【エピローグ】
翌日、起きると不思議なことに筋肉痛が殆んどなかった。
膝とふくらはぎに多少の痛みはあるが、普通に歩ける。
自分もちょっとは脚が出来てきたのかな?と
ひとりニヤケながらホテル内のレストランへ向かった。
バイキング形式のレストランには多くの宿泊客がいたが
一目見て、阿蘇カルデラを走ったランナーたちの姿もあった。
見知らぬ人々ではあるがなんとなく親近感がわく。
ゆっくりと朝食を終えた私はチェックアウトまでの時間を
再び温泉に入り疲れた体を癒すために使った。
ホテルを出たが、そのまま帰る気にならず
車をあてどなく走らせた。
やがて、見覚えのある風景が現れた。
路面には白線の矢印が描いてある。
昨日のコースだ。
なんとなく、その道をトレースしながら、私は外輪山の上へと車を走らせた。
ミルクロード沿いの展望所には沢山の観光客がいて
みな楽しそうに記念撮影に興じている。
私もその中に混じって眼下に広がる阿蘇谷を眺めた。
少し煙った草原を爽やかに風が吹き抜けている。
私は周りの観光客に心の中で語りかけた。
「知ってますか? 昨日、千数百人ものランナー達がここを風のように駆け抜けたのですよ」と。
私はきっと来年もここへ帰ってくるだろう。
カルデランレッドの風になるために。
(完)
注:文中、私以外の方の氏名は仮名です。
ほぼ事実ですが、一部脚色、記憶のあいまいさから事実と違ったり、
場面が前後している場合があります。なので、つっこまないでねw
日本ブログ村に参加してます
良かったらポチッとしてね