作業員の人達が、重機を使って大クスをゆっくりと倒してゆく。すると、隣にいた寛太兄ちゃんは一つため息をつき、作業服の胸ポケットから煙草を取り出した。
「吸っていいですか?」
その言葉に私はちょっと驚いたけれど、すぐに「そうか。もう大人なんだ。」と、思い直して、「ええ、いいですよ。どうぞ。」と言うと、寛太兄ちゃんは一礼をした後、「では。」と言って、慣れた手つきで煙草を一本取り出すと、口にくわえライターで火をつけた。そして、ゆっくり吸い込んだ後、小春日和の青空に向けて煙をゆっくり吐き出した。
「たばこ・・・吸うんですね。意外だなぁ。」
「そうですか? 僕らの時代じゃ吸わない人の方が珍しいくらいです。でも、最近は何処へ行っても禁煙でしょ。愛煙家としては肩身の狭い世の中になりました。」
「いえ、そうじゃなくて、寛太兄ちゃんが煙草を吸うほど年をとってしまった事が不思議で・・・。」
そういうと、ハハハと笑って「それはお互いさまでしょう。」と言った。
極まりが悪くなった私は「いつ頃から吸うようになったんですか? 」と尋ねると、寛太兄ちゃんは遠くを見ながら「んー。働き出してからだったかなぁ。」と答えたあと、
「いや、高校を卒業した後だ。きっかけはサツキさん・・・だったなぁ。」
「お姉ちゃんがきっかけなの!? 」
寛太兄ちゃんの言葉に驚いたけれど、今思い返すと、たしかに卒業前の姉はいつにもまして元気が無く、父さんも母さんも心配していた。
「・・・さつきさん。元気にしてますか? 」
ゆっくりたばこの煙を吐き切ると、ためらいがちに姉の事を尋ねてきた。でも私は、それがどういう気持ちなのかわからなかったから、ためらうことなく答えた。
「はい。元気にしてますよ。今は友達と一緒にNPOを立ち上げてバリバリ働いています。」
「へぇー。サツキさんらしいですね。教員にはならなかったのですか? 」
と、当時の家族しか知りえない事を尋ねてきた。でも、そのことで姉と寛太兄ちゃんの間に何かあったのだろうなと察しがついたけれど、今は聞かないほうがいいのかなと思い、
「ええ。一時期は教員を目指していた頃もあったけれど、結局、文部省へ入管したんですよ。」
と、返答すると、寛太兄ちゃんはすごく驚いた様子で、
「ええっ!! 文部省ですか。これはまたすごい所にいかれたんですね。それはまたなぜ?」
と、再び質問してきた。でも、その理由をよく知らない私は困ってしまった。
「え~と。それは・・・。」
「なにか、不都合な事でも? 」
「いえ、そういう訳じゃなくて、なんだったかなぁと考えてみたんですが・・・。そういえば、どうして文部省に入管したかなんて聞いてなかったなぁと思って・・・。」
「そうでしたか。」
「でも、あっさりと辞めちゃった理由は子供が出来たからなんですよ。その時、ちょっとした騒動になったのでよく覚えています。周りの人からは「もったいないから続けろ」って言われてたんですけれど、姉は「子育てと仕事の両立なんてするもんじゃない」って言って周りの助言を一切受け付けなかったんですよ。姉らしいと言えば、姉らしいんですけどね。」
と、言うと、寛太兄ちゃんは、ハハハと笑って、「いや。サツキさんらしい。」と、言った。
「でも、姉が一時、教員を目指していた事をよくご存じでしたね。」
「はい。高校を卒業する前に教師なるのも一つの目標だって聞いていたから。」
「そうでしたのね。それで・・・。」
「はい。」
そう返事をしてから寛太兄ちゃんは、また煙草を吸って、小さくつぶやいた。
「あれは、たしか高校三年の2月ごろだったなぁ・・・。」
「吸っていいですか?」
その言葉に私はちょっと驚いたけれど、すぐに「そうか。もう大人なんだ。」と、思い直して、「ええ、いいですよ。どうぞ。」と言うと、寛太兄ちゃんは一礼をした後、「では。」と言って、慣れた手つきで煙草を一本取り出すと、口にくわえライターで火をつけた。そして、ゆっくり吸い込んだ後、小春日和の青空に向けて煙をゆっくり吐き出した。
「たばこ・・・吸うんですね。意外だなぁ。」
「そうですか? 僕らの時代じゃ吸わない人の方が珍しいくらいです。でも、最近は何処へ行っても禁煙でしょ。愛煙家としては肩身の狭い世の中になりました。」
「いえ、そうじゃなくて、寛太兄ちゃんが煙草を吸うほど年をとってしまった事が不思議で・・・。」
そういうと、ハハハと笑って「それはお互いさまでしょう。」と言った。
極まりが悪くなった私は「いつ頃から吸うようになったんですか? 」と尋ねると、寛太兄ちゃんは遠くを見ながら「んー。働き出してからだったかなぁ。」と答えたあと、
「いや、高校を卒業した後だ。きっかけはサツキさん・・・だったなぁ。」
「お姉ちゃんがきっかけなの!? 」
寛太兄ちゃんの言葉に驚いたけれど、今思い返すと、たしかに卒業前の姉はいつにもまして元気が無く、父さんも母さんも心配していた。
「・・・さつきさん。元気にしてますか? 」
ゆっくりたばこの煙を吐き切ると、ためらいがちに姉の事を尋ねてきた。でも私は、それがどういう気持ちなのかわからなかったから、ためらうことなく答えた。
「はい。元気にしてますよ。今は友達と一緒にNPOを立ち上げてバリバリ働いています。」
「へぇー。サツキさんらしいですね。教員にはならなかったのですか? 」
と、当時の家族しか知りえない事を尋ねてきた。でも、そのことで姉と寛太兄ちゃんの間に何かあったのだろうなと察しがついたけれど、今は聞かないほうがいいのかなと思い、
「ええ。一時期は教員を目指していた頃もあったけれど、結局、文部省へ入管したんですよ。」
と、返答すると、寛太兄ちゃんはすごく驚いた様子で、
「ええっ!! 文部省ですか。これはまたすごい所にいかれたんですね。それはまたなぜ?」
と、再び質問してきた。でも、その理由をよく知らない私は困ってしまった。
「え~と。それは・・・。」
「なにか、不都合な事でも? 」
「いえ、そういう訳じゃなくて、なんだったかなぁと考えてみたんですが・・・。そういえば、どうして文部省に入管したかなんて聞いてなかったなぁと思って・・・。」
「そうでしたか。」
「でも、あっさりと辞めちゃった理由は子供が出来たからなんですよ。その時、ちょっとした騒動になったのでよく覚えています。周りの人からは「もったいないから続けろ」って言われてたんですけれど、姉は「子育てと仕事の両立なんてするもんじゃない」って言って周りの助言を一切受け付けなかったんですよ。姉らしいと言えば、姉らしいんですけどね。」
と、言うと、寛太兄ちゃんは、ハハハと笑って、「いや。サツキさんらしい。」と、言った。
「でも、姉が一時、教員を目指していた事をよくご存じでしたね。」
「はい。高校を卒業する前に教師なるのも一つの目標だって聞いていたから。」
「そうでしたのね。それで・・・。」
「はい。」
そう返事をしてから寛太兄ちゃんは、また煙草を吸って、小さくつぶやいた。
「あれは、たしか高校三年の2月ごろだったなぁ・・・。」