ロシアなまりの英語は変でしょ
1953年、スターリン政権下のソ連で、44人の子どもたちの変死体が次々に発見される。だが「理想国家=パラダイスで殺人は起きない」というスローガンのもと、国家はあくまで事故として処理する。そんな中、スパイ容疑をかけられた妻(ノオミ・ラパス)をかばったため、地方へと左遷させられたKGB捜査官のレオ(トム・ハーディ)が、事件の真相究明に乗り出す。
トム・ロブ・スミスの原作は「このミステリーがすごい!」海外編で1位を獲得しただけに、ミステリーとしてはなかなか面白い。少年ばかりを狙うシリアルキラーという犯人像は、スチュワート・ウッズの『警察署長』をほうふつとさせるし、一見ばらばらに見えた犯行が鉄道を軸にして結び付くという趣向もある。
ハーディとラパスをはじめ、ゲイリー・オールドマン、バンサン・カッセルらの怪しさに満ちた演技、スウェーデン出身のダニエル・エスピノーサ監督、撮影監督のオリバー・ウッドらが作り出した、時代背景や登場人物が抱える暗さを反映した画面構成も印象に残る。
ただし、この映画の最大の弱点は、登場人物たちにロシアなまりの英語でせりふを言わせたこと。違和感を抱かされること甚だしい。ロシア語ならロシア語、英語なら英語のどちらかに徹底すべきだったと思う。
ベルリン・フィルによる映画音楽コンサートをテレビで見た。
ラインアップは以下の通り。()内は作曲者名
「20世紀フォックスファンファーレ」(アルフレッド・ニューマン)
パンパカパーン~ オープニングにこれを持って来るとは何とも粋ですなあ。ニューマンは20世紀フォックスの音楽部長。
https://www.youtube.com/watch?v=LTgRm6Qgscc
『戦艦バウンティ』(62)(ブラニスラウ・ケイパー)
ルイス・マイルストーン監督、マーロン・ブランド主演。四度映画化された海洋反乱劇。ケイパーはポーランド出身。ちょっと意外な選曲。
https://www.youtube.com/watch?v=uRISreLfTf8
『ローラ殺人事件』(44)(デビッド・ラクシン)
オットー・プレミンジャー監督、ジーン・ティアニー主演。謎の女を演じたティアニーが美しいサスペンス映画の傑作。バーナード・ハーマンの『めまい』にも似た甘美なメロディー。ラクシンは“映画音楽の祖父”と呼ばれているらしい。
https://www.youtube.com/watch?v=b-QtnIaG0xE
『大いなる西部』(58)(ジェローム・モロス)
ウィリアム・ワイラー監督、グレゴリー・ペック主演。堂々たる西部劇。オープニングタイトルでダイナミックに動く馬車を背景にして奏でられた名曲。タイトルデザインはソール・バスだった。何ともおおらかな気分にさせられる。
https://www.youtube.com/watch?v=Ougq8jSZ2-o
『ロビンフッドの冒険』(38)(エーリヒ・ウォルフガング・コルンゴルト)
マイケル・カーティス監督、エロール・フリン主演。アカデミー作曲賞受賞の冒険活劇。オーストリア出身のユダヤ人がフリンの数々の主演映画の音楽を作ったのだ。
https://www.youtube.com/watch?v=q8vsrK1QejU
『トムとジェリー』シリーズ(スコット・ブラッドリー)
とてもアニメのテーマ曲とは思えない。この曲はもろにジャズじゃないか!
https://www.youtube.com/watch?v=kYrUWfLlYI0
『ベン・ハー』(59)(ミクロス・ローザ)
ウィリアム・ワイラー監督、チャールトン・ヘストン主演。一大スペクタクル史劇。ハンガリー出身のローザは17度アカデミー賞候補となった映画音楽の巨匠。クラシックにも決して引けを取らない、超大作らしい風格漂う名曲。
https://www.youtube.com/watch?v=jXkVVLFlXlM
後半はジョン・ウィリアムズ三連発! 世が世ならウィリアムズはクラシックの大作曲家になっていたのではないかとあらためて思う。
軽快なマーチのリズムと中盤の静かな旋律の対照の妙味『レイダース/失われたアーク《聖櫃》』(81)
https://www.youtube.com/watch?v=mL-rpbdyHKE
自転車が空を飛ぶ! 浮遊感とワクワク感に満ちた『E.T.』(82)
https://www.youtube.com/watch?v=C4WK9WvOBvE
まるで壮大な組曲のような『スター・ウォーズ』(77)
https://www.youtube.com/watch?v=prPTyk5O7Yw
質実剛健。間やテンポの取り方、音の重厚感などはさすがベルリン・フィル。大満足なり。もっとこうした形で映画音楽を聴いてみたい。