竹とんぼ

家族のエールに励まされて投句や句会での結果に一喜一憂
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靴裏に都会は固し啄木忌   秋元不死男

2019-04-13 | 今日の季語


靴裏に都会は固し啄木忌   秋元不死男

四月十三日は石川啄木の忌日。したがって「啄木忌」は春の季語。1912(明治45)年、不遇と貧困のうちに二十七歳の若さで病没した。句は、都会での成功を夢見て破れた啄木の無念を想い、都会で生きる難しさを鋪道の固さで象徴している佳句だ。ところで、このように「忌日」を季語とすることについて、かつて金子兜太が次のように反対している。「人の死んだ忌日を、季語にしてしまうやり方は、不埒千万、季語そのものさえ冒涜するものと考えている。(中略)故人の業績や人がらをしのばせるのが目的ならかまわないが、季節までこれで連想させようとするのは行き過ぎである。俳人がぜんぶ戸籍係になっても、とても季節まで記憶できるものではない」(KAPPA BOOKS『今日の俳句』1965)。その通りだと、私も思う。句集を読んでいて、いちばん困るのが「……忌」である。季節もわからないし、第一「……」の部分がわからないので解読が不可能となる。たとえば太宰治の「桜桃忌」(6月19日)には季節感があるのでまだしも、芥川龍之介の「我鬼忌」(7月24日)になると、すぐに芥川の命日だと反応し、しかも夏の季語だとわかるのは、もはや特殊な教養人に限られてしまうのではあるまいか。(清水哲男)

【啄木忌】 たくぼくき


4月13日。石川啄木の忌日。歌人。岩手県生れ。社会思想にめざめ、和歌の革新を志し、口語をまじえた3行書きで生活感情をゆたかに盛る。歌集「一握の砂」「悲しき玩具」のほか詩・小説・評論など。(1886~1912)

例句   作者

枕木を柵の停車場啄木忌 成田千空
新品の下駄を履きたる啄木忌 國分水府郎
ある年の花遅かりき啄木忌 久保田万太郎
啄木忌さみしくなりて逆立す 吉田未灰
壁の服みな腕垂れて啄木忌 斎藤朗笛
啄木の日に量りゐる新聞紙 角 光雄
あ・あ・あ・とレコードとまる啄木忌 高柳重信
啄木忌いくたび職を替へてもや 安住 敦
曲り屋は花に余白の啄木忌 平野無石



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