竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
自得の100句が生涯目標です

孫悟空居さうな雲の国小春  高田風人子

2018-11-28 | 


孫悟空居さうな雲の国小春  高田風人子

朝寒、夜寒、といった晩秋のきゅっと冷えこむ感じもあまり無かった東京だが、暦の上ではもう冬。今日十一月十日は、旧暦十月一日、今日から小春月である。小春は本来旧暦十月のことをいい、本格的な冬になる手前、春のような良い日和が続くことに由来するが、ふつう俳句で小春というと、小春日和を意味することが多いようだ。飯田龍太に〈白雲のうしろはるけき小春かな〉の句があるが、穏やかな一日、空を見上げ、ゆるゆると流れる雲に来し方を思う心が見える。穏やかであればこそ、どこかしみじみとするのだろう。同じように小春の空を見上げた作者だが、そこに孫悟空が居そうだという。孫悟空といえば、筋斗雲、いや金斗雲か。キントは宙返りの意で、本来キンは角偏に力と書く。アニメのドラゴンボールから「西遊記」の原作本はもちろん、テレビドラマや東映アニメーション映画など、孫悟空に親しんだ思い出は誰にもあるだろう。ぽっかりとひとつ浮かんだ雲が、呼べば降りてきそうに思えたのか、広がっている雲の上に別世界があるような気がしたのか、と思い確かめると、この「国」は日本ではなくタイ。旅先での作というわけだが、アジア的異国情緒と俳句的感覚が、不思議な味わいの一句をなした。「高田風人子句集」(1995)所収。(今井肖子)

まあるい目手話の母娘に小春風 たけし

小春日にみな目を細め六地蔵 たけし

高架橋歩いて独りわが小春 たけし

負の傷みうすらぐ心地小春風 たけし