第5章【出会いと別れ】
相変わらず晴天で暑い。
前半のこの辺りは木陰もあるが、後半は全くと言っていいほどないので
このままだと、かなりバテることになる。
周りのランナーは皆キツそうに走っている。完走率も悪くなりそうだ。
しばらく、走っていると下り坂で森下さんに追いついた。
若い女性ランナーと楽しそうに話しながら走ってる。
う~ん、うらやましい…。
後から蹴りを入れたくなる気持ちを抑え、抜きがてら
「相変わらず、下り坂に弱いですね」と声を掛けた。
森下さんは登りは大好きで強いのだが下りは苦手としている。
なので次の登り坂でまた追いつかれて抜かれた。
ここで若い女性ランナーと一緒に写真を撮ってもらった。
ちょっと、嬉しい。
次の下りで二人を抜き返す。下り基調が続くので私にとっては良い感じだ。
下りでガンガン飛ばし、登りでペースダウンの繰り返し。
平均すれば可もなく不可もなくといったペースだ。
ここで、内堀さんと一緒になった。
去年は後半のところでアドバイスを頂き、完走出来た恩人だ。
先日から足を痛めていているそうで、時々立ち止まって足をさすったりストレッチをしている。
でも、走りはまだパワフルで中々追いつけない。
その姿を見て「私も頑張らなければ」と思わされた。
今年も元気を貰った。
関門時間が気になる。
今のペースだとギリギリのようだ。
緩やかな登りが続くが関門に間に合わないわけにはいかない。
苦しいがペースを上げる。
やがて、内堀さんに追いついた。
「結構、ギリギリですね」と声を掛けた。
かなりきつそうだ。
関門に間に合わないかも、とう精神的なプレッシャーを走力に変えて走る。
そして、なんとか第2関門通過!
私はここで時間を勘違いしていたことに気付いた。
関門時刻は10:10なのだが、ずーっと9:55と思い込んでいた。
なので間に合わないかも知れないという恐怖で必死にここまで走って来たのだ。
「なんだ、頑張らなくても間に合ったじゃん」とつぶやいたが
「いやいや、これでも貯金をかなり食いつぶしてるんだから余裕こいて走ってたら大変なことになってたぞ」
と思い直した。
ここから波野までは下り基調。今の貯金は約17分
貯金に励まないと完走は無理。
夏の貯金キャンペーンを実施しなければ!
思いを新たにスタートした。
幸い、お腹の方もその後痛くならず、力も少し入ってきた。
42.159kmの看板を通り過ぎる。
フルマラソン以上の距離を走ったことない人にとって、ここから先は未知の領域だ。
下りに入り私のペースも徐々に上がり、先行する人を抜いていく。
脚はまだまだ大丈夫。
後半を考えると飛ばしすぎないほうが良いのだが、貯金できなければタイムオーバーでリタイアだ。
走れなくなったとしても、その時は自分の非力を認め諦めるだけ。
今は1分1秒でも良いので貯金に励む時だ!
先の方に見覚えのあるランナーが見えてきた。
頭に巻いたタオルの色は違うが、松田さんだ。
暑さにやられたのかきつそうだ。
一声かけて追い抜いた。
波野まであと少し。
だが、50km組のスタートには間に合いそうにない。
残念だが、記念撮影は諦めざるを得ない。
少し気落ちしながらも、目標を完走に集中させ気持ちを切り替えた。
50km地点を通過。
タイムは6時間8分10秒
去年は5時間59分19秒だったのに、これで完走に黄信号が点灯したようなもんだ。
気は焦るが、どうにもならない。
とにかく、頑張って走るのみだ。
途中、一家総出で応援してくれている方々がいた。去年も応援してくれてた家族だ。
苦しい中、心が和む。
「ありがとうございます!」と応えて通り過ぎた。
さあ、波野まであと少しだ!
予定を大幅に超過して波野に到着。
当然ながら、50km組はスタートした後。
休憩時間もあまり取るわけにいかない。
まずは補給だ。
スポドリを飲み、パン、そしてスイカを食べる。
おにぎりを2個貰い、辺りを見回すと救護所に折りたたみ椅子があったのでそこに座って食べる。
少しでも脚を休ませる。
次にそばを頂く。
食べるというより口の中に押し込む感じだ。
食べ終わり、休憩ついでにトイレに行こうとしたら数人並んでいた。
まだ大丈夫なので、ここはパスすることに。
あまり時間が無い、早くここを出なければ。
もう少し食べたかったのでパンを2個手に取り、行こうとしたら男性ランナーに声を掛けられた。
「カル友」メンバーの大舟さんだった。
大会前から痛めていた足が良くないのでリタイアするらしい。
う~ん、悔しいだろうが、仕方ない。これも阿蘇カルデラだ。
その決断に拍手を贈りたい。
大舟さんに見送られ、いちごマスクを被りながら波野レストステーションからコースへと出た。
さあ、後半戦!
いちごマスクの緒を締めて、パンをかじりつつ走り出した。
(次回、第6章【草原に吹く風】へ つづく)
注:文中、私以外の方の氏名は仮名です。
ほぼ事実ですが、一部脚色、記憶のあいまいさから事実と違ったり、
場面が前後している場合があります。なので、つっこまないでねw
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