「誤解した国々には英語で訂正を出しますから許してください」とあのとき泣いて慈悲を乞うたのを忘れたのか。
2018年11月19日
戦後の世界で唯一無二のジャーナリストである高山正之が週刊新潮に連載している名物コラムの今週号は、「百年早い」と題して掲載された。
百年早い
大阪市が60年前、サンフランシスコ(SF)と姉妹都市になったのに別に深い意味はなかった。
日本の第二の都市だからそれぞれの国の第二の都市で、できたら同じ港湾都市が望ましい。
で、ロシアはサンクトペテルブルグと、支那は上海と、オーストラリアはメルボルンと姉妹都市を結んだ。
その選定基準で米国を見れば、まずボストンが浮かぶし、ニューオーリンズでもいい。
西海岸にはロサンゼルスもあった。
そこにはかつて日本人移民が上陸したターミナルアイランドがある。
日系人には東海岸の移民の窓ロエリス島にも擬せられる。
それらを差し置いて大阪市はサンフランシスコを選んだ。
歴史を踏まえれば大間違いに思える。
ここでは20世紀初め、日露戦争のさなかに地元紙サンフランシコクロニクルが凄まじい反日キャンペーンを張った。
やれ日系人は故郷に送金するだけで地元にカネを落とさないだの、やれ日系人は写真だけで伴侶を決める、結婚に愛もないだの。
極めつきは「Brown steals white brain(日本人は白人の知恵を盗む)」だった。
当時、高峰譲吉が副腎からアドレナリンを抽出し結晶化に成功した。
世界的な偉業だが、それに米国人ジョン・エーベルが「高峰は俺の研究を盗んだ」と言って、勝手にエピネフリンと名付けた。
後にエーベルの嘘がばれるが、米医学界は今もエピネフリンを正式名にする。
そういう風潮をクロニクルは囃し立てていた。
日本が日露戦争に勝つと日本人蔑視はもっとおぞましい嫌日に発し、直後に起きたSF大地震でそれが形になった。
同市の被災に日本人は同情し50万円の見舞金を寄せた。
それは他国からの義援金の総額よりも大きかったが、市民の返礼は「日系人児童を公立学校から締め出す」ことだった。
米国は苦力の始末のため少し前に排華法を作っていたが、そのころは支那人の方が可愛くなって、ひたすら危険な日系人を誹謗し、焼き討ちまでやった。
ハリウッドはそれまで腹黒くて残忍な「傅満洲」を支那人の象徴にしてきたが、ワルはもはや日本人で決まりになり、支那人代表は愛される警部「チャーリー・チャン」に差し替えられた。
SFの魔窟チャイナタウンも掌返しで温かく見守られ繁盛していった。
支那人は日本に感謝したものだ。
河添恵子によれば最近はフローレンス・ファンこと方李邦琴がここを仕切り米国の意に沿ってチャイナタウンを反日、侮日の活動拠点に仕立てている。
北京と同じに抗日記念館も開設し昨年は「日本軍に性奴隷にされて毎日20人の客を取らされ、挙句に殺された数十万の女性」のための慰安婦像をビルの屋上に建てた。
それをすぐに支那人市長が市の公園に格上げした。
その数字がホントだったら日本軍は全兵士とも戦争を放り出して毎日、女の相手をしていたことになる。
余りの荒唐無稽に大阪市がSFとの姉妹都市関係を断った。
当たり前だ。
そうしたら朝日新聞が社説で「原点に立ち返り再考を」と諭す一文を書いた。
中でこじれたのは橋下徹が「戦場に売春婦は必要だった」と言ったせいだと指摘する。
それでSF市民が反発した。
橋下は軽率だったと非難する。
社説を書いたのは論説主幹の根本清樹あたりか。
この男は自分の新聞が「ただの売春婦」を「性奴隷」に仕立てた過去を忘れたのだろうか。
その嘘がバレて木村伊量のクビが飛んだ。
「誤解した国々には英語で訂正を出しますから許してください」とあのとき泣いて慈悲を乞うたのを忘れたのか。
許せないのはその英文すら外から検索できないように小細工していた。
戦時の売春婦を語りたいならまず根本清樹が出向き「嘘を言いました」と謝罪してくるのが筋だろう。
「原点に立ち返る」のはどちらか。
大阪市にご意見など百年早いわ。