。
覇権国米国の特徴は、軍事力というよりも、基軸通貨ドルによる世界の金融市場とエネルギー・穀物市場の支配である。
米国は1980年代から高金利とドル高政策によって旧ソ連の収入の源泉であるエネルギー価格を低迷させ、体制崩壊へと導いた。
米国はその後、ドル中心の金融グローバル化と並行して民主主義と人権重視を浸透させ、国際秩序を築いてきた。
屈辱的な経済崩壊を体験した旧KGB出身のプーチン・ロシア大統領と、盟約を交わしたのが中国の習近平共産党総書記・国家主席だ。
両首脳は2月4日、「限りない相互協力」を約束した。
具体化した中露協力協定は、脱ドル依存のための金融協調と中国によるロシア産エネルギーと穀物の長期大量購入である。
プーチン氏はロシア帝国の復活を、習氏は「中華民族の偉大な復興」をもくろむ。
障害になるのが、米国のドル覇権である。
ロシアの収入源のエネルギー、穀物とも米国の金融政策に翻弄される。
習氏は党による強権をもとに国際ルールを無視して対外進出し、国内では人権弾圧を繰り返すが、米国の金融制裁圧力に直面する。
ドルの支配力を打ち砕くうえで、両専制主義者は盟友になった。
プーチン氏は用意周到だ。
2020年4月にサウジアラビアなど石油輸出国機構(OPEC)を巻き込んで協調減産を取り決め、同年秋からの石油価格高騰に導いた。
戦場と化した黒海での穀物輸送を困難にし、穀物価格を高騰させた。
小麦の輸出市場のシェアはロシア21%、ウクライナ9%、合わせて30%に上る。
天然ガス供給をロシアに頼っている欧州の弱点を見越し、ロシアは14年以来、脱ドルを着々と進め、欧州のユーロと、それを補完する人民元を決済通貨にしてきた。
プーチン氏の試みに関し、習氏は水面下で側面支援する。
金融制裁のためにロシアの長期衰退は避けられない。
ロシアは隣国中国に従属するとの読みが習氏にあるだろう。 
グラフは、米連邦準備制度理事会(FRB)の政策金利が誘導するドルの短期金利動向を原油相場および中国からの資本逃避と組み合わせている。
これらはドル資金の巨大な流れと一体になっている。
08年9月のリーマン・ショック後、米国はドル資金を大量発行する量的緩和とゼロ金利政策をとった。
大量の余剰ドルは投機資金となって国際商品市場になだれこみ、原油相場を押し上げた。
ショックからいち早く立ち直った中国にも外資による投融資が盛んになり、中国からの資本逃避も抑えられた。
だが、14年秋に米国が量的緩和を打ち止めると、原油市況は下落、中国からの資本逃避が増え始めた。
15年夏に習政権が人民元を切り下げ、FRBが同年12月に利上げに転じると、資本逃避は加速し、金融危機の様相を呈した。
当時のFRB議長のイェレン氏(現財務長官)は中国金融不安が国際金融市場に転じると懸念し、予定していた追加利上げを1年先に延ばした。
その猶予期間に習政権は徹底的な資本逃避の取り締まりを行う。
米利上げ再開で原油相場の低迷は続き、20年3月の新型コロナウイルス禍とともに急落する。
FRBが量的緩和とゼロ金利政策に回帰すると、原油相場には投機資金が大量流入する。
前述したロシアとOPECの協調減産がそれに拍車をかけた。
他方で中国からの資本逃避は急増する。
中国の住宅バブル崩壊、「ゼロコロナ」政策による需要不振が響いた。
米国経済は21年から新型コロナ不況からV字型回復を遂げ、エネルギー価格高騰と重なってインフレ率が高騰するようになり、FRBは今年3月から利上げに転じた。
まず現出したのはドル高であり、日本は急激な円安に見舞われている。
目下のところ、原油も穀物相場も高水準が続いている。
ウクライナ戦争の余波である。
だが、FRBは大幅利上げで、原油、穀物への投機を押さえ込むだろう。
中国では3月から外資による中国債券売りが加速している。
米利上げの威力を示す。
わが国はといえば参院選、争点は円安・物価高対策、防衛費増額だが、上滑りでは済まされない。
米利上げが及ぼす中露への衝撃を踏まえ、円安を国力再生の好機に変える高次元の論戦を求めたい。


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