「いや~。何十年ぶりだけれど、この変わりよう。本当に驚いちゃうわ。」
思わずため息交じりに呟く。でも、これは私達が豊かさを望んだ結果なのだろうとも思う。塚の森の標識がある交差点を左に曲がると、目の前に東電鉄の高架が見え、次第に道幅もせまくなった。スピードを落としてゆっくりと高架をくぐってゆくと、その先に見える大クスの周りで数人の作業員の人が伐採作業を行っていた。
車が一台通る位の道路をゆっくりと進んでゆくと、何かが足りない事に気づいた。
「あ~っ。池が無くなっちゃってる!!」
皆が神池と呼んでいた農業用貯水池は、その役目を終えていて、埋め立てられた跡地には伐採作業に使用するトラックや重機が止まっていた。さらに進んでゆくと、私達が住んでいた家の跡地には公園が出来ていた。その前のには車を2、3台位は駐車できるスペースが設けてあるのが見えたので、私はそこに車を止めることにした。
「ようやく着いたぁ。うう~ん。さすがにちょっとつかれたかなぁ。」
車から降りて、改めて周りの風景を見渡しながら背伸びをした。あの頃の風景は家の前の垣根をくぐると、八ヶ山まで視界が開けていて、自然がいっぱいだったけれど、今ではすべて住宅街に変わり、八ヶ山も半分ほど削られた上に、新たな住宅地が開発中で、東電線にも八ヶ山駅という新しい駅が造られていた。都心へ出るのに電車で1時間強という立地条件を考えれば、この変化は必要だったのだろうなと思った。
そして、沢ガニやメダカが住んでいた家の前の小川もコンクリートの蓋でふさがれていて、なんだか切なくなってしまった。
公園に姿を変えた私の家の跡地は綺麗に整備され、トイレやベンチ、滑り台や動物の形をした置物があり、この地域の子供たちが楽しめるようになっていた。
ペットボトルのお茶を片手に公園へと入って行くと、平日のお昼だと言うのに大クスの伐採作業を見守る人達の姿がちらほら見えた。私も空いているベンチに腰を掛け伐採作業の様子を見届けていると、私の方をじっと見ている白い作業服の男の人に気づいた。
「なんだろう。」と、少し気にしながらも大クスの枝を払っている作業員の人達を見ていると、白い作業服を着た男の人がこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。
その男性は間違いなく私に向かって歩んでくる。体が自然に構える。手に持っていたペットボトルのお茶を力強くギュッと握りしめた時、その男性は私の前で「こんにちは。」と言って一礼をした。綺麗な白い作業服の下に糊のきいたシャツを着ていて、品の良い藍色のネクタイを締めているからどこかの会社の偉い人なのかなと思って少し安心たけれど、それでも私に何の用だろうかといぶがしく思った。
思わずため息交じりに呟く。でも、これは私達が豊かさを望んだ結果なのだろうとも思う。塚の森の標識がある交差点を左に曲がると、目の前に東電鉄の高架が見え、次第に道幅もせまくなった。スピードを落としてゆっくりと高架をくぐってゆくと、その先に見える大クスの周りで数人の作業員の人が伐採作業を行っていた。
車が一台通る位の道路をゆっくりと進んでゆくと、何かが足りない事に気づいた。
「あ~っ。池が無くなっちゃってる!!」
皆が神池と呼んでいた農業用貯水池は、その役目を終えていて、埋め立てられた跡地には伐採作業に使用するトラックや重機が止まっていた。さらに進んでゆくと、私達が住んでいた家の跡地には公園が出来ていた。その前のには車を2、3台位は駐車できるスペースが設けてあるのが見えたので、私はそこに車を止めることにした。
「ようやく着いたぁ。うう~ん。さすがにちょっとつかれたかなぁ。」
車から降りて、改めて周りの風景を見渡しながら背伸びをした。あの頃の風景は家の前の垣根をくぐると、八ヶ山まで視界が開けていて、自然がいっぱいだったけれど、今ではすべて住宅街に変わり、八ヶ山も半分ほど削られた上に、新たな住宅地が開発中で、東電線にも八ヶ山駅という新しい駅が造られていた。都心へ出るのに電車で1時間強という立地条件を考えれば、この変化は必要だったのだろうなと思った。
そして、沢ガニやメダカが住んでいた家の前の小川もコンクリートの蓋でふさがれていて、なんだか切なくなってしまった。
公園に姿を変えた私の家の跡地は綺麗に整備され、トイレやベンチ、滑り台や動物の形をした置物があり、この地域の子供たちが楽しめるようになっていた。
ペットボトルのお茶を片手に公園へと入って行くと、平日のお昼だと言うのに大クスの伐採作業を見守る人達の姿がちらほら見えた。私も空いているベンチに腰を掛け伐採作業の様子を見届けていると、私の方をじっと見ている白い作業服の男の人に気づいた。
「なんだろう。」と、少し気にしながらも大クスの枝を払っている作業員の人達を見ていると、白い作業服を着た男の人がこちらに向かってゆっくりと歩いてきた。
その男性は間違いなく私に向かって歩んでくる。体が自然に構える。手に持っていたペットボトルのお茶を力強くギュッと握りしめた時、その男性は私の前で「こんにちは。」と言って一礼をした。綺麗な白い作業服の下に糊のきいたシャツを着ていて、品の良い藍色のネクタイを締めているからどこかの会社の偉い人なのかなと思って少し安心たけれど、それでも私に何の用だろうかといぶがしく思った。