兵庫県の斎藤元彦知事が11月の再選後初めて、自身の疑惑を告発した文書に関する県議会調査特別委員会(百条委員会)の証人尋問に臨んだ。問題の文書は公益通報に当たらず、作成した県幹部への懲戒処分は相当だったとこれまでの主張を繰り返した斎藤氏。これと食い違う部下証言は「記憶にない」と事実上否定し、核心部分の溝は最後まで埋まらなかった。

斎藤氏は3月20日に文書を入手した。翌日には側近幹部に「徹底的に調べてくれ」と指示、公用メールの調査により元県西播磨県民局長の男性=7月に死亡=の関与が浮上した。当時の片山安孝副知事が3月25日に男性を事情聴取した上、公用パソコンを回収し、文書作成者と特定した。

「通報者捜し」は公益通報者保護法の運用指針で禁じられている。斎藤氏は①誹謗(ひぼう)中傷性が高い内容②客観的証拠による裏付けがない③元局長自身が「噂話を集めて作成した」と話すなど、公益通報の保護要件である「信ずるに足りる相当の理由」(真実相当性)がないとして、自身の指示は「通報者捜し」ではなく、懲戒処分の対象となる文書の作成者の調査だったとした。

斎藤氏の側近の一人である小橋浩一前理事は、3月27日、第三者委員会による調査を斎藤氏に進言したが、「渋い顔をして受け入れられなかった」と述べていた。

斎藤氏はこの日の尋問で「進言された認識はない」と否定。むしろ懲戒処分のための「人事当局による内部調査が適切だと進言された」と、食い違う証言をした。

結局、告発文書が公益通報なのか、斎藤氏の言う懲戒処分に該当する「非違行為」なのかといった根幹部分で最後まで斎藤氏と部下職員との認識の差は埋まらず、議論は平行線で終わった。