小さな幸せ

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蜩の記

2012-05-04 23:15:15 | 読書

 

 

葉室麟著

「蜩の記」

読み終わりました

 

直木賞を受賞した作品です

 

あの時、田中さんが注目され過ぎましたね

 

この本、いいです

本屋で数ページを立ち読みし、

あれ、藤沢周平っぽいとすぐに図書館に予約

ずいぶん待ちましたが、やっと順番が回ってきました

一気読み

 

 

表題「蜩の記」は、主人公が書いている日記のこと

文中で主人公にこう語らせています

 

夏がくるとこのあたりはよく蜩が鳴きます。

とくに秋の気配が近づくと、夏が終わるのを哀しむかのような鳴き声に聞こえます。

それがしも、来る日一日を懸命に生きる身の上でござれば、日暮らしの意味合いを籠めて名づけました。

 

主人公戸田秋谷は、学問、武術にもすぐれ、正義感にあふれた武士道を心得たザ・サムライ

そんな彼はお家騒動に巻き込まれ、幽閉され、3年後には切腹しなくてはいけない身の上

彼が不穏な動きをしないか見張る役目を仰せつかって同居することになった若き侍、壇野庄三郎

しかし彼も、すぐに秋谷の人となりに傾倒していき

秋谷が切腹しなくてはならなくなった真相を知ろうとします

そして、切腹しなくてすむ道はないかと思い悩みます

 

秋谷の妻、織江、娘、薫、息子、郁太郎

家族にとっても頼もしい夫であり尊敬できる父親でもあります

 

家族愛、村人たちとの隣人愛、ひそかに秘めた愛

 

色んな形の愛が随所にあふれています

 

秋谷が幽閉されるに至る謎解きもあります

 

色んなものが楽しめます

 

息子郁太郎の友達の百姓源吉には、泣かされます

 

身分の違う少年のふたりが友情を確かめあうシーンがあります

 

「源吉は嫌なことがことがあっても、すぐに笑い飛ばしてしまう。

わたしはいつまでもくよくよと考え込んでしまう」

「それは郁太郎が頭がいいからじゃろ。おれは頭が悪いから覚えてねえだけだ。

それになあ、おれは世の中には覚えていなくちゃなんねえことは、そんなに多くはねえような気がするんよ」

「そうか。源吉が覚えていなくっちゃならないと思うのはどんなことだ」

「そらまあ、おとうやおかあ、お春のことは当たり前じゃけんど、他には郁太郎のことかなあ」

「わたしのこと?」

「友達のことは覚えちょかんといけん。忘れんから、友達ちゃ」

「そうだな、忘れないのが友達だな」

 

 無垢なふたりのいい会話です

 

 

いつの時代も自分の立身出世のため

どちらについたら損か得か

葉室さんは今の生きにくい世の中とリンクさせて描いているように思います

 

だからこそ、読み手は戸田秋谷の生き方に感動し、最後のシーンで胸をスカッとさせるのですね

 

もうこの世に未練はござりませぬ

と、すがすがしい面持ちで切腹の儀にむかう主人公に、慶仙和尚の言葉が胸に響きます

 

未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。

この世をいとおしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が生き暮れよう

 

この和尚の言葉、この小説を書く前から考えていたのではという気さえしました

 

きっとこの作品はそのうち映画化されると思います

主人公、戸田秋谷は、役所広司さんか中井貴一さんかな

若い侍壇野庄三郎は、妻夫木君なんかいいかな

娘薫は、やっぱり旬でいうなら武井咲ちゃん

松たか子さんがもう少し若ければぴったりはまるのですが

秘めた恋の相手松吟尼は黒木瞳さん

 

あ、役所さんと黒木さんか~

これはちと問題ありかな

 

 

 

とにかくお勧めの一冊です

 

今日の私の小さな幸せ

 

今夜のMステ見応えがありました

 

ミスチルの歌で一番好きなのは2位になってた「名もなき詩」だわ

コメント (36)
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