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雪晴の額にもうひとつのまなこ しなだしん
昔読んだ手塚治虫のマンガ『三つ目がとおる』を思い出した。普段はぼんやりして泣き虫、額に大きなばんそうこうを貼った主人公がばりっとばんそうこうをはがしてもう一つの目が出現するや、不思議な魔力を発揮する話だった。どんよりと雲が垂れこめて降り続いた雪がやむと青く晴れ渡った天気になる。真っ白な雪に覆われた景色のただ中にいると普段は見えないものが遠くまで見通せるような気持ちになる。目はもともと脳の一部が変質したものという説があるが、視覚的な景色をとらえる目とは異質なものを感知する目が額にあるのかもしれない。「もうひとつのまなこ」は雪晴の冷たく透き通った空気を額に感知しての比喩的表現だろうが、そんな日には前髪でかくされた眼が現れる非現実も違和感なく受け取れる。『隼の胸』(2011)所収。(三宅やよい)
【雪晴】 ゆきばれ
◇「深雪晴」(みゆきばれ) ◇「雪後の天」(せつごのてん)
雪の降り止んだ翌朝は、雲ひとつない晴天に恵まれることが多い。しかも、心なしか暖かに感ずる。青天に雪一色の世界は清々しく心の洗われる心地がする。
例句 作者
雪晴の日ざしまともに机かな 五百木瓢亭
きつつきの来て雪晴の直ぐなる樹 大野林火
深雪晴わが影あをき虚空より 深谷雄大
雪晴れの松の雫に射られけり 児玉喜代
雪の晴舟屋の屋根に人のゐて 関戸靖子
雪晴や山押し分けて川流る 相馬遷子
雪はれの朝餉の酸茎噛みにけり 日野草城
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