鴬谷から新宿駅に戻り八王子から八高線に乗り換える頃には夕陽が西の山に沈みかけていた。車窓から見える懐かしい故郷の山河は美しく次郎の心を和ませた。実家である藤岡駅につく頃にはすっかり日が落ちていて、暗闇の田舎道を実家に向けて歩いた。
十数年ぶりの故郷が何も変わりなく、生家に明かりが灯っているのが見えると張りつめていた緊張が思わずほぐれ、
「・・・ああっ。ようやく帰ってきた。」
と、自然に言葉が漏れた。
「ただ今戻りました。」
玄関を開けると、奥座敷から妹と母が飛び出してきて、
「お兄様、おかえりなさい!!」
「次郎さん。お帰りなさい。」
「ただいま。」
と、何年かぶりの挨拶をした。次郎は二人の笑顔にほっとし、ゆっくりと玄関の敷居をまたいだ。
「次郎さん。本当によくお帰りになられました。名古屋の方もひどい空襲だったそうで、とても心配していましたよ。」
「心配をおかけしました。」
次郎はそう言ってお辞儀をすると、母は少し涙ぐみながら、
「お元気そうでなによりです。」
と、言って次郎の帰りを喜んだ。次郎はずっと連絡が取れない兄の事も気になっており、
「ところで兄さんは。」
と尋ねると、母は微笑みながら、
「無事よ。安心しなさい。昨日疎開先から便りが届いた所よ。奥さんや孫も元気だそうよ。」
と言った。兄の所在が分かって安心した次郎は、
「そう・・・。それはよかった。」
と言って、縁側に座ると、疲れ切った靴を脱ぎ10数年ぶりの我が家に上がった。
十数年ぶりの故郷が何も変わりなく、生家に明かりが灯っているのが見えると張りつめていた緊張が思わずほぐれ、
「・・・ああっ。ようやく帰ってきた。」
と、自然に言葉が漏れた。
「ただ今戻りました。」
玄関を開けると、奥座敷から妹と母が飛び出してきて、
「お兄様、おかえりなさい!!」
「次郎さん。お帰りなさい。」
「ただいま。」
と、何年かぶりの挨拶をした。次郎は二人の笑顔にほっとし、ゆっくりと玄関の敷居をまたいだ。
「次郎さん。本当によくお帰りになられました。名古屋の方もひどい空襲だったそうで、とても心配していましたよ。」
「心配をおかけしました。」
次郎はそう言ってお辞儀をすると、母は少し涙ぐみながら、
「お元気そうでなによりです。」
と、言って次郎の帰りを喜んだ。次郎はずっと連絡が取れない兄の事も気になっており、
「ところで兄さんは。」
と尋ねると、母は微笑みながら、
「無事よ。安心しなさい。昨日疎開先から便りが届いた所よ。奥さんや孫も元気だそうよ。」
と言った。兄の所在が分かって安心した次郎は、
「そう・・・。それはよかった。」
と言って、縁側に座ると、疲れ切った靴を脱ぎ10数年ぶりの我が家に上がった。