『駅 STATION』(81)(1981.10.1.東洋現像所・技術検討試写会)
この映画はいささか期待外れだったと言わねばならない。それは、主演・高倉健+脚本・倉本聰+監督・降旗康男という『冬の華』(78)のトリオに加えて、木村大作が撮影を担当すると聞いて、一体どんな映画になるのかという期待が大き過ぎたのかもしれない。
この映画は、3つの時代に分けた一種のオムニバス形式なのだが、散漫な印象を受け、上映時間がとても長く感じた。
例えば、最初の1968年の話で、射撃でオリンピック出場を目指す主人公の三上英次の苦悩とマラソンの円谷幸吉の自殺をダブらせるシーンでは、有名な円谷の遺書を挿入しているが、後に何も続かず、それっきりで終わってしまう。
次の76年の殺人犯・吉松五郎(根津甚八)と妹のすず子(烏丸せつこ)、三上と飲み屋のおかみ・桐子(倍賞千恵子)とのやりとりも唐突な感じがして素直に入り込めない。それぞれのエピソードがつながらない気がして、ひどくとりとめのなさを感じてしまうのだ。
それに比して、ファーストシーンの標的を狙う三上をスローモーションで撮ったシーン、三上と妻(いしだあゆみ)との汽車を使った駅での別れのシーン、五郎がつかまるところのロング、三上と母親(北林谷栄)との冬の港での別れのシーンなど、木村のカメラワークは素晴らしい。この場合、倉本脚本の人物描写と木村のスペクタクル向きな撮影がかみ合わず、名シーンがかえって浮いてしまった感じがした。
また、いい俳優が次々に登場しながら、すぐに消えていく。このあたりにも不満が残った。
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