朝からずっと境内は風もなく、正に春麗らといった風情です。
今は丁度梅が咲き終わり桜を待っているような時期ですが、参道の脇に馬酔木が咲いているのを見つけました。
馬酔木(あせび、あしび)はツツジ科の花で、毒を含んでいるので牛馬が食べると酒に酔ったようにふらふらするのが名前の由来とされています。しかし実際には毒が分かるのか、草食動物がこれを食べる事はほとんど無いとも。逆に毒を利用して殺虫剤として使われていたという記録もあります。
小振りな花ですがその可憐さが昔から好まれていたようで、万葉集にも馬酔木を詠んだものが幾つかあります。
『磯の上に 生ふる馬酔木を 手折らめど 見すべき君が 在りと言はなくに(大伯皇女)』
“岩の上の馬酔木を手折ってあなたに見せたいのに、あなたが居るとは誰も言ってくれない(もういないのですね)”
『我が背子に 我が恋ふらくは 奥山の 馬酔木の花の 今盛りなり(詠み人知らず)』
“あなたの事を想う私の心は、奥山に咲いている馬酔木のように真っ盛りです”
他にもありますが、昔は馬酔木と言えば美しい花、人に見せたくなるような春の花であった事が伺えます。
今は花屋へ行けば世界中の花を目にする事ができますが、こうした身近な季節の花を味わう心も大切にしたいものです。