2024年9月3-5日で三俣蓮華(2,841m日本300名山)、黒部五郎岳(2,840m)、水晶岳(2,986mi)に登り、黒部源流地帯を巡る旅をしてきました。黒部の源流地帯とは、東を鷲羽岳、水晶岳、南を三俣蓮華岳、黒部五郎岳に囲まれた、雲の平周辺を指します。特に、ワリモ岳、鷲羽岳と祖父岳の間に流れる沢を黒部源流と記している地図がありました。これが薬師沢となり黒部川と名を変えて黒部湖に注ぐのです。
この地図はわかりやすくて便利。
アクセスに丸一日を要し、最低でも3日かけないと楽しめない、いわゆる北アルプス、もっと言えば日本の奥座敷です。名峰に囲まれ、静かに広がる広大なこの地は、訪れてみなければその良さはわかりません。2年前には、富山の折立口から薬師岳、雲の平、高天原を経て鷲羽岳、笠ヶ岳に登り岐阜の新穂高に降りるコースを歩いています。その時は、体力不足から水晶、三俣蓮華は登れなかったのでした。今回の初日は新穂高から小池新道で双六小屋経由三俣蓮華に登り黒部五郎小舎に泊まります。翌日、黒部五郎岳をピストンして水晶小屋へ。最終日、水晶岳をピストンして新穂高温泉に戻るコース。初日は朝3時半に駐車地の新穂高を出発。初めて通る小池新道を辿り双六小屋へ。
この小池新道、1955年ごろ、双六小屋の小池義清さんらがが数年の歳月をかけて切り開いた登山道です。
石畳にように敷かれた平らな岩が特徴で、とても歩きやすい。特に降りの疲れた足にはとてもありがたい。前回この地域に来たときには、笠ヶ岳から笠新道を使って降りたため小池新道は初めてです。
途中の鏡池でみる逆さ槍
笠新道の急で歩きにくい岩の道に比べると、勾配の緩さといい比べ物にならないほど良い道でした。かつてのローマ街道を彷彿とさせます(見たことはありませんが)。
その双六小屋で一息入れて三俣蓮華岳に登ります。台風の影響で、この日この辺りを歩いている人はほとんどいません。山頂は独り占めで、明日登る黒部五郎岳、
水晶岳、
遠く北西に大きな薬師岳、
そして目の前の広大な雲の平まで僕だけのもの。その光景に後ろ髪をひかれながら、今度は黒部五郎小舎目指して降ります。広い高原を緩やかに降り、最後は本日一の急坂を400mほど降ります。明日これを登り返すのかぁ。
2日目は4:20出発。弁当持って黒部五郎岳山頂目指す。今日は快晴、東の槍穂高もくっきり、
日が登ると五郎のカールも朝焼けに。
誰もいない山頂で山たちを眺めながら弁当を食べる。最高に気持ちが良いです。
親指の先がこれから向かう水晶岳
今日は水晶もできれば登りたいので至福の時間は程々に下山開始。500m降って400m 上り返す。三俣山荘で昼食。ラーメンとコーラで2,400円。高いと言えば無茶高いです(でも、アメリカで同じものを食べるともっと高い!)。
水晶岳へは一旦降って黒部源流記念碑なるものを見てから登り返す鷲羽岳を巻くコース。楽なはずですがこの一帯、石が転がる足場が悪い道で結構疲れる。ワリモ岳のコル手前から雲行きが悪くなり、コルに着く頃には一面ガス。午後1:00、今日のお宿、水晶小屋に着く頃には雨が降り出す始末。元々ここで休憩してから水晶岳をピストンするつもりだったので、コーヒー飲みながら待つ事1時間半、なんとなく明るくなってきたのでレインスーツに身を固めて出発。やはり僕は晴れ男、ガスがどんどん晴れていくではありませんか(ビール飲まなくてよかった!)。
山頂からは今朝登った黒部五郎も、野口五郎も、薬師岳もうっすら見えました。雲の平も目の前です。
こうして黒部五郎と水晶岳は我が物となったのでした。
ちなみに水晶岳は双耳峰。山頂は南峰、三角点は北峰。
さあ、明日は帰るだけ。というわけでビールと酎ハイで乾杯。
最終日、真っ赤な朝焼けを眺めながらきた道を折り返す。同宿の方とおしゃべりしながら歩いてあっという間に三俣山荘に。
手前から鷲羽岳、ワリモ岳、水晶岳
ワリモ岳と鷲羽岳にのぼる選択肢もありましたが、今日も長い1日なので無理せず楽な源流コースとしました。1日平均20kmを3日歩くと流石に疲れます。
三俣山荘からは三俣蓮華の巻道を槍穂高のパノラマを眺めながら歩く。双六小屋を過ぎれば、今度は笠ヶ岳を視界に収めながら最後の尾根歩きとなります。弓折乗越からは再び小池新道に感謝しながら新穂高への道を降ります。
台風の影響の無くなった最終日には、たくさんの登山客が押し寄せて、いつもの光景となりました。
雲海に浮かぶ焼岳と乗鞍岳
多くの皆さんにここの良さを知ってもらいたいとは思うものの、やはり独り占めの黒部源流は最高で、本当に良いタイミングだったと思います。
こんな景色も独り占め
今回は感じませんでしたが、昨今、この奥まった場所でも外国人登山客が激増しているそうです。もしかすると、今となっては外国人の方が日本の山岳の良さを知っているのかもしれません。整備されて、スケールが大きいだけの海外の山岳に比べ、小ぶりだが未だ野生の環境が残り(ちなみに、僕は見れませんでしたが、他の方が水晶小屋直下で熊を目撃、写真に収めていました)、バラエティに富んだ日本の自然は世界のハイカーから注目されています。知らないのは日本人だけ、なんてことにならないように、そして、あまりに多くの人が押し寄せて秘境の良さが失われないことを祈ります。