そして聞きたくなった曲がある。夏の甲子園のテーマソング、古関裕而さん作曲の「栄冠は君に輝く」。いい歌だなと思う。この人はマーチ系の曲を書かせたら右に出る人はいないというか日本のスーザーとも言われている人。
阪神タイガースの応援歌、六甲おろしもこの人の作曲である。いつか大阪音楽大学の先生のセミナーに行った時、先生が「古関裕而さんは六甲おろしを作曲している。だから大阪の味方やと思って油断したらあきまへんで。巨人の歌もちゃっかり書いてまっせ」と言っていた。
そう、巨人の応援歌「闘魂込めて」も古関裕而さんの作曲である。早稲田の応援歌、「紺碧の空」も古関裕而さんの作曲。それで古関裕而さんは早稲田のファンと油断してはいけない、慶応の応援歌もちゃっかり書いている。
とにかく日本のおいしいところの作曲のかなり多くをこの人は手がけておられる、ちなみに古関裕而さんと僕と誕生日が同じである。まあ、関係ないことかもしれないけれど。
栄冠は君に輝くも 六甲おろしも 紺碧の空も同じ作曲者の曲なのでいろいろ共通点というか共通のスピリットというのはある。
しかし、こういう機会に改めて聴くと栄冠は君に輝くは、六甲おろしや紺碧の空とは決定的に違うとも言える。それはどういうことかというと、六甲おろしや、紺碧の空は特定の野球チーム、あるいは特定の大学の応援歌だ。
なのでそこに怒涛のような迫力、相手も叩き潰してしまえという勢いがある。しかし、栄冠は君に輝くは特定のチームの応援歌ではない。甲子園球児すべてにひいてはすべての若者にエールを送る歌。敵を倒すという怒涛の迫力がそこにあるわけではない。
そこにあるのは、全力で戦うといういわば普遍的な人間の頑張りというものに対するエールになっている。そういう気持ちで書かれているところにこの曲の大変ヒューマンな魅力が詰まっている。
書く曲のコンセプトによってそこにこめる心には決定的な違いがある。そういうところが古関裕而さんて偉大だなとしみじみとおもう。新聞に書いてあった古関裕而さんの評伝を読むと壮大な音楽とはうらはらにそれほど社交的ではなくどちらかというと内向的で寡黙な人物であったらしい。
そんなところにも魅力を感じたりする。本当にすごい作曲家だなと思う。